〔NEWS コラム〕 テキサスの米陸軍基地乱射事件 ハサン軍医(精神科医)を苦しめたもの
米陸軍最大の基地、フォート・フッド(テキサス州)で起きた、軍医(精神科医、階級は少佐)による、銃乱射・大量死傷事件――。
12人を殺し、31人を負傷させたニダル・マリク・ハサン少佐は、その名から分かるように中東アラブ系のアメリカ人。しかも、イスラム教徒だそうだ。
ワシントン郊外の陸軍病院(ウォルター・リード)から、最近、同基地に転勤して来たという。
戦地に配属された経験はなかった。しかし、間もなく(年内)にイラクに派遣されることになっていたという。
米国在住のいとこの証言によれば、ハサン軍医は、イラク及びアフガンの戦場への配属に抵抗していたという。
いとこによれば、ハサン軍医は中東系であり、イスラム教徒であることから、米軍の同僚に、忠誠心を疑われていたそうだ。
名誉の除隊を勝ち取るため、弁護士を探そうとさえしていた。
ハサン軍医は、戦場帰りの米兵のカウンセリングにあたっていたそうだ。(ということはつまり、ハサン軍医は、米兵が戦地で見た地獄、体験した地獄を、「共有」する立場にあった……米兵の精神の傷口から覗く、戦争の現実を「追体験」していた!)
米軍の精神科医とは、「人を殺してはいけない」タブーを「命令」でもって破らされた兵士が精神のバランスを崩した時、それを「回復」させ、「平常心」をもって殺人を続行させるのが任務である。
「殺人」をしても平気な「正常=異常」さに戻す、これが彼らの務めなのだ。
イラク戦争が始まった頃、バグダッド近くの米軍基地で、白人の軍医(精神科医)が、たしかトレーラーの中で自殺した。
ハサン軍医もおそらくは、自殺した軍医と同じような精神状態ではなかったか?
殺戮(殺人)もまた、自己破壊の衝動によるものだから。
軍の中で精神科医であることの難しさ。
それに、アラブ系とイスラム教徒であるという要素が加わったなら、苦悩は倍化せざるを得ない。
英紙ガーディアンによれば、昨年、自殺した米軍兵士は、169人(確定)。
米軍はもはや、限界を超えてしまっている。
人間として耐えられない一線を超えてしまっている。
イラク・アフガン戦争を止めなければならない、もうひとつの理由がここにある。
⇒ http://www.nytimes.com/2009/11/06/us/06suspect.html?_r=1&ref=global-home
http://www.guardian.co.uk/world/2009/nov/06/nidal-malik-hasan-fort-hood-shooting1
Posted by 大沼安史 at 04:45 午後 | Permalink