〔コラム 本の森・一番町日記〕 佐藤道夫さんを偲ぶ
亡くなられた佐藤道夫さん(参議院議員)に、私が初めてお目にかかったのは、90年代の初め、佐藤さんが札幌高検の検事長をしていらした時のことだ。
私はその頃、札幌で、地元新聞社の社会部デスクをしていて、「顔売り」がてら、年の瀬に開かれた、東北大学法学部同窓会の会合に顔を出した。その時、声をかけて下さった。
拓銀をめぐるスキャンダルが、地元の経済界を巻き込んで噴出していた頃のこと。
私はスキャンダルの背景に、地元の新聞の社会部記者(デスク)として迫ろうとし、佐藤さんは地元の検察の長として、捜査に当たっていた。
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同窓・同郷の先輩でもある佐藤道夫さんは、現職の検事長でありながら、検察中枢が金丸捜査に手心を加えたと、朝日新聞紙上で批判の論陣を張った「骨」のある人だったが、それ以上に、けれんみのない、「いい文章」を書くエッセイストとして、私は尊敬していた。
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付き合いは――といっても、私が一方的に押しかけて行くだけだったが――、佐藤さんが参議院議員に転進してからも続いた。
参院議員会館の部屋へ、何度か遊びに行った。
私が仙台市の市議会選挙に「市民政党」から出るというと、わざわざ仙台まで応援に駆けつけてくれた。
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私が佐藤道夫さんを好きだったのは、あの独特の「飄々とした距離感」に魅かれたせいだ。
群れず、同調せず、少し離れたところから観察し、事の核心をつかみ、自分なりの意見を述べてゆく……。
『検事調書の余白』などの著作に収められた名エッセイは、そうしたスタンスから生まれたものだろう。
その「飄々とした距離感」には冷淡な隔絶はなく、人情味を感じさせるものがあった。
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そんな佐藤さんから聞いた言葉で、今、一番の印象として残るのは、議員会館で聞いた、この一言だ。
ある有力な政治家を評しての一言。
「えばる奴は嫌いだ」――。
佐藤道夫さんのその一言を、お国訛りの仙台弁をかすかにとどめた、その声の響きとともに、今、思い出す。
「えばる奴は嫌いだ」――。
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〔注〕 このコラムは、小生がボランティア編集長を務める、仙台市の市民出版社、「本の森」の編集部ブログ、「一番町日記」(⇒ http://hello.ap.teacup.com/vancouverbc/ )のコラムを転載したものです。
Posted by 大沼安史 at 01:16 午後 | Permalink

















