〔コラム 机の上の空〕 民主党の「少年」諸君! そう、勝ったのは君たちではない! 国民が勝ったのだ!
総選挙から一夜明け、ウォールストリート・ジャーナル紙の電子版が、「日本の新しい時代の夜明け(Rise of a New Era in Japan )」という解説記事を載せていた。
記事本文よりも、「写真」に目を吸い寄せられた。
⇒ http://online.wsj.com/article/SB125160894574169933.html
「いかにも、いかにも」の常套写真ではなかった。「喜びを爆発させる」「喜色満面」の写真ではなかった。
民主党の圧勝、政権交代が確定した、歴史的な瞬間を――民主党の指導者たちの表情を、さりげなく、静かに、写し撮った一枚だった。
みんな、少年のような顔をしていた。三角ベースの草野球で、年上のチームを打ち負かしたような顔をしていた。
どんなもんだい、と言いたげな、腕白小僧もいた(むろん、小沢一郎氏のことである)。
野球帽をやや斜めに、アベコベにかぶっていたら、さぞかし、似合っただろうに。
あの参議院の瘠せた長老議員までが、優しい目で、どこか、遠くを見ていた。
日教組出身のこの人が、こんないい目をしていたとは、知らなかった。瀬戸内少年野球団の顧問の先生(?)のような、いい目をしていた。
少年の心では生きられない、政治の世界を生きて来た彼らの顔に、ある種の純真さが戻った、その瞬間をとらえた写真だった。
それはおそらく達成感よりも、驚きがもたらしたものであるだろう。
日本の政治が、ここまで大きく動くとは、世論調査の数字の上で予測できていたとしても、たぶん、実感としては、感受していなかったのだろう。
大きく動くとはわかっていたが、大きく動いたあとの自分の感動までは(当然のことながら)予測できていなかった――だから、彼らの驚きは新鮮な、清冽なものとなり、厚くなった面の皮を削ぎ落とし、少年の素顔を覗かせたのだ。
素直な驚き――それは、百戦錬磨の小沢氏の、飴玉をしゅぶるの止めて目を凝らす、ちょっと畏まったような顔を見ても分かる。
では、彼らを少年のように驚かせたものは何か?
自分たちの力を超えた、何か大きなものが立ち現れ、それに自分たちは動かされたのだ、という「発見」である。
政治戦略とか戦術とか、政治力学とか打算を超えたものが、自分たちを大勝利に導いたという、謙虚な認識である。
民主党が勝ったのではない、マニフェストが勝ったのではない、という自覚が、彼らの顔を少年の顔にしたのだ。
そう、当たり前のことだが、国民が勝ったのだ。
勝ったのは、「一票」がつながり合い、重なり合って生み出した、政治変革の流れだ。どん底から決起し、時代閉塞の壁を突破しようと動き出した、日本民衆の群れだ。
同じ、ウォールストリート・ジャーナル紙電子版のスライドショーに、東京の下町のパン屋さんが出した、ちょっと選挙に行って来ます、の看板が出ていた。
生活の場の近くに投票所があり、そこで書かれた無数の投票用紙が、国会の岸辺へ、潮騒となり、波となって押し寄せた。
民主党の指導者たちが、浜仕事で早起きした少年のように、みんなで夜明けの海を眺めているように見えるのは、そのためであろう。
民主党よ、間違ってはいけない。
君たちが勝ったのではなく、国民が勝ったのだ。
君たちが自民党に勝ったのでなく、国民が勝ったのだ。
民主党よ、この謙虚な驚きを忘れずに、少年の顔を取り戻したことを忘れずに、国政に取り組んでくれ給え。
政治家の悪党面は、もう見たくもない。
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Posted by 大沼安史 at 08:57 午後 | Permalink | トラックバック (0)