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2010-03-03

〔いんさいど世界〕 トルストイの平和主義 バンクーバーへ カナダにロシアから集団移民した「ドゥホボル」の子孫がホームレスのためにダウンタウン再開発事業 ロシアの聖地、「ヤースナヤ・ポリャーナ」とも連帯

 バンクーバー五輪が閉幕した。オリンピックは「平和の祭典」であるはずだから、あの「ドゥホボル」の人々のことも、きっと紹介されるに違いない――と思って期待していたが、何の報道もなかった。

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 「ドゥホボル」(「ドゥホボール」との表記もある)とはいったい何ものか?
 ロシア文学者、木村毅さんの著書、『ドゥホボール教徒の話 武器を放棄した戦士たち』(恒文社刊)の「新序」は、こんなふうに紹介している。

 「ロシア・コーカサス地方の山奥に発生した土俗宗教……聖書の中の「汝、殺すなかれ」と「悪(暴力)に抵抗するに悪を以てする勿(なか)れ」を中心信条として、ひたすらに平和と無抵抗主義を実行」した人々である。
 「ドゥホボル」とはつまり、暴力を否定する、土俗的なキリスト教の教派であり、信者の集団であるわけだ。

 そんな「ドゥホボル」の人々が徴兵を拒否し始めたのは、日露戦争の少し前。「徴兵は、人殺しの団体訓練であることに……ふと気づい」て「銃剣を返納し、練兵を拒み出し」た。しまいには納税を拒否するまでに。

 帝政ロシアの政府は弾圧をもって応え、強制しようとしたが、頑強な抵抗に遭ったため、ついに国外追放を踏み切る。

 その時、「ドゥホボル」の人々の海外移住を支援したのが、非暴力主義の作家、トルストイ。
 トルストイは彼らのために小説『復活』を書き上げ、印税を寄付したのだった……。
 こうして「ドゥホボル」の人々、約1万4千人が1899年以降、カナダに移住することになる。

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 こうした「ドゥホボル」の子孫たちが、「バンクーバー五輪」となんらかのかたちで交差するのではないか――と期待をかけたのは、オリンピックが「平和の祭典」とされることもあるが、バンクーバーのあるカナダのブリティシュ・コロンビア(BC)州が、「ドゥホボル」の人々が最終的に辿り着いた土地であるからだ。
 最初、入植したマニトバ、サスカチュアンが寒冷で農耕に適せず、温暖なBCに移った。

 さて、「バンクーバー五輪 ドゥホボル」でネット検索をかけると、早速、うれしい話にぶつかった。

 バンクーバーの地元紙、「バンクーバー・サン」紙が2月4日付で、こんな記事を電子版に載せていたのだ。

 「ドゥホボル」の、おそらくは3世である、ピーター・レザンソフさん(70歳)――地元の建設会社、「ITC建設集団」CEO(最高経営責任者が、バンクーバーの貧民街、「イ-スト・サイド」に、ホームレスら貧しい人たちのための「マイクロ・ロフト」を建設している、というニュースだった。

 ホームレスたちを救う「社会ハウジング」事業――。そこにトルストイ的な博愛の精神が流れているようで、うれしかったわけだが、それだけではなかった。
 記事はさらにレザンソフさんのことを、「平和主義者」と書き、本業以外の社会貢献活動も紹介していたのだ。

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 サン紙の記事が、レザンソフ氏の活動として挙げていたのは、ふたつ。
 ひとつは、BC州の内陸部にある「セリクーク大学」の「平和センター」を資金的に援助していること。
 もうひとつは、トルストイの荘園、ヤースナヤ・ポリャーナにつくられた「レオ・トルストイ博物館」に、「恩返し」で「ベーカリー・カフェ」をプレゼントしたことだ。

 「平和センター」のHPをのぞいたら、「国境なき医師団」の代表や、カナダ先住民族のレクチャーが紹介されていた。

 ヤースナヤ・ポリャーナの「トルストイ博物館」は、僕が訪問の望みをまだつないでいるところ。レザンソフさん提供の「ベーカリー・カフェ」のテーブルに座る日も、ひょっとしたら来るかもしれない……。

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 さて、レザンソフさんのことを知ったついでに、ネットでいろいろ調べてみたら、「ドゥホボル」の人々が現在でも平和運動にたずさわっていることを知って、そこに何か大きな、歴史の流れのようなものを感じた。

 たとえば、「イスクラ」(「火花」。そういえばロシア革命の党機関紙の名前もこれだった)という、ネットでも公開しているマガジンには反核運動のエッセイも載っている。

 また、「ビクトリア・ドゥホボル・コーラス」という合唱団も活動しており、ネットで彼らの平和の賛美歌を聴くこともできる。

 
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 「ドゥホボル」はカナダ移住後も、政府の強制的な同化政策に対し、全裸でプロテストした人々だ。
 カナダに着いてからもさまざまな困難を潜り抜けて来た人々だ。

 トルストイに支援されて海を渡り、北米カナダの西部に辿り着き、過酷な歴史の旅路を歩み通した「ドゥホボル」の人々。

 「ドゥホボル」――その意味は、「聖霊とともに闘う人々」だそうだ。
 

 バンクーバー・サン ⇒http://www.vancouversun.com/Builder+proud+that+partnership+produced+affordable+rent+Downtown+Eastside/2520556/story.html

http://buildingopportunities.org/blog/index.php/tag/peter-rezansoff/

  バンクーバーの「コミュニティー開発協定」⇒ http://buildingopportunities.org/hrservices/community-benefits-agreement.asp

  セリカーク大学平和センター ⇒ http://selkirk.ca/research/mir-centre-for-peace/

  ドゥホボル 日本語Wiki ⇒ http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%82%A5%E3%83%9B%E3%83%9C%E3%83%AB 
      英語Wiki ⇒ http://en.wikipedia.org/wiki/Doukhobor

 ドゥホボル・歌ライブラリー ⇒ http://www.doukhoborsonglibrary.com/ 
 ビクトリア・ドゥホボル・コーラス ⇒ http://www.myspace.com/victoriadoukhoborchoir

 雑誌「イスクラ」 ⇒ http://www.iskra.ca/

 ヤースナヤ・ポリャーナ ⇒ http://www.cnntraveller.com/2007/11/01/peace-dividend/

Posted by 大沼安史 at 08:53 午後 1.いんさいど世界 |

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