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2009-07-11

〔コラム 机の上の空〕 美智子さま トロントこども病院での「子守唄」

 “I don't have a good voice.”
 
 美智子さまは、そうおっしゃられたそうだ。
 カナダの新聞(ナショナル・ポスト紙)に(当然のことながら)、そう英語で出ていた。

 天皇陛下とともに、トロントのこども病院「シック・キッズ」を訪問された時のこと。
 読書室のソファーにお掛けになり、子どもたちに、日本の子守唄を歌いかける前の一言だった。

 美智子さまは英語で、こうも言ったそうだ。「会えてとてもうれしい。私が子育てをしていた時の子守歌を披露します」と(中日新聞の記事)。

             ☆

 美智子さまが歌い出したのは、「ゆりかごの歌」だった。
 大正デモクラシーの頃、「赤い鳥・童話・童謡」運動の中から生まれた、あの「ゆりかごの歌」。
 北原白秋作詞、草川信作曲のあの歌を歌い始めた。

  ⇒ FNNのビデオ http://fnn.fujitv.co.jp/en/news/headlines/articles/CONN00158826.html

 一番と二番と四番――

  ♪ゆりかごの歌を
   カナリヤが うたうよ 
   ねんねこ ねんねこ ねんねこよ

  ♪ゆりかごの上に
   びわの実が ゆれるよ
   ねんねこ ねんねこ ねんねこよ

  ♪ゆりかごの 夢に
   黄いろい月が かかるよ
   ねんねこ ねんねこ ねんねこよ

   …………

 「とてもよかった。もっと聴きたかった」と、ブランドン君というシック・キッズの一人が言った。
 美智子さまの心と声で歌われ、トロントのシック・キッズたちの心に届いた、「日本のララバイ」だった。

             ☆

 美智子さまは、ご自分でお書きになった(そして、訳されもした)童話を4冊寄贈されたという。

 美智子さまは学生時代、「ねむの木の子守唄」という詩をお書きになり、それに曲がついて、佐藤しのぶさんが歌っているが、もしかしたら、そのCDもお贈りになったのかも知れない。

             ☆

 トロントには、移民の子孫である日系人が12000人も暮らしている。両陛下の今回のご訪問を、どんなに喜んだか知れない。

 その一人、トケ・スヤマさんという83歳になる日系人男性の言葉が、現地の新聞(グローブ&メール)に出ていた。

 スヤマさんは西海岸、ブリティッシュ・コロンビア州の日系人抑留所を出て、1946年以来、トロントに住んでいるそうだ。

 スヤマさんが今回のご訪問に心躍らせたわけは二つあった。

 ひとつは、トロントというカナダの都市が、人種的に多様であることへの誇り(これを、私なりに解釈すれば、人種的な偏見を乗り越えた文化的な多様性に対する、プライドと安心――それを日系カナダ人として誇りたい気持ち……ということになろう)。

 もうひとつは(これは、私の勝手な言葉遣いだが)、この先、「トロントに両陛下が来たんだ。ザマミロ、うらやましいだろう」と、何度も自慢できる喜び。

 つまり、「日系カナダ人である」ことの「誇り」と「喜び」が、この老人の心を弾ませたのだ。

             ☆

 そんなスヤマさんが、美智子さまの「ゆりかごの歌」のことを地元のテレビニュースで知ったとき、どんな気持ちになったか、(もちろん、勝手な想像だが)分かるような気がする。

 スヤマさんは今年、83歳だから、戦争終結時、19歳。生まれは、日本の元号で言えば、昭和2年ではないか、と思われる。

 カナダでお生まれになったか、それとも日本で生まれ、両親に連れられ、カナダに移民したか定かではないが、幼い頃、母親から、日本の子守歌を聞かされていたことは、たぶん間違いない――。

 こう考えると、トロントのこども病院で、美智子さまがお歌いになった子守歌が、さらに深い響きを持ったものに聴こえて来る。

 美智子さまは、今、カナダで暮らす移民日系人の最高齢世代が、スヤマさんのように、日本の子守唄で育ったことをお考えになり、「ゆりかごの歌」を歌われたのではないか?

