〔いんさいど世界〕 改訂版 交通事故で「植物状態」 「昏睡」の中で「意識」を持続 ベルギーの元大学生 23年後にコンピューター支援で「言語コミュニケーション」を開始! 「閉じ込め症候群」に光明
注 先に見出し・本文中で「脳死」と表記しましたが、読者より誤りであるとの指摘があり、その通りであるので、削除・訂正します。
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看護師の母親は諦めなかった。母親は直感していた。
交通事故で「植物状態」になり、医師から「希望はない」と宣告された最愛の息子の心の中で、「何か」が動いていることを。
無反応な息子の中で何かが息づいていることを。
母の直感は正しかった。母親の努力は実った。植物状態の息子は、「意識」を正常に持続していた。
事故から23年後、脳科学とコンピューターの支援で、息子は母親と――そして誰とでも、コミュニケーションできるようになった。
ベルギーで、このほど報じられた、奇跡でもないでもない、これは「事実」の物語……。
忘れもしない今から26年前、1983年11月の日曜日、午前2時のことだった。ベルギーのオランダ国境に近い、カンヌ村に住む、看護師のフィナさんに、息子のロムさん(当時、20歳の大学生)が前夜、リアージュで、交通事故に遭い、入院した知らせだった。
一命はとりとめたものの、ロムさんは全身麻痺、「無意識・無反応」……。
フィナさんは医師から、「神経的な植物状態。回復の希望はない」と告げられたが、受け容れることができなかった。
ロムさんは「無意識・無反応」で、たしかに植物状態だったが、フィナさんは「彼は理解している」との「確信」を持った。母親としての「自分の中の何か」が、フィナさんと家族を確信させていた。
ロムさんを自宅に引き取り、治療の道を求めて、さまざまな専門家、医療機関とコンタクトを取り続けた。最先端をゆく米国の研究所にも相談した。しかし、希望
の道はすぐには見つからなかった。
そんな家族の努力を、ロムさんはすべてわかっていた。耳で聴いて知っていた。事故で運ばれた先の医師の話し声も全部、聴いて、心の中で叫んでいた。
事故から14年後、ロムさんの父親が亡くなった。ロムさんはフィナさんら家族に連れられ、父親のお墓に植樹する現場にも立ち会った。
父親の死も、植樹も、全部、分かっていた。悲しみを表すことができなかった。
ロムさんの中に生き続けていた「意識」が「発見」されるキッカケは9年前に訪れた。
ロムさんと同じような状態から「回復」した人の話を、フランスのテレビが放映したのだ。
フィナさんの照会に、フランスの医師は、ベルギーの専門家を紹介してくれた。
ベルギーのゾルダーというところのケア・センターに入所していたロムさんの下へ、言語療法士らがやって来た。
コンピューターのマウスを、ロムさんが押すことができれば、ロムさんの「意識」を(あるいは意識の欠如)確認することができる……
その時、(そのことを聴いていた)ロムさんが懸命に動かしたのは、足だった。
足がマスウを押した。コンピューターの画面に「私はロムです」と出た。
イエス・ノーだけは「言えた」。
本格的なロムさんの「意識」の「全開」は、それから6年後――今から3年前に訪れた。
ロムさんは、リアージュ大学のスティーブン・ローレイ博士によって、「閉じ込め症候群(ロックド・イン・シンドローム)」と診断されたのだ。
意識はあるが、その中に「ロックド・イン」され、外部とコミュニケーションをとれない状態にあることが確認されたのだ。「タッチ・スクリーン」を使えば、言語コミュニケーションできることが分かったのだ。
ロムさんは今、女性看護師の援助で、ケア・センターから、自宅にいるフォルさんのもとに電話をかけて来ることができるという。
「タッチ・スクリーン」でロムさんが書いたメッセージを、看護師さんが代わりに電話口で読み上げてくれるのだ。
ロムさんは現在46歳、母親のフィナさんは73歳。
母と息子の、固い絆に結ばれた四半世紀に及ぶ苦闘は、何らかのアクシデントで植物状態に陥った人に、希望の光を点すものだ。
こうした「閉じ込め症候群」、植物状態に陥った人の4割にも達する、という研究もあるという。
☆
上記の記事は、ドイツのシュピーゲル誌のスクープ報道と、英紙ガーディアンの報道に基づくものです。下記リンクを参照。
ガーディアン紙
⇒ http://www.guardian.co.uk/world/2009/nov/23/man-trapped-coma-23-years
http://www.guardian.co.uk/science/2009/nov/24/locked-in-syndrome-belgium-research
シュピーゲル誌
⇒ http://www.spiegel.de/wissenschaft/medizin/0,1518,662627,00.html
http://www.spiegel.de/wissenschaft/medizin/0,1518,645620,00.html
Posted by 大沼安史 at 01:32 午後 1.いんさいど世界 | Permalink
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