〔いんさいど世界〕 隠蔽工作を打破 真実を報道 「ウィキリークス(WikiLeaks)」のネット情報レジスタンス
「ウィキリークス(WikiLeaks)」――すでに、ご存知の方も多いことでしょう。
よくは知らない、という方でも、「ウィキペデア」なら、ご存知ですよね。
グローバルなインターネット百科事典。日本語版もあって、僕なども一日に何度も利用しています。
「ウィキ」とは、インターネット上の文書(情報)のこと〔乱暴な定義ですが〕、「ペディア」とは「知識」のこと……だから、「ウィキペデア」。
#
そこで「ウィキリークス」。ウィキはもう分かってますから、あとは「リークスLeaks)」の意味が分かれば――。
「リーク」、つまり秘密の漏洩の複数形。隠蔽工作でもみ消された秘密文書(情報)を暴いてネットで公開し、世界のみんなで「真実」を共有しようというプロジェクトなんです。 ウィキリークス公式 HP ⇒ http://www.wikileaks.org/
本ブログでもお伝えしましたが、その「ウィキリークス」が、最近、とんでもないスクープを放ちました。
2007年の7月、イラク郊外で、米軍ヘリが路上のイラク人の群れを機関砲で掃射、12人を殺害する場面を、ヘリの機上から実写したビデオ(音声付)をHPに掲載。それがユーチューブなどで転載され、一気に世界の人びとの知りところとなりました。 ユーチューブ・ビデオ ⇒ ⇒ http://www.youtube.com/watch?v=QJ_zTrjMhX8&feature=player_embedded#
実はこの虐殺事件、殺された人々の中に、西側通信社、ロイターの現地人カメラマンと助手の2人が含まれており、ロイター通信は米国の情報自由法を使い、ヘリ映像の公開を求めていたのですね。そして、アメリカの国防総省は公開を拒否していた。
それが、「ウィキリークス」に出た! 米軍(あるいは米政府当局者)の誰か――いわゆるディープスロートが、リーク(漏洩)したのですね。おそらく、義憤にかられてのことでしょう。
#
衝撃の映像でした。子どもたちを含む路上の人群れを掃射しまくる。そして「ナイス、グッド・シューティング」などと言って讃え合う。「戦争」というものの実態が、「実況中継」で明るみに出たわけですから。
日本政府が「支持」した「イラク戦争」とは、こんな真実の一面を含むものだったのですね。
#
この「ウィキリークス」が出来たのは、2006年12月のことでした。創立の中心になった人は、ジュリアン・アサンジさんという、30歳代のオーストラリアの男性です。今も、サイトの「エディター(編集人)」として活躍している人ですが、その世界で知る人ぞ知る、超有名な(コンピューター)ハッカーなのだそうです。
ハッカーというと他人のサイトに侵入して悪さをする悪玉のイメージもありますが、この方はいわゆる「善玉ハッカー」。
権力者(政府、大銀行など)が報道機関に脅しや圧力をかけ、真相に蓋している現状を打破しようと、この「真実」共有サイトを立ち上げたわけです。
アサンジさんが思い立った原点にあるのは、あの1969年の「ペンタゴン文書」の漏洩事件。ダニエル・エルズバーグ博士の勇気ある「公表」で、「ベトナム戦争」の「真実」が明らかになった事件ですが、エルズバーグ博士は裁判にもかけられた(結局、無罪になりましたが)。
そういう「リスク」を負うことなく、封印された「真実」をネットで全世界に伝えようと、アサンジさんは「ウィキリークス」をつくった。
世界トップクラスの(善玉)ハッカーのサイトですから、セキュリティーは万全、「投稿者」の秘密は完璧に守られている(匿名の漏洩で身元を突き止められたケースは一度もないのだそうです)。だから、米軍ヘリ虐殺映像のような「投稿」もあるのですね。
#
エディターのアサンジさんとスポークスマンのダニエル・シュミット(シュミットは変名)のほか、フルタイムで5人のスタッフが運営にあたっているそうです。ほかに協力スタッフが1000人。経費は個人献金、企業のお金は拒否。
これまで全世界から寄せられた機密文書(情報)は、なんと120万件。全部で1000万頁もの量だというから凄いですね。 マザー・ジョーンズ誌記事 ⇒ http://motherjones.com/politics/2010/04/wikileaks-julian-assange-iraq-video
では、この「ウィキリークス」で、これまでどんな「真実」が暴露されて来たか?