 カナダの子ども、シック・キッズのために歌うことで、カナダ人として生きる(生きて来た)日系人のお年寄りのために――その幼い頃の思い出と、その人生の肯定のために(――あるいはまた、苦難の中で子育てした移民の親たちの人生を偲び)、美智子さまはお歌いになったのではなかったか?

              ☆

 日本とカナダの間にも「戦争」という歴史問題があり、今だ、長い影を落としている。
 カナダ側には、戦時中、日系人を強制収容所に隔離した問題があり、これは一九八八年、当時のマルニーニ政権が抑留者1人あたり、2万1千(カナダ)ドルの賠償を行ったことで、一応、解決している。
 日本側には、香港をめぐる戦闘の「カナダ兵捕虜虐待」事件というのがあって、これは未解決のままだ。(下記のカナダ紙の記事を参照)

 だから、今回の両陛下のご訪問に際しても、カナダの団体から日本政府の「謝罪」を求める公開質問状が出ている。 

 そんな「二つの祖国」間の軋轢に、最も敏感なのは、カナダの日系人の方々だろう。
 そして、彼・女ら、日系カナダ人の――とりわけ、高齢世代の胸の内を、天皇・皇后両陛下が、お知りになっていないはずがない。(私は両陛下がサイパンに行かれたとき、朝鮮人の方々の慰霊碑にも花を供えられたことを思い出す……)

 今回の両陛下のカナダご訪問には福田元首相が同行したが、日本政府は政治の責任で、歴史問題の清算と謝罪を、一日も早く、なすべきである。

 それが多分、「私は美声ではない」と言いつつ、トロントこども病院の読書ルームで、カナダ人関係者や報道陣(そして、病院でこどもたちを励ましている、パッチ・アダムスのような道化たち)の前で、敢えて日本の子守歌を歌った、美智子さまに応える道だ。

    
 ☆ 天皇のオタワでの「悲しみの言葉」

  http://www.allheadlinenews.com/articles/7015717992?Japanese%20Emperor%20Expresses%20Sadness%20Over%20World%20War%20II%20Deaths,%20Sufferings

 The Japanese royalty said at a state dinner in Ottawa on Monday night, quoted by the CanWest News Service, "It is all the more regrettable that the relationship that had thus developed between our two countries was disrupted by the Second World War.... It saddens me that so many people experienced suffering and difficulties during the war. Ever since our diplomatic relations resumed after the end of the war, our exchanges once again have been enjoying steady development."

 ☆ トロントこども病院

  中日新聞 http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2009071002000153.html 

  毎日新聞 http://mainichi.jp/select/wadai/koushitsu/news/20090710k0000m040165000c.html

  http://www.thestar.com/news/gta/article/663401

   http://www.nationalpost.com/news/story.html?id=1775302

 ☆ トロントの日系人 スヤマさん

  http://www.theglobeandmail.com/news/national/a-flag-a-smile-and-a-bow-greet-japans-emperor-and-empress/article1211666/

 ☆ カナダ 謝罪要求 http://www.cbc.ca/canada/british-columbia/story/2009/07/09/bc-vancouver-groups-japanese-emperor-apology.html

 ☆ カナダ人の太平洋戦争 ttp://www.winnipegfreepress.com/opinion/editorials/editorial---japans-apology-overdue-50347297.html

 ☆ カナダ日系人抑留 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E7%B3%BB%E3%82%AB%E3%83%8A%E3%83%80%E4%BA%BA#.E6.8A.91.E7.95.99

             http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E7%B3%BB%E4%BA%BA%E3%81%AE%E5%BC%B7%E5%88%B6%E5%8F%8E%E5%AE%B9#.E3.82.AB.E3.83.8A.E3.83.80
 
 ☆「ねむの木の子守唄」 ユーチューブ http://www.youtube.com/watch?v=ShollVTOsVM

 ☆「揺篭のうた」真理ヨシコさん ユーチューブ 

 http://www.youtube.com/watch?v=59RdmMfSKfQ&feature=related

Posted by 大沼安史 at 11:19 午前 3.コラム机の上の空 |

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