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2010-06-01

〔コラム 机の上の空〕 汝と我のイスラエル

 ガザ支援船団に対するイスラエル軍特殊部隊の急襲で死者が出た。イスラエル軍兵士の銃弾で、10人も(9人説も)の命が奪われた。

 その「命」の重みを、ネタニヤフ・イスラエル右派政権は、どう考えていることだろう。

 「汝」=あなたの、かけがえのない命を奪ってしまった、申し訳ない、と考えているのか、それとも、お前らの「その」、取るに足らない命を消し去っただけ、と思っているのか?

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 私の師、米国・ボストン近郊で「サドベリー・バレー」校を主宰するユダヤ系米国人、ダニエル・グリーンバーグ氏(元コロンビア大学・物理学者)の夫人、ハンナさん(同じくユダヤ人、マサチューセッッツ工科大学の元生化学者)から、以前、こんな話をうかがったことがある。

 ハンナさんはエルサレムの育ち。日本でも有名な『汝と我』の哲学者、マルティン・ブーバーは、ハンナさんの縁戚だそうだ。

 「ブーバーは背が低い人で、私たちは彼を、へブライ語で人形(ブバ)と呼んでいました」

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 関連して、もうひとつ。
 ヨルダン川西岸で「インティファーダ」が盛んだった頃、パレスチナ人の視点に立って報道を続けた、イスラエルのユダヤ人ジャーナリストがいた。

 ジョエル・グリーンバーグ氏。(エルサレム・ポスト紙でレポーターを続け、そのパレスチナ人寄りの報道姿勢を理由に解雇された、と聞く)

 ダニエルとハンナさんに聞いたら、親戚だと分かった。

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 こんな思い出を綴ったのも、他ではない。

 今回のネタニヤフ右派政権の暴挙を、彼らは――ダニエルもハンナも、他の心あるディアスポラのユダヤ人同様、悲しんでいるに違いないからだ。

 こんなことをイスラエルはしてはならない……そう考えているユダヤ人は、きっと多いに違いないのである。

 指揮者・ピアニストのダニエル・バレンボエムも、間違いなく、そういう思いでいるはずだ。

 そのバレンボエムの親友で、大江健三郎氏とも親交のあったパレスチナ人作家、故エドワード・サイード氏も、生きていたら、バレムボエム氏と一緒に、きっと今回のネタニヤフ政権の愚かしい暴力的行為を非難したはずである。

 (ちなみにサイード家のエルサレムの住居跡に戦後、移り住んだのは、ハンナ・グリーンバーグさんの縁戚のマルティン・ブーバーだった!)

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 これはイスラエル紙、「ハーレツ」の社説に書かれていたことだが、今回のイスラエル軍の、ガザ支援船団に対する奇襲攻撃は、第2次世界大戦後の1947年に起きた、ユダヤ人移民船「エクソダス号」事件のまるで“裏返し”である。

 ナチスに迫害されたヨーロッパを脱出、「約束の地」に向け、海路、入植しようとするユダヤ人を乗せた「エクソダス」号が、英海軍艦艇によって阻止され、死傷者が出た、あのイスラエル建国史に残る事件の、攻守ところを換えた、今回の虐殺事件。

 イスラエルは何時の間にか、「受難の民」から好戦的な「選民」へと変わったしまっていたのだ。

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 イスラエルは、米国によって戦後、中東における「楔」の役割を負わせられていた。米国があの「カーター・ドクトリン」で、中東に直接介入することを決めるまでは、とくにそうだった。

 イスラエルは米国に、「核武装」することすら認められていたのである。

 が、そのイスラエルの「核」に対して、今、国際的な批判が集中している。

 5月30日付けの英紙ガーディアンは、米主流権力の機関誌、「フォーリン・アフェアーズ」のシニア・エディター、サーシャ・ポラコウ・サーランスキー氏の調査結果を元に、イスラエルが南アに対し、1970年代の半ば、「ジェリコ」ミサイル付きで核兵器の売り込みを図っていた事実を、南アの極秘文書を元に暴露した。

 これはたぶん、米権力の主流が、核を持ったイスラエルを「お荷物」と考え始めている証拠である。

 先のニューヨーク「NPT会議」で、米国もまた賛成の意思表示して、来年、「中東非核化地帯」会議が開かれたことが決まったが、これまたイスラエル包囲網のひとつの現れであるだろう。

 (ちなみに、サーシャ・ポラコウ・サーランスキー氏の母、バレリー氏は、わたし大沼の恩師である。バレリー氏は南アから米国に移り、現在、東ミシガン大学教授を務める教育学者である)

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 ちょっと唐突な言い方になるが、こうなると米国は、イラク・イランの「石油」を確保できるなら、それと引き換えに、イスラエルの「核」の無力化に踏み切ることもあるのではないか!……

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 イスラエルの最近の強硬路線は、そうした包囲網の狭まりに反発してのものともいえるが、だからといって、ここ数年来の、狂ったような軍事力の行使は正当化されるものではない。

 イスラエルにとって、死活的に重要なことは、ブーバーの言うように、パレスチナ人を「それ」と見なすのではなく、「汝」と思うことだろう。

 「汝と我」――その対話の中にしか、イスラエルの生きる道はないのではないか!

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 ガザ支援船には、「ホロコースト」の生き残りのユダヤ人女性、ヘディー・エプスタインさん(85歳)も乗船しているのだ。

 イスラエルよ、「汝」は今こそ、目を覚ますべきである。

 すべて剣を取るものは剣に滅ぶことを、イスラエルよ、汝は知るべきである。

 イスラエルは、ガザ支援船のガザ入港を認めるイスラエルでなければならない。

Posted by 大沼安史 at 09:26 午後 3.コラム机の上の空 |

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