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2010-04-03

〔いんさいど世界〕  救世主(?)現る 

 もうすぐ、花祭り。お釈迦さまの誕生日です。
 この世――現世。現代世界は、四苦八苦。

  人々はなおも戦争や貧困に苦しめられています。お釈迦さまもさぞかし嘆き悲しんでおられることでしょう。

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 ラジ・パーテルさん(37歳)。ロンドンに生まれ、現在、サンフランシスコに住んでいる、社会運動(世直し)の活動家であり著述家です。

 それもお釈迦さまと同じ「インド人」。
 ただし、ご両親はお父さんは南太平洋のフィジー、お母さんはケニア出身のインド人。ラジさん自身、お釈迦さまのようにインドで生まれたわけではありません。しかし、一度、インドに出かけ、ロンドンに戻って来たことがある――(ささいなことですが、これまた決定的な「証拠」となる事実! 憶えておいてください)

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 実はこのラジ・パーテルさん、『無の価値(The Value of Nothing)』という、世界的なベストセラーの著者。

 それでテレビに引っ張り出されたり、ネットで紹介されたり、今やすっかり「世界の有名人」になっている「時の人」ですが、あるニューエイジ系の世界的な新興宗教団体の信者たちから「救世主(マイトレーヤ)」に祭り上げられ、そっちの方でもたいへんな話題になっている方です。

 あまりの信者の熱狂ぶりに、本人が「私、救世主じゃありません」とキッパリ否定しても、「いや、あなたは救世主。私たちが授かった予言では、あなたは自分が救世主であることを否定なされることになっている」といって、信じてくれないんだそうです。ちょっと困ったものですね。

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 で、ラジさんを「救世主」と崇める新興宗教団体ですが、これが英国のスコットランドの人が「マスター」となって広めている団体なんですね。その「マスター」の方が、「救世主」の到来を予言していた。

 ①救世主として現れる方は、1972年にお生まれになった方だ(そう、ラジさんは、その年の生まれ!②そして1977年に、インドからロンドンに旅して来る(ラジさんはインド生まれでないのですが、そう、1977年に父親に連れられ、インドに旅してロンドンに戻って来たことがある!―― 

 ピッタシカンカ~ン&ピンポ~ン(「ピンポイント」から来た言い方なんでしょうか?!)。
 こうなると、「信者」じゃなくても、「救世主」と思いたくなってしまいますよね。

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 ①と②については偶然の一致ということもあり得るでしょうし、その条件にあてはまる人は多いはず。でも、ラジさんが「救世主」に祭りあげられた決定打は、お書きになったベストセラー、『無の価値』の中身にあるようです。

 僕が尊敬するカナダの女性活動家、ナオミ・クラインさんも「絶賛」しているというので、早速、取り寄せ、目を通してみたのですが、うわさに違わず、凄い、すばらしい!

 悲惨と混乱の極にある現代世界の「世直し」を呼びかける内容!

 ラジさんて、オックスフォード、LSE、コーネルで経済学を勉強された方で、博士号(開発経済学)の持ち主。

 それも学窓にこもるのではなく、現場でたたきあげた実践的な知識人なのですね。 

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 で、この『無の価値』の中身をちょっとだけ紹介しますと、ラジさんは大英帝国時代のアイルランド出身の作家、オスカー・ワイルドの、「人は皆、あらゆるものの価格は知っているが、ものの価値は何も知らない(Nowadays people know the price of everything and the value of nothing)」という警句を引いて、本の題名とし、そこから書き出しています。

 そのタイトル通り、この本は、あらゆるものに値段をつけ(たとえば、人間にも値段をつける=奴隷制はその例)、取引の対象とする、規律なき市場原理主義(強者による市場と通じた強奪)を批判する一方、人間が取り戻さなければならない「価値」の復興と、そのためのグローバルな「世直し」を呼びかけたマニフェストでもあるわけです。

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 ラジさんが紹介している「世直し」の実例をひとつ。

 「ビア・カンペシーナ」(スペイン語で「農民の道」)は、市場原理主義の農業に抵抗する、国際的な農民の連帯運動です。その一翼を担う、米国フロリダのトマト摘み取り労働者たちの闘い――アグリ・ビジネスと戦って、待遇改善を手にした――は、その先駆的な勝利の事例だそうです。

 フロリダのトマト摘み取り労働者の闘いの場は、「イモカレー」(なんだか、インドのカレーの一種のように聞こえますが、アメリカ先住民族の言葉で「マイホーム=我が家」の意味)というところで、すぐそばには「ナポリ」という名の、アメリカの大金持ちたちが遊びに来る最高級別荘地があるそう。

 虐げられた人々の、団結と抵抗の中から、トマトという食べ物を、価格ではなく価値として、それを実際につくりだしている人々の人間として価値を認知させる運動が生まれ、勝利を手にしたのだそうです。

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 ラジさんは自分が「救世主」であることを明確に否定していることは冒頭で申し上げましたが、なぜそうかというと、世直しは救世主がやるものではなく、民衆がやるものだから、というのですね。

 そしてその民衆とは、「諸権利を要求する権利」を持った人々――つまり、世界中の人々のことだそう。

 「人間としての権利を要求する権利」「価格(値段)ではなく価値」――いまの世の中で、これが一番大事なことだと訴えるラジ・パーテルさん!

 その言葉には、救世主ではないにせよ、救世の響きが、あるような気がします。

 人間の「権利」と、その生み出す「価値」を守れ!――希望のメッセージですね。

 ⇒ http://www.nytimes.com/2010/02/05/us/05sfmetro.html

   http://www.guardian.co.uk/world/2010/mar/19/raj-patel-colbert-report-benjamin-creme

  「ビア・カンペシーナ」 ⇒ http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%8A

 

Posted by 大沼安史 at 11:53 午前 1.いんさいど世界 |

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