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2009-12-05

〔いんさいど世界〕 12月8日 「平和の女神」 リメンバー! ジャネット・ランキン!

 「12月8日」――日本の真珠湾奇襲攻撃で「太平洋戦争」が始まった、悲劇の歴史の記念日です。アメリカ時間では「12月7日」――。
 1941年のこの日を転機に、アメリカは第二次世界大戦に参戦してゆく。「リメンバー・パールハーバー」

 首都ワシントンでは、「真珠湾」の翌日――つまり、アメリカ時間、「12月8日」――、連邦議会で「対日宣戦布告」の決議が投票に付されることになります。
 この時、連邦議会で、上下院を通じ、たった一人……一人だけ「開戦決議」に「反対」した議員がいた。
 そう、その人が、知る人ぞ知る、あのジャネット・ランキンさん!

 中西部、モンタナ州選出の下院議員(共和党)。当時61歳。

 この時、ランキンさんが議会で行った発言が、記録として残っています。 
 
 As a woman, I can't go to war, and I refuse to send anyone else. 

 「女だから私は戦争に行くことができませんが、私は他の誰もが戦争に送り出されることを拒否します」

 たった一人の「平和」の一票。「戦争反対」の一票。

 その当時のことをランキンさんは、お亡くなりになる直前に、カリフォルニア州立大学が行った「歴史の聞き取り」調査に対して、こう語っています。
 ⇒ http://www.gretchenwoelfle.com/jeannette_rankin__political_pioneer_60457.htm

 「反対票を投じて控え室にいったら、開戦を叫ぶ人たちでごったがえしていました。将校に成り立ての男が私に向かって非難を始めました。私は男たちに近づいていって、『あんたたち、酔っ払っているね』って言ってやったんです。そしたら、どこかへ消えていなくなった(笑い)」

 でも、このあとが大変だったそうです。「裏切り者」「卑怯者」ですからね。
 しかし、彼女は世間の非難に耐え切った。

 彼女って若い頃の写真なんか見ると、細面のやさしそうな人なんですが、実は筋金が一本、通った人なんです。

 モンタナ州の田舎のミゾーラというところの牧場の家に生まれたそうです。地元の大学を出ると、ニューヨークに行ってソーシャルワーカーを始める。そうして、第一次大戦最中の1917年、彼女が37歳の時に、米国の連邦議会史上初の女性下院議員に選ばれる。この時も彼女、対ドイツ宣戦布告に反対して(反対する男性議員に交じって)、女のくせに何だ、と叩かれたそうなんです。
 
 一期で議会を追われた彼女が、下院議員に再選されたのが、欧州ですでに戦争が始まっていた1940年。「反戦」を掲げての当選でした。そしてその信念を貫いて、「ノー」と言った。

 当時は、日本の指導者の男たちも、ジャネットさんに突っかかって来た「酔っ払いの男たち」のように、正気を失って、戦争の悪魔に魅入られ、正常心を失って戦争に突っ込んで行った頃。
 そんな時、太平洋の向こう、ワシントンの連邦議会で、「開戦」に「NO」と言った人がいた……これは、私たちの日本人の記憶に残らねばならない歴史的な事実と言えるでしょう。このことは、もっともっと知られなければならない。

 ジェネット・ランキンさんは第二次世界大戦(太平洋戦争)が終わると、インドにガンディーに会いに出かけたりするのですが、彼女の凄いところは、最後の最後まで、平和運動に邁進したことですね。

 1968年には、ベトナム戦争に反対して、5000人の女性たちを引き連れ、ワシントンへ平和行進をしています。
 88歳の時に!

 ジャネット・ランキンさんはその5年後、1973年に92歳でお亡くなりになるのですが、その彼女が今、生きてらしたら、イラク戦争、アフガン戦争と戦争を常態化してしまったいまのアメリカのありようを、どうお思いになるのでしょうか?

 アフガンに3万人もの増派を決めたオバマ大統領のノーベル「平和」賞受賞に、どんなコメントを出すのでしょうか?

 きっと手厳しい批判が飛び出すに違いありませんね。

 ジャネット・ランキンさんの志を継ぐ平和運動はアメリカの草の根に根付いていて、出身地のモンタナ州ミゾーラでは、彼女の名前を冠した平和センターが活動しています。

 そんな彼女の遺志を継ぐアメリカの人たちが、彼女の遺した「言葉」を大切に継承しています。
 ひとつだけ、紹介することにしましょう。
 
 You can no more win a war than you can win an earthquake.

 意訳すれば、「戦争? 地震にも勝てないくせに、何するつもりなの?」……ほんとうにそうですね。
 「地震の国」日本の「9条精神」につながるコメントではないでしょうか?

 アメリカの連邦議会では、ブッシュが始めた「イラク戦争」に、たった一人、NOと言った下院議員がいました。
 カリフォルニア選出の女性議員、バーバラ・リーさん。当時55歳の黒人女性です。リーさんは議会で、こう言いました。

 私はしかし、軍事行動が米国に対する国際テロを予防するものにはならないと確信しています。

 Yet I am convinced that military action will not prevent further acts of international terrorism against the United States.

 イラク戦争、そしてアフガンのその後の経過を見れば、バーバラ・リーさんの考が正しかったことが分かります。

 こうして見てくると、アメリカは自由の女神の国ですが、ジャネットさんといい、バーバラさんといい、「平和の女神」の国でもあるわけですね。 
 
 ジャネット・ランキンさんはお亡くなりになる少し前、1970年に日本にいらしたこともあるそうです。
 その時、彼女が対日開戦に反対したことを、知っている日本人はいなかったと、カリフォルニア州立大学の聞き取りインタビューに答えています。

 きっと残念だったんじゃないですか……

 私たちとしては、「12月8日」を、真珠湾の日、太平洋戦争開戦の日としてだけじゃなく、リメンバー・ジャネット、「ジャネット・ランキンさんの平和の日」として記憶すべきでしょうね。
  
 
 
 Wiki日本語 ⇒ http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%AD%E3%83%B3
 Wiki 英語 ⇒ http://en.wikipedia.org/wiki/Jeannette_Rankin
 伝記 ⇒ http://womenshistory.about.com/od/congress/a/jeanette_rankin_2.htm 

  バーバラ・リーさん Wiki ⇒ http://en.wikipedia.org/wiki/Barbara_Lee

 ☆ 歌ブログ 「空から歌が聴こえる」 本日の歌はスコットランド・ゲールの

  ⇒ Runrig の Faileas Air An Airigh

   http://onuma.cocolog-nifty.com/blog3/2009/12/faileas-air-an-.html

 

Posted by 大沼安史 at 11:55 午前 1.いんさいど世界 |

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