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2010-07-29

〔いんさいど世界〕 「コチャバンバ水戦争」のボリビア民衆の勝利から10年 国連で遂に「水は人権」宣言を採択!

 国連の総会で28日、南米のボリビアをはじめ32カ国が共同提案していた、「水と衛生を世界的な人権と認める」宣言が、賛成122ヵ国、反対0、棄権41ヵ国の圧倒的賛成多数で採択された。
  国連サイトのロイター電 ⇒       http://www.un.org/News/Press/docs/2010/ga10967.doc.htm
  BBC ⇒ http://www.bbc.co.uk/news/world-us-canada-10797988

 1948年の「世界人権宣言」から62年ぶりに、新たな「人権」が生まれた。歴史的ともいえる、この「記念すべき、水は世界のあらゆる人々の基本的な人権」(IPS通信)宣言!
  ⇒       http://www.un.org/News/Press/docs/2010/ga10967.doc.htm

 米国主導の新自由主義によるグローバルな「エコ(天然資源)収奪」の防波堤になり得るもので、生命の源であり生命線である「水」に対する人々の権利が、国連の宣言のかたちで、初めて確認された。

 気象変動などで、水不足にあえぐ世界の人々、20億人近く。半径1キロ以内の生活圏に水のない人、30億人。安全な飲み水にアクセスできない人、8億8400万人、安全な水、衛生的な水を飲めずに死んで行く5歳以下の乳幼児、毎年150万人……。

 「水の人権宣言」は、こうした、安全な水へのアクセス確保とともに、宣言提案国、ボリビアの民衆が10年前、闘いに勝利を収めた、人々の「水の権利」を破壊し、収奪の対象とする「水(道)の商品化」に歯止めをかける「分水嶺」となるもので、それが採択された意味は大きい。

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 今回の「水の人権宣言」を結実した流れは、南米ボリビア、第三の都市、コチャバンバで生まれた。
  コチャバンバ Wiki ⇒ http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%90%E3%83%B3%E3%83%90

  今から10年前、2000年1月から4月にかけ、世界的にはあまりにも有名で、日本ではあまり知られていない「コチャバンバ水戦争(Water War)」が繰り広げられた。
  デモクラシーNOW ⇒ http://www.democracynow.org/2010/4/19/jim_shultz_on_dignity_and_defiance
  Wiki ⇒ http://www.democracynow.org/2010/4/19/jim_shultz_on_dignity_and_defiance

 財政危機に苦しんでいた当時のボリビア政府が、世界銀行に救済を求めたのがそもそもの始まり。

 世銀はボリビアの国営企業(鉄道、通信など)の民営化(多国籍企業への売り飛ばし)に加え、コチャコバンバの水道事業の民営化を要求。

 入札という名のせり(競売)の結果、アメリカの巨大建設企業、べクテル社を中心とする多国籍企業が落札。

 利益を確保しようとして、多国籍企業は水道代にダム建設費を上乗せしたことから、月の水道代が平均20ドル(一般家庭の1ヵ月分の食費に相当)に跳ね上がり、民衆の怒りに油を注いだ。

 抗議行動は当初、貧しい都市住民の間から湧き上がったが、農民、労働者、学生らも合流、ゼネストで闘う大レジスタンスに発展した。
 政府当局も警官隊(後に自ら賃上げを要求、出動した軍の治安部隊に催涙ガスで抵抗した)や軍隊が出動させ、戒厳令で鎮圧を図ったが、同年4月8日、17歳の高校生、ヴィクトル君が顔に被弾して死亡する悲劇が起きたことで民衆の怒りは頂点に達し、ついに政府側が折れ、民営化を撤回することで事態を収拾した。

