« 〔コラム 机の上の空〕 んっ? 「原爆投下」? | トップページ | 〔NEWS〕  『戦争の家』下巻 訳者あとがき »

2009-11-21

〔いんさいど世界〕 ロビンソン・クルーソーの島が危ない!

 「週末の話題」、今回は、ロビンソン・クルーソーの島が危ない!
 
 ロビンソン・クルーソーの島?――ご存知ですか? そう、みなさん、ご存知の、英国のダニエル・デフォーの、あの物語の島が、あるんです。
 ロビンソン・クルーソーの物語の「舞台」というか、「モデル」になった島が、南半球の太平洋上に、ちゃんと浮かんでいる。
 その名もなんと「ロビンソン・クルーソー島」というですね。
 南米のチリ沖、670キロにある島。
 1966年にこの名前になるまでは、マサティエラ島(スペイン語で「陸に最も近い」という意味だそうです)と呼ばれていました。
 この旧マサティエラ島(現ロビンソン・クルーソー島)と、セルカーク島(この「セルカーク」に注意。あとで説明します)、サンタ・クララ島の3つで「ファン・フェルナンデス諸島」(この「ファン・フェルナンデス」とは、1574年に、これらの島を「発見」した、スペインの航海者の名前です)を構成しているのですが、この諸島の「エコ」に赤信号が灯っているのだそうです。
 で、島の生態系の危機という本題に入る前に、ロビンソン・クルーソーの話を、も少し続けると、3つの島の中で最も大きな旧マサティエラ島・現ロビンソン・クルーソー島で、実は1704年から4年4ヵ月、独りで生活した、スコットランドの船乗り(その船乗りの名前は、アレキサンダー・セルカーク。そう、3つの島のうちのひとつの島名に――「セルカーク島」になっている!)がいて、それがクルーソーのモデルになったそうです。
 このクルーソーのモデルのセルカークさんて、航海長をしてた人なんですが、船長さんとケンカして船から下りたところが、旧マサティエラ島。
 数週間くらいしたら、きっと船が通りかかって助けてもらえるはず、と思って、気軽に「独身生活」を始めたそうなんです。
 それが、結局、足掛け5年の長期滞在に。海賊船に助けられたのが、1709年。そう今から、ちょうど200年前のことなんです。
 で、本題に戻ると、この現ロビンソン・クルーソー島(そしてセルカーク島)を含む「ファン・フェルナンデス諸島」が、エコ的にどれほど貴重なところかというと、「植物のガラパゴス諸島」と言われていることからの分かるように、在来種の植物(それと鳥。ガラパゴスのようにトカゲはいません!)――地球上、ここにしか生育していない、という植物の種・及び亜種が123もあって、しかも、それが今、絶滅の危機に瀕しているんだそうです。
 
 英紙インディペンデント ⇒ http://www.independent.co.uk/environment/nature/why-robinson-crusoe-island-is-at-risk-1821710.html
 10株しか確認されていないの植物が14種類あり、1株だけというのも5種類あり、絶滅の危機が叫ばれているのですね。
 ファン・フェルナンデス諸島が火山島として誕生したのは、今から400万年前のこと。そこで生まれ、根付き、独自の進化を遂げて来た植物たちが、いまぎりぎりのところへ追い込まれている。
 この諸島に住む人は500人ちょっと。チリ政府は森林の伐採を全面禁止するなど保護対策をとっていますが、帰化植物と野生の山羊が「天敵」になって、地元の植物たちを攻撃しているそうです。
 帰化植物のエイリアンの代表格は、植民者が垣根として移植したキイチゴといったシュワブ。
 野生の山羊は16世紀の航海者、ファン・フェルナンデスが「生肉確保」で残して言った4頭の子孫で、現在、3500島にも殖えているんだそうです。
 クルーソーのモデルになったセルカークさんは、この山羊のおかげで生き延びることができたのですね。
 この諸島には、ピンク色の足をしたミズナギドリがいるのだそうですが、これも移入動物のハナグマっているのにやらている。
 まるで警戒心のない鳥なので、相手が近寄ってきても、なかなか飛び立とうとしない。地上で卵を抱くので、やられてしまうわけですね。
 こうした状況に、ニュージーランドの学者が帰化植物の広がりを阻止しようと、がんばっているそうですが、「生き延びるか・絶滅するか」――その中間がない、ほんとうに厳しい闘いになっているそうです。
 ファン・フェルンデス諸島は、英国の保護団体の、なんとしても守らなければならないランキングで、世界第一位、最重要・最貴重の場所に挙げられているところ。
 ロビンソン・クルーソーの物語が永遠に語り継がれてゆくものであるなら、このクルーソーの島の植物や鳥たちも、永遠に生き続けてほしいものですね。
 

Posted by 大沼安史 at 05:26 午後 1.いんさいど世界 |

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 〔いんさいど世界〕 ロビンソン・クルーソーの島が危ない!: