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2010-02-07

〔いんさいど世界〕   「ボー語」  人間の言葉が、ひとつ消えた! 

 ひとりの老女が亡くなり、人間の言葉がひとつ、消えた。
 ベンガル湾に浮かび、アンダマン諸島。その諸島のネイティブ言語のひとつ、「ボー(Bo)語」が、最後の語り手、ボア・サーさん(85歳)の死去で、推定6500~7000年の歴史を終えた。

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 インド領、アンダマン諸島は、コルコタ(カルカッタ)の南南東、1200キロの海上に、ほぼ南北に連なる。
 この諸島は、10の異なった言語を持つ、いわば言葉の宝庫で、言語学者のフィールドとなっている。

 そのうちのひとつ、「ボー語」の「語り部」であるボア・サーさんは、両親が亡くなってから、「話し相手」もなく、ただ一人、心の中で、ボー語を守って来た。仕方なく、ヒンドゥー語の方言を身につけ、それでコミュニケーションをして来た。

 10の言語を持つアンダマンの先住民は、かつて5000人を超えていた。英国の植民者が侵入した19世紀以降、持ち込まれた疫病で人口が減り、いまではわずか57人を数えるのみだそうだ。

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 ボア・サーさんの死でボー語を語る人をいなくなったが、せめても救いは、インド人女性言語学者、アンビダ・アビさんの手で、ボブ・サーさんの「声」が、録音されていることだ。

 アンビダ・アビさんが主宰する、Voga というインターネット・サイトに入ると、ボブ・サーさんの歌声を聞くことができる。 ⇒ http://www.andamanese.net/songs.htm

 どこか、日本語にも通じる、やさしい声。
 
 ila do jara tekh dunya ……

 「どおーっという音とともに、木が倒れ、大地が揺れた」

 やさしい声の中に、悲しみがあるように聴こえるのは、どうしたわけか。

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 ところで、ボア・サーさんとは、どんな人だったのか?

 Voga サイトによれば、夫がいたが、捕まって、半年間、牢獄に入れられたという。誰が逮捕したのだろう? 戦時中、アンダマンには、日本軍がいた……。

 明るい性格で、よく笑う人だったそうだ。他の人にも感染する笑いだったそうだ。

 そんな彼女が残念がっていたのことが、ひとつ。
 それは、ボー族が、英国植民者という異人と接触してしまったことだ。
 アンダマン諸島の北センンティネレーズ島には、センティネレーズ族という、文明とのと触を拒んだ先住民が住んでいて(この先住民は2004年のツナミの際、上空のヘリに、矢をうちかけたことで知られる)、ボー族も、そんなふうに生きることができたなら、部族も部族の言葉も守れたはずだ、という嘆きだ。

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 アンダマン諸島の言語は世界で最も古い言語のひとつとされ、言語の系統もさまざまだそうだ。

 先ほど、どこか日本語に似ていると、ボサ・サーさんが遺したボー語の歌(録音)の印象を述べたが、日本語の起源をインド南部のタミル語にみる有力な説があることを考えると、なんらかの共通点があるのかも知れない。

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 2004年のツナミが押し寄せた時、ボア・サーさんは木に登って、助かったそうだ。
 「文明」のツナミはそれ以上の力で、島の民とその言葉を奪った。

 それはこんど自衛隊がPKOで派遣されるハイチで、15世紀末に起きた出来事の再現でもある。
 
 「金(ゴールド)」に目がくらんだコロンブス率いる一隊によって、「アラワク」という先住民(インディアン)とその文化・言語が、奴隷化、強制労働、疫病で一掃されたのである。

 NGO「サバイバル・インターナショナル」によると、いま現在、全世界で30の先住民族が、絶滅の危機にさらされている、という。

 Voga サイト⇒  http://www.andamanese.net/

 BBCの報道 http://news.bbc.co.uk/2/hi/south_asia/8498534.stm

 インディペンデント紙の報道 ⇒http://www.independent.co.uk/news/world/asia/with-the-death-of-boa-sr-her-people-and-their-songs-fall-silent-forever-1890047.html

   アンダマン諸島 Wiki  ⇒ http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%9E%E3%83%B3%E8%AB%B8%E5%B3%B6

 「サバイバル・インターナショナル」 ⇒ http://www.survivalinternational.org/tribes

Posted by 大沼安史 at 12:16 午後 1.いんさいど世界 |

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