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2010-08-05

〔いんさいど世界〕 真夏の悪夢 地球めざした「クラロン星人」の悲劇

 仙台は七夕です。天の川での、牽牛と織女のロマンチックなランデブー。
 牧歌的ですね。
 大気が澄んでいて、星を間近に見上げることが出来た頃のファンタジー。
 昔の人は宇宙の夢を、エコロジカルに見ていたわけですね。

 でも地上は、異常な夏……地球暑熱化の夏。牽牛と織女に、天の川の流れで「水冷」してほしいような夏。

 これだけ酷暑が続くと、不機嫌で不安定な気分になってしまいます。

 そこで今日は――ついつい思い出してしまった……思い出さなければよかった……いや、思い出さずにはいられなかった、最近、地球で話題のSFホラー物語、「地球をめざしたクラロン星人の悲劇」を――。

 ★ ☆ ★

 時は地球時間=人類西暦、2525年――。
 クラロン(Claron)星人の宇宙船「メイフラワーⅡ(2世)号は、いよいよ「地球」に接近していた。

 宇宙船のクルーは、クラロン星人のカップルが2組(計4人)、クラロン星人のパイロットが1人、そしてアンドロイド(ロボット)2人の計7人。

 「メイフラワーⅡ」は、地球から40光年離れたクラロン星を500年前に出発。地球まであと25年の距離に迫ったところで、アンドロイドの2人が人工授精で「5人」を産み、教育を施し、立派な若者に育て上げていた。

 クルーの任務は、クラロン星人の移住先の「地球」の探索。
 クラロン星は、膨張・巨大化した太陽にいずれ吸収される危機に立たされており、懸命になって移住先を探していた。

 「メイフラワーⅡ」を送り出したクラロン星人たちは、自分たちの運命のかかった地球探査ミッションの成功を必死になって祈り続けていた。
 だが、「メイフラワーⅡ」の出発直前、地球から40(光)年かけて届いた電波情報(地球時間、人類西暦1990年代発)は不吉なものだった。
 「地球で温暖化が加速しはじめた!」

 地球に接近した「メイフラワーⅡ」のクルーは、手持ちの「地球百科事典」と照らし合わせながら、さっそく観測を開始した。

 「青い」はずの地球は「黄色」く、かすんでいた。クルーの一人が叫んだ。 「これは地球じゃないぞ!」
 そんなバカな……!
 クルーは観測機器を南極に向けた。「氷がない!」
 海(太平洋)の表面温度は100度C近く。沸騰寸前の熱湯状態だった。
 
 「地球」は「地球」でなくなっていた。
 「地球」は焼け爛れ、「金星」化していた。

 探査は不可能と悟ったクルーは、より寒冷なはずの「火星」に向かった。

 火星でクルーは初めて「人類」の文化的な痕跡に遭遇した。
 地球から脱出して来たらしい人類5ヵ国のコロニー跡だった。
 火星環境に適応できず絶滅した、人類の廃墟。

 旗が5つ立っていた。何の旗だか、「地球百科」で確認した。
 アメリカ、EU、中国、インド……そして日本の国旗だった。

 地球を周回する軌道に戻ったクルーたちは、絶望と闘いながら、地球が滅んだ原因調査に乗り出した。クラロン星で「吉報」を待つ人々に報告しなければならないからだ。

 分析の結果、結論はこうだった。地球温暖化の警告、警報が鳴っているにもかかわらず、「マネー」に目がくらんだ「ワシントンの政治家」が対策をとらず、結局、地球を滅ぼすことになってしまった――と。
 「やつらは、このパーフェクトな星を滅ぼしてしまった!」

 この「バカどもめが!」――「メイフラワーⅡ」のパイロットが探査用のロケットで飛び出して行った。

 向かったのは、北米大陸東部の、かつてワシントンと呼ばれた地点。無意味なこととは知りながら、怒りの自爆攻撃を敢行したのだ。

 パイロットの最後の言葉はこうだった。

 「バカヤローどもが、地球と一緒に、われわれクラロン星の文明まで滅ぼしやがって……」

 旧ワシントンに小さなクレーターが、ひとつ生まれた。

 ★ ☆ ★

 このホラーSF、僕の創作ではありません。僕の見た悪夢でもありません。
 温暖化で地球は滅びると警告し続ける、アメリカのNASA(航空宇宙局)のゴダード研究所の所長(コロンビア大学教授)のジェームズ・ハンセン博士が、「私の孫たちを襲う嵐(Storms of My Grandchildren)」という本に書いている「実話」です。
 ⇒ http://www.amazon.co.jp/Storms-My-Grandchildren-Catastrophe-Humanity/dp/1408807459/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=english-books&qid=1280959204&sr=1-1

 それを短縮(部分的に再構成。日本語化)したのが、このホラーSF。

 SFですが、もちろん根拠のない、完全なF(フィクション、作り話)ではありません。

 「このままでは、このパーフェクトな星を滅ぼしてしまう!」

 もしかしたら牽牛と織女も、クラロン星人と同じ気持ちで、夜空から私たちのことを見下ろしているのかも知れませんね。 

Posted by 大沼安史 at 07:14 午前 1.いんさいど世界 |

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