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2009-09-07

〔NEWS〕 「戦争の家」下巻 下訳が完了 

 ジェームズ・キャロル氏の「戦争の家」の下巻(後半)部分〔今秋、緑風出版から刊行〕を、今、ようやく訳し終えた。
 もちろん、第一稿、これから見直しをかけねばならない。

 「上巻」の作業では、大学教員の本業があって、まるで余裕のない、夢遊病状態(?)での翻訳仕事だったが、春以降の「失業」状態が幸いし、いくらか落ち着いて取り組むことができた。

 夏休みなしだったこともあって、カラダの状態はよくないが、精神状態は、いい。

 仙台は、早、秋の気配。

 先ほど、エピローグの最後の部分を訳出中、キーボード横に、はらりと一本、光るものが落ちた。銀色の蜘蛛の糸のような白髪だった。

 実りの秋。ボロなカラダを持たせて、実らせねばならないものが、まだ、いくつかある。
 ああ、急に、柿が食べたくなった……。

 以下は、「戦争の家」の(下巻)エピローグの最終部分の訳稿(未定稿)。
 読んでいただければ、どんな内容の本なのか、お分かりいただける、と思う。

 キャロル氏が「物語」の最後に「用意」した舞台は、両親(父親は空軍の中将。筋を通し、政権の上層部とぶつかって左遷人事に遭った人だ)の墓のある、アーリントン墓地。

 「戦争の家=ペンタゴン」を見下ろす丘の上で、キャロル氏は、最後の最後で、読者に対し、ある呼びかけをして、長い物語を閉じている。

 「戦争の家」の物語は、「平和の家」をつくる物語である。

            ☆  ☆  ☆
 
 

私は今、アーリントンの丘に立っている。丘に来れば、父と母の眠る場所に必ず行く。両親の墓石は「無名戦士(ザ・アンノウン)の墓」から、二、三百メートルほど斜面を下ったところにある。

 墓石の面には、父の軍歴と階級が刻まれている。父が亡くなった日付も……。そう、私の父は一九九一年、湾岸戦争が始まった日に死んだのだ。

私の父は――少なくとも私にとっては、知られざる(アンノウン)兵士だった。私は父の生前、父の真実を知らなかったが、今、少しずつ分かりかけている。

今、墓の周りを見渡せば、そこには父と同世代の人々の墓石が並んでいる。皆、モスクワとの核戦争をしない道を見つけ出した人たちの墓だ。条約をつくり、それを守ろうとした人たちの墓だ。国際的な絆の網の目を大切にした人たちの墓だ。激情に流された人に平静になれと言い、押しとどめた人たちの墓だ。リベラルな人々が疑うことを許した人たちの墓だ。「冷戦」が熱核戦争に至らず、冷えたまま終わることを、「鉄のカーテン」の向こう側のパートナーと協力し、実現した人たちの墓だ。

私はそこに、称賛すべき何かを見るのである。そしてまた、あの流れが、逆に強まっていることに遺憾の意を禁じえないのだ。

私の父やその同僚たちは、宗教的な原理主義者でもなければ、政治的な原理主義者でもなかった。しかし、その後継者たちは、そのどちらでもある。
 「神の家」となった「戦争の家」に警戒を怠ってはならない。

私が今、書き終えようとしているこの本は、子どもの私を父が連れて行ってくれた、「大きな家」の物語だ。幼い私は、その大きさだけが目に入った。他のものを見ることはできなかった。

私は本書を、父と母を讃え、愛するために書いた。
父は私に、あの夜、差し迫った核戦争の恐怖を伝えた。それは私に、何事かをなせ、という命令でもあった。だから、私はこの本を書いたのだ。

父親を先に葬るだけ長生きした息子なら誰でもそうであるように、私もまた私の父から、私も死ぬべき存在であるという、究極の教えを受けた。

それにしても、私たちがこの地上にある時間はなんと限られていることか? 命はあまりにも短い。

 だからこそ、私は言うのだ。戦争で人殺しなんかしていないで、生きる道を見つけるんだ、と。

 私は今、生きているから、この本を書いたのだ。死んだ両親以上に、これから生きて行く、私の子どもたちを愛して書いたのだ。

 そして、皆さんの子どもたち、一人ひとりのために。

 子どもたちの未来を、一緒に守ろうではありませんか。

                  ☆

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Posted by 大沼安史 at 10:37 午前 |

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