 「コチャバンバ水戦争」は遂に、民衆の側が勝利を収めたわけだが、それは民衆による、米国主導の新自由主義グローバル支配を跳ね返す勝利でもあった。

 このコチャバンバのレジスタンスの指導者、労働者のリーダー、オスカー・オリヴェラ氏は、2年後の2006年、闘いを振り返り、こう語っている。 ⇒ http://www.guardian.co.uk/society/2006/jul/19/comment.guardiansocietysupplement

 「それは、あらゆるものを商品化する論理に対する闘いでした……民衆は気付かなければなりません。多国籍企業と富裕な国の政府は今も、水を商品に変えようとしているのです」

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 この「コチャバンバ水戦争」のもう一人の立役者は、農民運動家のエヴォ・モラレス氏。ボリビアの現大統領、モラレス大統領、その人である。

 今回の国連「水は人権」決議は、このモラレス大統領の主導で提案されたものだが、モラレス大統領は「水戦争」の10周年を記念して、ことし4月19~22日の4日間、コチャバンバで「気象変動と母なる地球の諸権利のための世界民衆サミット」で開催、「国際気象法廷」の新設などを呼びかける宣言を採択した人でもある。
  ⇒  http://www.guardian.co.uk/environment/2010/apr/23/cochabamba-climate-court
   http://pwccc.wordpress.com/

 「水」の確保は地球環境の保全なしにあり得ないこと。ボリビアもアンデス山脈の氷河が地球温暖化で消滅の危機にあり、全世界から実に3万人の参加者を集めた、この「コチャバンバ世界民衆サミット」は、地球温暖化を阻止する闘いと「人権としての水」を結合する場所となった。

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 26日の国連総会での採決で、さすがの米国も「反対」の意思表示はできず、「棄権」に回った。

 ①「水の権利」は現行の国際法の体系にはない②ジュネーブの国連人権委で検討中で、結論がでていない問題だ――の2点が「棄権」の理由だが、日本の菅直人政権も米国に追随し、棄権した。

 このことは、われわれ日本人として銘記しべきことだし、政府の「棄権」理由は問いたださなければならない。
 (国連のサイトの記事 ⇒ http://www.un.org/News/Press/docs/2010/ga10967.doc.htm
 によれば、日本政府代表は、①コンセンサス(全会一致)による採択でなかったことは遺憾だ。日本政府は世界最大の水セクターにおける援助者である②日本はジュネーブ(国連人権委での)プロセスを支持するとともに、クリーンな水に関する消耗した議論が行われたこと、十分な衛生問題が決議案が出される前に留意されたことに対し、深い遺憾の意を表する、との演説を行った。一体、どういうことなのか、日本のプレスはその意味、背景、事の真相に迫るべきである)

 「水の権利」を侵害するものは、ダム問題、水質汚染等、日本にもたくさんある。菅直人政権は、水を奪うもの、水を汚すものを守ろうと言うのか!

 なぜ、国連総会で、たとえば欧州連合やドイツ、スペインとともに「賛成」票を投じなかったのか、政府には説明責任があるだろう。

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 「水」は私たちの命を育む、地球環境からの大切な贈物である。

 しかし、その「水」が危ない。温暖化による気象変動での旱魃被害。コチャバンバで起きた多国籍企業による「水の商品化=水道の民営化」の、インドなどでの再現――。

 「水は人権」決議は、こう宣言している。

 「安全でクリーンな水と衛生に対する権利を人権と宣言する。それは十全なる生きる喜びと、あらゆる人間の諸権利にとって本質的なものである……」
  ――Declares the right to safe and clean drinking water and sanitation as a human right that is essential for the full enjoyment of life and all human rights; 

 これは名言である。生きる喜びと、人間の自由、平等など諸権利の土台になければらない本質的なもの――それが「水の人権」だと言い切っているのだから。

 アンデスに聳えるトゥナリ山に発するコチャコバンナの流れは、新時代の流れとなって、新自由主義の荒れ狂う地球の荒れ野を癒し、潤し始めた。

Posted by 大沼安史 at 09:05 午後 1.いんさいど世界 |

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