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2010-08-09

〔いんさいど世界〕 ヴァンダナ・シヴァさん頌 祝・受賞で「動物三題噺」

 インドの環境運動家、ヴァンダナ・シヴァ女史に「2010年 シドニー平和賞」が贈られることになった。
  ⇒ http://www.sydneypeacefoundation.org.au/index.shtml

 「シドニー平和賞」は1998年以降、世界の社会運動家に対して贈られている、いわば「世直しのノーベル賞」だ。これまでバングラデュの「グラミン銀行」創始者、ムハマド・ユーナス氏や南アフリカのデズモンド・ツツ氏らに授与されている。

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 酷暑の最中、一陣の爽やかな風となって届いた、シヴァ女史の受賞決定のニュース!

 グローバル化した新自由主義による全地球環境レイプが進み、地球暑熱化を耐え切れないほどのものにしてしまった今、シヴァ女史の世直しの訴えが認められ、受賞が決まったことを知って、少しばかり救われたような気がした。

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 ヴァンダナ・シヴァさんは、その著作のほとんどが日本語訳されていて、エコロジー運動に携わる人々を中心に、日本でもファンが多い。僕も女史の大ファンの一人だ。

 1951年、インド北部、ヒマラヤに程近い、デーラ・ダンの生まれ。

 元々は、カナダの大学で「量子論」研究で博士号(PhD)を取得した核物理学者。その後、環境学者に転向。
 現在は、有機農業を営みながら、エコロジカルな視点で人権と社会正義を守る世界的な運動の、中心的な存在として活躍している。

 昨年暮れの「コペンハーゲン環境サミット」では、空港からひとっ走り自転車で会場入りし、熱弁をふるって環境保護派を勇気付けた。

 ユーチューブのビデオ(⇒ http://www.youtube.com/watch?v=TZ8hO0oat28 )
 まるで、地球を守るインドの女神! 

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 シヴァ女史の経歴及び主張は、Wiki( ⇒http://en.wikipedia.org/wiki/Vandana_Shiva )に詳しいが、そこに触れられていないことを三つ、シヴァさんをめぐる「動物三題噺」(いずれも彼女の著書に出ていました……)として紹介することにしよう。

 最初は「象」の話。

 実はシヴァさん、少女の頃、象にまたがって森の中を闊歩していた人!
 お父さんが森を守る林務官をしており、小さなシヴァさんはそのお父さんとともに、抱かれてではなく、自分で象の背に乗って、森の中に入っていた経験の持ち主なのだそうだ。

 シヴァさんはとても行動力のある人(たとえばことし4月に、南米ボリビアのコチャバンバに開かれた「世界民衆水・エコロジーサミット」に出かけて演説をぶったり)。

 そのパワーの源は、象の背中にあり!

 次は「牛」の話。

 「牛」はインドで聖なるものとされていたが、その「聖なる牛」たちが「聖なる(自動)車」によって追い出されていることを、シヴァさんはエコロジーを破壊する重大な犯罪的行為だとして告発している。モータリゼーションとは何かを、インド的な視点、及び世界史的な視点でとらえ、問題点を抉り出している。

 ヒトラーの、あの「アウトバーン」の建設を、環境・地域破壊の第一歩ととらえている!

 この彼女の視点には驚かされ、目からうろこが落ちるような気がした。
 
 日本の道路公団とナチスの類縁性! 車ファッショ、自動車道ファッショ!

 三つ目は「駱駝」の話。

 シヴァさんの本を読んで、もうひとつ教えられたのは、フタコブラクダの話である。

 コブが2個もあるフラコブラクダ!

 その産地、生息地が、あのアフガニスタンであるというのだ。

 世界最強=最悪な、米NATO軍の機械化された軍事力が破壊の限りを尽くすあのアフガンで、人々の船となり、衣料となり、燃料となり、栄養源(乳)ともなっている(た)ラクダたち!

 ラクダたちもまた、アフガン人とともに「戦争」に耐えているのかと思うと、ますます怒りが募る……。

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 最後に「核」の話をして、シヴァ女史の紹介を終えることにしよう、
 
 先にも触れた通り、シヴァさんは核物理学者として出発した人だが、彼女が駆け出しの科学者として核分裂連鎖反応の研究を始めた頃、こんなことがあったそうだ。

 シヴァさんのお姉さんか妹さんのマイラさん(医者)が、彼女に「核の危険(ニュークリア・ハザード)」について教えてくれたのだそうだ。

 それまではそんなこと、深く考えても見なかったシヴァさん、マイラさんの言葉に考え直し、環境科学への転向を決断したという。

 そのあたりのこと、あまり詳しくは書かれていないので想像するしかないが、シヴァさんはきっと、その時、ヒロシマ・ナガサキの惨劇にほんとうに向き合い、「核」の恐ろしさを知って、核科学者の道を捨て去ったのだと思う。

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 絶滅の科学者から、いのちの科学者に変身し、活動家として実践家として、土着・有機農業を続ける一方、地球環境を守る運動の第一線に立ち、人々の生きる権利を、社会正義を訴え続けて来たヴァンダナ・シヴァ女史。

 彼女の SOIL,NOT,OIL (「土地だ、石油ではない」)という本に、こんな泉のような、心にしみ入る一節がある。

 「インド哲学では、正しく生きることをダルマ(dharma)と言う。これは天然の資源(arth)と、人間のニーズ(kama)の間に橋を架ける言葉である」

 エコロジー、すなわちダルマ!

 シヴァさんは、人間が環境と調和しながら、「正しく生きること(ダルマ)」を訴え続けて来た人だ。

 暑い国、インドの人であるにもかかわらず、彼女という存在に、爽やかなものを感じるのは、そのためである。  

Posted by 大沼安史 at 06:04 午後 1.いんさいど世界 |

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