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2009-12-11

〔いんさいど世界〕 「戦争」で守る「パクス・アメリカーナ(アメリカの平和)」 オバマ最高司令官、ノーベル平和賞受賞演説 「正義の戦争」論でガンディー・キング師の「非暴力・平和運動」を北極上空の宇宙へ追放!

 「戦争が正義になる時(When war is just)」――オバマ大統領のノーベル平和賞の受賞演説に、英紙インディペンデント(電子版)がつけたタイトルである。⇒ http://www.independent.co.uk/news/world/americas/when-war-is-just-ndash-by-obama-the-peace-prize-winner-1838196.html

 「正義の戦争」論をふりかざしてアフガン戦争を肯定、「パクス・アメリカーナ(アメリカの平和)」を「戦争」で守り抜く、と明確に言い切った米軍最高司令官、オバマ。

 およそ35分間続いた演説に対し、オスロの式典会場で、拍手は2度、湧いただけだった。こんなにも偽善にみちた平和賞スピーチは、かつてなかったはず。イラクやアフガンではきっと、テレビに向って靴を投げた人もいただろう。

 インディペンデント紙は、オバマ演説に、こんなサブタイトルを付けてもいた。
 「アフガンでのさらなる流血を予告( President's Nobel speech forecasts more bloodshed to come in Afghanistan)」

 オバマ自身は自分の演説に「正義としての永続する平和」とのタイトルをつけていたそうだが、「正義としての永続する戦争」とするべきではなかったか?

 ブッシュには真似できない、さすがオバマならではの修辞と弁舌でもって語り切った受賞スピーチだったが、煎じ詰めれば、ブッシュがオバマの仮面をつけて話したような中身だった。
 
  「正義の戦争 (just war)」、さらには「正義の平和(just peace)」について新たに考え直した?という、このオバマ演説は、ブッシュの代に「軍事帝国」化したアメリカによる世界支配、「現状の圧制」を正当化する、雄弁なる詭弁でしかなかった。

  「ノーベル平和賞」の授章式で、「正義の戦争」はある、とオバマは言ったのだ!

 「そう、その通り、戦争の道具には、確かに平和を維持する役割があります」 
 So yes, the instruments of war do have a role to play in preserving the peace.

 「軍事力の行使は、人道的な理由から正当化できると、私は信じています……」
   I believe that force can be justified on humanitarian grounds…… 
 ――と、まで。
 
 では、なぜ「正義の戦争」は、ある得るのか? 
 この点についてオバマは、演説でこう主張する。
 「世界には悪がたしかに存在するのです。平和を求める非暴力運動は、ヒトラーの軍隊を止めることはできなかったでしょう……」
 Evil does exist in the world. A non-violent movement could not have halted Hitler's armies.

 オバマは、一方でガンディーやマーティン・ルーサー・キング師の「非暴力主義」を高く評価するといいながら、「非暴力」ではなく、「暴力=戦争」でなければなくせない「悪」(ヒトラーの第三帝国や、軍国日本。そしてアルカイダ)がたしかに存在すると言い、だからこそ「正義の戦争」は遂行されねばならない。非暴力の平和運動では止められないものと戦うのが「正義の戦争」だ――と「戦争の論理」を展開したのだ。
 そしてその「正義の戦争」は、「自由」と「デモクラシー」に基づく「正義の平和」を実現するものでなければならない、とも。

 しかし、言わずもがなのことだが、「平和のための正義の戦争」は、「軍国日本」も〔「速(すみやか)ニ禍根ヲ芟除(さんじょ)シテ、東亜永遠ノ平和ヲ確立シ、以テ帝国ノ光栄ヲ保全セムコトヲ期ス」――太平洋戦争の開戦詔書〕も、「ヒトラー」も〔「平和を愛するものとして、私はドイツ国民のために、他の国の人々が平和を追求しなければならないと確信できるよう計算して、軍隊や弾薬を製造して来た」――1938年11月6日 ワイマール演説〕看板に掲げていたこと。

