〔NEWS〕 米国人の投資コンサルタントを拉致・監禁 返済迫る ドイツの年金生活のお年寄りグループに有罪判決
米国人の投資コンサルタントを監禁・拉致し、「お金を返せ」と迫った、ドイツのお年寄りグループ4人に対し、ドイツ南部・トラウンスタインの地裁が23日、有罪判決を下した。
4人の被告(夫婦2組、ほかにもう1人が犯行に加わったが、病気で不起訴)は、いずれも年金生活者。
このうち、リーダーの74歳の男性(ローラント被告)には懲役6年の実刑判決が下った。この男性の妻(80歳)は執行猶予1年半。
もう1人の男性(ウイリー被告、61歳)は懲役4年(実刑)、その妻は1年9ヵ月の執行猶予判決だった。
お年寄りたちが「投資」で失った「被害額」の総額は、ざっと3億円(=340万ドル=250万ユーロ)。
余生を過ごす「虎の子」が消えたのだから、「返せ」と迫る気持ちは分かるが、このお年寄りたち、怒りにまかせて、実力行使=犯行に及んでしまった。その手口がけっこう荒っぽかったことから、地元では「年金ギャング(シュピーゲル誌)」とも。
「年金ギャング」に拉致・監禁されたのは、ジェームズ・アムバーン(57歳)という米国人投資コンサルタント。
アムバーン氏は1990年代の終わりから、フロリダを拠点に不動産投資を開始、ドイツ語に堪能なことから、ドイツで出資者を募っていた。
初めのうちは順調で配当もけっこうな額に上ったというが、米国の不動産バブルが弾けたのをキッカケに、2005年以降、経営難に。
「虎の子」を預けていた被告たちとの間で、出資金の返済をめぐってトラブルになった。
で、事件が起きたのは、昨年(2009年)6月。
ドイツの南西部、シュパイヤーにある邸宅に、ローラントとウイリーの2人がアムバーン氏を訪ねた。
アムバーン氏は不在。そこで2人は氏の帰りを待ち、パブから帰宅したアムバーン氏を地面に倒し、粘着テープでサルグツワをはめ、体をぐるぐる巻きに。
手押し車のボックスに押し込んで、それをズタ袋で包み、離れた場所に停めてあった銀色(シルバー!)に「アウディ」まで移動、アウバーン氏をトランクに積み込んだ。
2人はそのまま車を走らせ、500キロ離れた、ドイツ南東部、キーム湖畔にあるローラント被告の別荘を目指した。
途中、アムバーン氏はトランクの中で粘着テープを外し、置いてあったバールで車体を内側から乱打。これに気づいたローラント被告はトランクを開けて、アムバーン氏を殴りつけ、あばら骨2本を骨折させたそうだ。
アムバーン氏がキーム湖の別荘に監禁されていたのは、4日間だけだった。
「金を返す」ふりをして、スイスの銀行へファクスを送り、その中に、かんたんな暗号(不明)で「警察に通報してくれ」とのSOSを仕込んだのだ。
それから数時間も経たないうちに、キーム湖の別荘は、ドイツの対テロ特殊部隊に包囲されたという……。
アムバーン氏はファクスで「救援」を求める前に、一度、逃げ出したことがある。雨の中、パンツ一丁で飛び出し、リゾート地の通りで「ヘルプ!」と叫んだが、2人に車で追いつかれ、「こいつは泥棒だ」ということになって連れ戻されたそうだ。
「こいつは泥棒だ!」――なるほど、「年金ギャング」の主張にも、一理はある。アムバーン氏の場合は「合法」とはいえ、「年金生活者」を狙ったハゲタカのそしりを完全に免れるものなのかどうか?……
"spektakulären Fall von Selbstjustiz"――ドイツのお年寄りたちによる「自己正義のスペクタクル事件」は、さまざまな教訓と反省点を遺したと言える気がする。
DW(英文) ⇒ http://www.dw-world.de/dw/article/0,,5383084,00.html
シュピーゲル ⇒ http://www.spiegel.de/wirtschaft/soziales/0,1518,685248,00.html
Posted by 大沼安史 at 12:55 午前 | Permalink