〔コラム 机の上の空〕 「核の傘」に守られた日本? 二度も串刺しにされたではないか!
「ジャーナリズム」とは本来、こういうものなんだな……英紙インディペンデント(電子版)のトップを張った、パトリック・コバーン記者の、「アフガン、撤退の時」という「記事(事実の記述)」を読んで、そう思った。
⇒ http://www.independent.co.uk/news/world/asia/afghanistan-time-to-leave-1817004.html
「権力=当局者」の提灯持ちをして、世論操作の「ニュース」を垂れ流しするのではなく、「取材」結果に基づいて「事実」を「記事」にして伝える――ジャーナリズムの基本は、これである。が、それだけで、いいものではない。
その「事実」の中には、今、何をなすべきか、に関する判断、意見(そこにつながる可能性、道筋も含め)も当然、含まれなければならない。
「ジャーナリズム」――(「私」として、「われわれ」として)――はこう訴える、訴えたい、訴えかけねばらない……これも、政治の主権者である読者に届けられるべき「事実」である。「事実の記述」である。
「ジャーナリズム」として、「取材」の結果として、私(たち)としては、何としても訴えたい……この「訴え」が、日本の新聞におなじみの「○○が望まれる」式の、テキトーなものではなく、書き手の中に、自分の「事実」として、自分の「真実」として在るのなら、それもまた「事実」であり、記されなけばならないものである。
コバーン記者の「記事」は、世論調査で米軍・NATO軍の増強を望むアフガン人はわずか18%しかいないこと、逆に、削減を求める人が44%に達していること、米軍自体がアフガンにはわずか「100人」しかアルカイダがいないと認めていること――など、これまで報道された「事実」を総合し、そこから、「アフガン撤退」という「結論」を導き出している。この「結論」もまた――いや、この「結論」こそ――「事実」であり、「ジャーナリズム」である。
今ここで、何故こんな当然のことを言い出したかというと、今朝、日本のある代表的な新聞を読んで、ガッカリしたからだ。
その新聞は、「核廃絶」「核兵器反対」を「社説」(つまり、「結論」)で言い続けて来たはずだ。
なのに、1面の隅の部分ながら、軽いタッチでこう書いている。
「核なき世界」に向けて動き出したオバマ米大統領。 「核の傘」に守られた日本はどうすべきか。……日米の専門家が論じる。
「核の傘」に守られた日本――と、さらり書いてしまう神経が、たまらないのだ。
「核の傘」が惨憺たる破局を誘うものであることが、そしてその「神話」が核武装を合理化するものであることが、これまでさんざん言われて来た、というのに。
ヒロシマとナガサキで、二度も「核の傘」の「串刺し」に遭った国だというのに。
何をか、言わんや、である。
僕は日本のジャーナリズムの問題点のひとつに、「ニュース」報道と「意見(社説・論説」報道の乖離、分裂があると思う。
仮に「社説」、あるいは「社論」が、「事実」の取材の積み重ねに基づく「事実」として形成されたものであるなら、それは権力の脅し・すかし・ごまかしにも動じない、強固なものになるだろう。
そこに分離や乖離はなく、すべてが「事実」の中で補強し合っている、わけだから。
「1945年8月6日、9日」から積み重ねて来た「事実」報道の積み重ねの上に、「意見」報道が立ち上がったものであるなら――それがおためごかしな「作文」でないものだとしたら――、それは「核」を「傘」のメタファーで語るゴマカシを拒むだろうし、「核の傘」に守られた日本、などというお気軽な書き方は決してしないはずのものである。
日本はヒロシマ・ナガサキの名において、「核の傘」を拒否する――と、どうして書かないのだ?
コバーン記者のようにハッキリと、「核の傘 撤退の時」と、どうして書かないのだ?
何?、 「核の傘」に守られた日本はどうすべきか。……日米の専門家が論じる――だと?
バカを言うのも、いい加減にしたまえ。
「核」の現実を知る、ほんとうの「専門家」は、ヒロシマ・ナガサキのご存命の被爆者であり、お亡くなりになった(靖国神社に祀られもせずにいる)被爆者の方々でなかったのか?
Posted by 大沼安史 at 06:57 午後 3.コラム机の上の空 | Permalink
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