〔NEWS〕 パキスタンの核が行方不明に? ことし初夏、米国の緊急対応チームが出動 S・ハーシュ氏が「パキスタンの核」問題をレポート
米国の信頼すべき調査報道ジャーナリスト、シーモア・ハーシュ記者が、『ニューヨーカー』誌で、パキスタンの核問題の現状をレポートしている。
⇒ http://www.newyorker.com/reporting/2009/11/16/091116fa_fact_hersh?currentPage=all
Defending The Arsenal(核の兵器庫を守る)とのタイトルの長文の記事。
アフガン・パキスタン戦争が激化する中、パキスタンの核がイスラム過激派の手に落ちるのではないか、との懸念が高まっているが、管理体制は万全なのか?
ハーシュ氏はこの点について、現在、ロンドンに住むムシャラフ前大統領から、こんなコメントを引き出している。
「核攻撃にも平気な、深いトンネルがある」
このムシャラフ発言は、パキスタンが核兵器を運搬・貯蔵する巨大なトンネル網を保持していることを確認したものだ。
また、パキスタンのある核専門家は、地下トンネルについて、「ビッグ・アンクル(米国情報機関)の偵察衛星でも、モニターできない」と語ったそうだ。
パキスタンの核は、核そのものと起爆装置、及び運搬手段(爆撃機、ミサイル)を分離する安全対策が取られているが、米国は特に起爆装置を重視し、その運び出しのための作戦計画も準備されているという。
起爆装置を、運び出しに使うC17輸送機にどれだけ積み込むことができるか、核の移転・隠匿場所も含め、検討されているそうだ。
恐らくはこの作戦計画に沿ってのことと見られるが、ことしの夏の初めに、パキスタンの核が行方不明になった、との警報で、ワシントン郊外のアンドリュース空軍基地から、極秘の緊急対応チームが、パキスタンに向け、飛び立ったそうだ。
警報はその後、間違いを分かったが、その時、緊急対応チームは湾岸のドバイに達していたそうだ。
「危機」がホンモノだったとして、パキスタン当局は、米側に核の本当の在り処を明らかにしただろうか?
少なくとも、全ては明らかにしなかったはず。どこが別の極秘の場所に移してしまったはずだ――とは、米国防総省アドバイザーの見方だ。
(別の米国の前情報当局者は、「パキスタンは核弾頭の数、そのうちのいくつかの貯蔵場所、その指揮・統制システムを、われわれに見させてくれた……われわれはその安全対策の計画書も入手した。安全が破られた時の対策を議論することもできた」と語っている)
極秘の地下トンネル網が存在するとして、それはパキスタンのどこにあるのか?
ラホールの西、サルゴダにあるパキスタン空軍基地を挙げるのは、米国務省の前当局者だ。しかし、同基地はアンドリュース空軍基地ほどの広大なスペース。そこに核が保管されていると分かったとしても、その基地の何処にあるのか分からなければ意味がない。
ハーシュ記者はパキスタンでの取材後、ニューデリーに飛んで、インド情報筋と接触したが、そのインド当局者は「パキスタン軍の大佐クラスの動きを懸念している」と語ったそうだ。
つまりは、パキスタン軍の中堅指導部による、「パキスタン軍・核クーデター」の恐れ……。
となると、アフガン・パキスタン問題の沈静化がますます急務になるわけだが、ハーシュ記者は、この点に関しても、ムシャラフ前大統領から、重要なコメントを引き出している。
「イスラム教徒はオバマを高く評価している。受け容れられていることを利用しなければならない。タリバンに対してもだ。彼らと政治的に対応することを試みなければならない」
パキスタンの核を安全に管理するためにも、アフ・パク戦争は止めなければならない……。
Posted by 大沼安史 at 06:24 午後 | Permalink