 「戦争」をするものは必ず「平和」を、「正義」を語るのである。敵を「悪」として語るのである。「戦争」こそ、世界に存在する最大の「悪」であるにもかかわらず……。

 その点では、演説に塗りたくった「修辞のドーラン」を剥がしてしまえば、何の新味もない、いつもの陳腐なものでしかないのだが、問題は先にも触れたように、オバマの演説がその気高さ、高邁なトーンを奏でるために、ガンディーやキング師の「非暴力運動」を持ち出し、「正義の戦争」の粉飾を図っていることだ。「非暴力運動」に賛同していると見せかけて、無力なものとして聖なる祭壇に祭り上げ、その高潔な光でもって「正義の戦争」を栄光化しているのである。

 ガンディー、キング師の「非暴力運動」を「理想」として「現実」から分離し、その「理想」の輝きでもって、「現実」の「悪」と戦う「正義の戦争」を、見栄えのよいもの、聞こえのよいものにしている!……

 いわんやガンディーやキング師を、遠くに輝く「北極星」にしてしまい、単なる「道徳の磁石(コンパス)」と指標として、宇宙の果てに「追放」してしまっている!……

 「ガンディーやキングによって行われた非暴力は、あらゆる状況の中で実際的・可能なものではなかったのではないでしょうか。しかし、彼らが説いた愛は――人間の進歩に対する彼らの根本的な信念は――常に私たちの旅を導く北極星でなければなりません。もし私たちがこの信念をなくせば……私たちは道徳の磁石もなくすことにあるのです」
 The non-violence practiced by men like Gandhi and King may not have been practical or possible in every circumstance, but the love that they preached -- their fundamental faith in human progress -- that must always be the North Star that guides us on our journey.For if we lose that faith …… We lose our moral compass.

 いうまでもなく、ガンディー、キング師らの「非暴力運動」は、「現実」と遊離した、単なる「理想」ではない。それは「現実」を変えてゆく、現実的な運動である。

 たしかに、オバマの言うように、「平和を求める非暴力運動」は、ヒトラーの軍隊を止めることはできなかったかも知れない。しかし、「戦争」もまた、ヒトラーの軍隊が生まれるのを止めることはできなかったのである。

 そして「戦争」は、「ヒトラーの軍隊」以外のドイツの一般人をより多く殺した。ヒトラーの軍隊が生まれるのを止めることはできたかもしれない非暴力運動の担い手である民間人まで殺してしまったのである。

 アメリカのいわゆる「全体主義学派」のイデオローグたちは、「ソ連帝国」は「戦争」で叩き潰さないと体制崩壊はありえないと断言していたものだが、「鉄のカーテン」を向こう側から溶かし、「ベルリンの壁」を突き崩したのは、東側の民衆による「非暴力運動」ではなかったか?

 演説のまとめでオバマは、キング師の「私は歴史の両義性に対する最終対応として、絶望を受け容れることを拒否する(I refuse to accept despair as the final response to the ambiguities of history. )」との言葉を引用した上で、世界に向って、最後にこう呼びかけたのだが、まさにこれこそ、キング師が拒否したものではなかったか?

 「今や、曇りのない眼で、私たちは理解することができました。戦争はこれからもあるでしょう。それでもなお、平和への希求も続くでしょう(Clear-eyed, we can understand that there will be war, and still strive for peace. )」

 ガンディーやキング師の「北極星」を「道徳の磁石」とし、「正義の平和」に向って「正義の戦争」を続けると言い放ったオバマ!

 今からでも遅くはない。ノーベル委員会は授賞を取り消し、血まみれにならないうちに「平和のメダル」を取り返すべきである。
  

 オバマ演説全文 ⇒ http://www.nytimes.com/2009/12/11/world/europe/11prexy.text.html?ref=europe&pagewanted=all

                          ☆ 

   歌ブログ 「空から歌が聴こえる」

 本日の1曲は Cantus In Memoriam Benjamin Britten

 ⇒ http://onuma.cocolog-nifty.com/blog3/2009/12/cantus-in-memor.html

 オバマ演説で汚れた心を清めてくれる!

Posted by 大沼安史 at 07:21 午後 1.いんさいど世界 |

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