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2010-04-05

〔教育コラム 夢の一枝〕 「ゆとり」と「脱ゆとり」に共通する「いうとおり教育」の病理

 「小学教科書 ページ25%増」(主見出し)「文科省検定 ゆとり教育と決別」(副見出し)――こんな新聞記事が先だって、朝日新聞の1面のトップに載っていた。

 

  「25%増」――スーパーの食品売り場でみかける「○○増量」に似ているな、と思った。日本の小学生の学力、25%も一挙、増量!
 すばらしい決め科白ではないか!

 そして「ゆとり教育と決別」――国語辞典(角川必携国語辞典)を見たら「決別」とは「(いとまごいを述べて)きっぱり別れること」と出ていた。
 これまた、胸のすくような、なんとも決然たる宣言ではないか!

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 来年度から全国の全小学校で使われる全9教科の検定結果を、文科省が年度末を見計らったように「発表」した。この春の新学期からではなく、来春から使用される、新ピカピカ教科書! 朝日の記事のリードによれば、来年、2011年4月に本格実施される新しい学習指導要領が「脱ゆとり」へ大きく踏み出したのに合わせた内容、だそうだ。

 「脱ゆとり」――文科省がこねあげたキャッチらしいが、冬の厚着から解放されたような、なにかうれしいことがありそうな、春らしい文句だ。

 国語辞典によれば、「脱」には「ある状態からのがれでる」の意味もあるそう。そんな「脱」が「ゆとり」の前についているものだから、いまにも「ゆとり教育」という、お仕着せ(ワンサイズ・フィッツ・オール)のSサイズ画一教育から、みんなそろって大脱出できそうな、解放感にあふれた、すばらしい宣伝文句ではある! しかも、「大きく踏み出す」というのだから、すごい!

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 でも、この1面の「発表」記事、なんか嘘っぽい――で、社会面のサイド記事はどうなっているだろうと、頁をめくったら、「分厚い教科書 先生大変」「教えきれるか心配」という見出しの関連記事が出ていた。
 
 (「ゆとり教育」の薄い教科書でも大変だったから)現場の先生たちが「教えきれるか心配」なのは当然のこと。

 なんのことはない、「脱ゆとり」どころか、「零ゆとり」――「ゆとり」もクソもない、超過密教育が始まるだけのことなのだ。

 2面の関連記事で、脱ゆとり」が「決別」する「ゆとり教育」の旗振り役を務めてきた「ミスター文科省」こと寺脇研氏が、こう言っていた。「全部詰め込めばパンクする」と。

 同感である。
 そもそも「ゆとり教育」は、「詰め込み教育」による学力低下を反省して生まれて来たもの。
 それを再び、「脱ゆとり」と看板を書き換え、「詰め込み教育」に戻すだけのこと。

 「脱ゆとり」でいよいよ起きる「学力崩壊ビッグバン!」――文科省とは、自らの過去に学ぶことすらできない(忘れることだけは上手な)――「お役所教育」の大本営なのか……。

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 さきほど僕は寺脇研氏の「パンク」論に賛成だと言ったが、彼が旗を振った(なんだか、一人だけ悪者にされているみたいで気の毒である……)とされる「ゆとり教育」に賛成だったわけではない。
 (残念&悲しいことに)何人かの友人以外、誰も聞いてくれる人はいなかったが、僕は「反対」だった。
 
 となると、今回の「脱ゆとり」に対して、僕はもろ手を挙げて「賛成」してもよさそうなものだが、ここでもまた「反対」である。

 なぜか?

 「ゆとり」であれ「脱ゆとり」であれ、文科省のお役所教育は、さきほども述べたワンサイズ・フィッツ・オール……たった一種類、たったひとつのサイズを、子どもたち全員に無理やり着せる「画一・統制教育」でしかないからだ。

 本来、せいぜいガイドラインにすぎない学習指導要領に「法的拘束力」(?)を持たせ、全国全ての「学校」に統制の縛りをかけ、現場を――子どもたちを、教師たちを、窒息させて来たことでは、「詰め込み」も「ゆとり」も変わりない。「脱ゆとり」も、その「いつか来た道」にあるものだから、失敗はすでに約束されているといっていい。

 日本の政府権力は「税金をつかって公共事業をやれば景気はよくなる」と言い続け、天文学的な財政「赤字」の山を築き上げて来たが、文科省の「いうとおりにやれ」教育も、同じような失敗の繰り返しの中、「赤点」の山を積み上げて来たのである。

 たとえば、「駅前留学」に出かけ、ブタのようなウサギのぬいぐるみを抱きながら、「学校」ではまったく身につかなかった英語力を「スクール」でゲットしなければならない、日本の「学校英語教育」の惨憺たる結果を見よ! 

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 問題は、新教科書の厚みやページ数ではない。以前、削除されていた内容が復活したことでもない。

 問題は――子どもたちの「学力」をウンヌンするのであれば……そんなに子どもたちの「学力」が心配であるなら、「学力」が身につく方法を示すことである。

 文科省のキャリア(上級役人&とくに教科書調査官)たちは、「教員叩き」や「検閲」にばかりに精出していないで、その暇があったら、自らすすんで教室に「天下り」し、文科省の、天下無双、無謬の指導要領に従って教鞭を振るえば、こんなにすごい「学力向上」が実現できるのでありま~す、と実技指導してみてはどうか!

 新学習指導要領の実施まで、まだ1年もあるのだから、文科省直伝の「模範授業」(もちろん、「結果」も合わせて)をビデオに収め、その素晴らしき「学力向上・脱ゆとり・教育テクニック」視聴覚教材を全国の現場に配布してはどうか!

 (余談だが、文科省はとくにキャリアたちを、財務省がキャリアを税務署長に出して現場教育をしているように、荒れる教育現場に――それも校長ではなく、一線の教員として出向させ、成果を出したところで本省に呼び戻してはどうか?)

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 ……どうもやる気がないようだから、よりかんたん(?)な提案をしよう。

 たとえば、「学力世界1」のフィンランドのように、新教科書を使うもなにも、その全てを現場の教師たちの裁量にまかせてみたらどうか?

 えっ? 「日本の教育」には合わない……そんな外国かぶれの「フィンランド出羽守(デハのかみ)」式の言い草はやめろ、だって?

 ああ、結局はお役所・統制教育の権益を守るだけの、この国の「教育国粋主義」の病理よ!……

 (追記 先日、司馬遼太郎さんと井筒俊彦さんの対談を読んだら、空海に対するプラトンの影響の可能性を熱く語り合っていた。ペルシャ、中国を経由した古代ギリシャの影響……。それはどうも法隆寺の柱に対してのみ及んだことではないらしい……)

 (再追記 空海さまは長安でペルシャ文字を見たことで、「かな」をお考えになったのではないかな!!……)

 

Posted by 大沼安史 at 04:34 午後 2.教育改革情報 |

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