喜劇的な例を挙げますと、アメリカの国防総省の当局者が、「ウィキリークス」のサイトを覗いて、米軍からみの情報があまりにも「流出」しているのに驚きました。で、米陸軍の反諜報活動部局が、リークした人間はクビだ、と部内メールを出した。それがそのまま、「ウィキリークス」にアップされたそうです。 英紙インディペンデント ⇒ http://www.independent.co.uk/news/world/politics/how-wikileaks-shone-light-on-worlds-darkest-secrets-1938729.html
米軍のグアンタナモ収容所における捕虜尋問手続き文書が載ったのも、ここ。
昨年暮れの「コペンハーゲン環境サミット」の前、イギリスの環境科学者を中心としたメールのやりとりが暴露されることがありましたが、それも実は、ここが「火元」だったそうです。
何から何まで、といった感じですが、僕がひとつ、凄いな、と思ったのは、スイスの巨大企業、「トラフィグラ」社による、アフリカ・アイボリーコーストへの廃棄物不法投棄事件の証拠文書の暴露ですね、
この会社はその巨大な力にものを言わせ、あちこちで裁判を起こし、メディアの「口封じ」に出た。裁判費用ってバカになりませんから、メディアとしては一時退却を迫られることもある。
この時、「ウィキリークス」が「全文」を「公開」した!
いったん「表」に出たら、もうどうしようもないわけです。
#
こんなことをしているわけですから、エディターのアサンジさんがアフリカ・ケニアに滞在中(それも警備つきのアジトで)、ケニアの権力者の汚職を暴いたことで暴漢に襲われる(無事でした)など、大変な目にもあって来ている。
「差し止め」訴訟も100件を超しているそうですが、なんとかクリアしてここまで来たのだそうです。
そんな「ウィキリークス」に今、強~い助っ人が現れています。
金融危機でメチャクチャにされた北大西洋の氷の国、アイスランドが、サポーターとして名乗りを上げた。
新政権が後押ししているわけですから、これは「公式サポーター」と言えるわけですね。
で、アイスランドの政権がいま何を進めているか、というと、「アイスランド・モダン・メディア・イニチアチブ」というプロジェクト。
一言で言えば、この「氷の国」を、世界の「ジャーナリズム・ヘイブン」、言論の自由を守る拠点にしようというプロジェクトなんです。(「ヘイブン」とは、避難港の意味)
ここに本拠を置くジャーナリズムに、言論の自由、情報源の秘匿の権限、外国での提訴からの保護など、身分保障を与え、都合の悪い「真実(情報)」をひた隠しにする権力者どもを懲らしめよう、という画期的なものなのですね。
このプロジェクトに「ウィキリークス」のアサンジさんも協力しているそうです。 アイスランド ⇒ http://www.guardian.co.uk/world/2010/feb/12/iceland-haven-freedom-speech-wikileaks
http://www.guardian.co.uk/media/organgrinder/2010/feb/15/wikileaks-editor-excited-iceland-journalism
#
「真実」隠しは、日本の権力者のお家芸。沖縄・核の「密約」なんか、氷山の一角どころか、カケラでもないかも知れませんね。
「存在しない」とか「外務省にはない」とか、ひどすぎです。
でも、ひそかに心を痛めている内部関係者もきっと多いはず。
でも、なかなか踏み出せない。家族を抱えて、2の足を踏んでいる人も多いはず。
そろそろ、「ウィキリークス」のような、身元セキュリティー完璧保証の日本語の「ジャーナリズム・ヘイブン」を、アイスランドに立ち上げる時かも知れません。
Posted by 大沼安史 at 12:00 午後 | Permalink
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 〔いんさいど世界〕 隠蔽工作を打破 真実を報道 「ウィキリークス(WikiLeaks)」のネット情報レジスタンス:
» カメラマン・アシスタントの求人募集転職情報ネットナビ トラックバック カメラマン・アシスタントの求人募集転職情報ネットナビ
とっても高待遇なカメラマン・アシスタントの求人募集転職の情報です。 続きを読む
受信: 2010/04/11 14:34:42
» イラクでの米軍による虐殺暴露を受け、ニューヨーク・タイムズ、WikiLeaksを指弾 トラックバック マスコミに載らない海外記事
David Walsh 2010年4月8日 月曜日に公開された、2007年7月、東部バグダッドの街路で、アメリカ軍によって行われた冷酷な殺害のビデオ映像は、広範な怒りと恐怖を引き起こした。投稿以来、ビデオは400万回以上閲覧されており、アメリカのイラク占領というものの本性を、世界中の視聴者に直接かいまみさせてくれている... 続きを読む
受信: 2010/04/15 19:48:14