〔いんさいど世界〕 バスで席を立たずに逮捕! ローザ・パークス女史の歴史的な「拒否」の9ヵ月前、同じモンゴメリーで、プロテストをしていた、黒人の少女がいた!
人種差別撤廃へ向けたアメリカの公民権運動の発火点のひとつ、米国南部の町、モンゴメリーは、ローザ・パークスさんという黒人女性が、バスの白人優先席に座り続けるプロテストを行ったところだ。
1955年12月1日のこと。ローザ・パークスさんは白人の乗務員から、その席から立つように命じられたのを拒否し、逮捕された。
アメリカの公民権運動は、この抗議行動を起点に、「フリーダム・ライダース」などの非暴力・直接行動を呼び覚まし、歴史的な勝利につながってゆく。
そのローザ・パークスさんの「決起」の9ヵ月前に、同じモンゴメリーで、当時15歳の黒人少女が、バスで立ち上がらないプロテストを行って逮捕され、それがパークスさんの抗議行動につながっていたことが、最近、出版された、その彼女の伝記で明かになった。
ニューヨーク・タイムズ紙 ⇒ http://www.nytimes.com/2009/11/26/books/26colvin.html?em
その少女の名は、クローデット・コルヴィン。
そして、忘却の底に沈んでいた彼女のプロテストを「発掘」し、本にまとめたのは、フィリップ・フースさん(2009年の全米図書賞・児童文学を受賞)。
70歳になる白人男性の作家が、ニューヨークのブロンクスに住む、同じ年齢のクローデットさんを探しあて、本を書いた。
クローデットさんが、逮捕されたのは、1955年3月2日のことだった。学校からの帰りのバスだった。バスのドライバーに、同じ列の座席が3つも空いているにかかわらず、中年の白人女性に席を譲れ、と命じられた。
「この白人の女性が、同じこの列の座席に座るんなら、私だって座っていいはず」
そう思って、立ち上がらなかったそうだ。
逮捕され、裁判に。
その時、彼女を助け、夜に自宅のアパートに呼んで、クラッカーにピーナツバターをつけて食べさせてくれた優し女性が、NAACPという黒人組織のメンバーだった、あのローザ・パークスさんだった!
裁判ではマーチン・ルーサー・キング牧師が先頭に立って応援してくれた。
この裁判が、キング師のデビュー戦だった。
その年の末、ローザ・パークさんが同じ抗議をして注目を浴びる中で、クローデットさんは忘れられた。
彼女が既婚の男性の子を孕んでいたことで、公民権運動関係者は彼女を「ヒロイン」とすることに二の足を踏んだらしい。
ローザ・パークスさんは当時、42歳で、いかにも信念を持った、ストイックな女性だったが、クローデットさんは、おしゃべりな、15歳の少女。
世間の目は、ローザ・パークスさんに向かい、クローデットさんは歴史の表舞台から消えていた。
ニューヨークに出て、老人ホームで介護の仕事を続けていたクローデットさんは、今、引退して、新聞2紙に目を通し、テレビ番組を楽しむ毎日。
そんなクローデットさんの、キング牧師評は、こうだ。
「ふだんはどこにもいるような人。そう、〔バスケットボールの〕コーベ・ブライアントのような。でも、いったん、喋り始めると、〔映画の『十戒』で〕モーゼを演じた、〔俳優の〕チャールトン・ヘストンになってしまうんだから……」
人知れず、歴史の車輪を動かした黒人女性は、「少女」らしさを失わない人だった。
クローデット・コルヴィンさん。
ローザ・パークス女史とともに、同時代の歴史の記憶にとどめなければならない人だ。
Posted by 大沼安史 at 05:30 午後 1.いんさいど世界 | Permalink
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