« 2009年1月 | トップページ | 2009年3月 »

2009-02-20

〔いんさいど世界〕 時は金なり 助け合いシステム 起動 大不況下 Time Dollar に脚光 

 先週は、公式通貨を補完する「第2のマネー」、「コミュニティー通貨」を極大ざっぱに紹介しました。地域社会の人びとがお互いの信頼を担保に、地域限定型の「自分たちのマネー」を発行、モノとサービスを交換して地域の経済を守る動きが、経済大崩壊の震源地・アメリカで生まれているのです。

 今日はそうした「コミュニティー通貨」の双子の兄弟というか、姉妹のような、ユニークな動きを報告したいと思います。

 アメリカで誕生し、北米各地に広がり、欧州など全世界に根付き出した「タイム・ドル(ダラー)」の動きです。

 Time Dollar――訳して「時間ドル」。アメリカのエドガー・カーン博士が(1980年に)発案し、1990年代半ばに、本格的な草の根運動として注目を集めるようになった、地域社会における経済活動活性化のアイデアです。

 ニューヨーク州イサカで発行されている「イサカ・アワー」というコミュニティー通貨は、独自紙幣を発行、サービス(労働)のほか、モノ(労働による生産物)の交換(売買)も可能とするシステムですが、「タイム・ドル」は「労働(サービス)」の「交換」を地域社会ベースで行う仕組みです。

 エドガー・カーン博士が創始した「タイム・バンク(時間銀行)USA」のHP(⇒参照)に、わかりやすい概念図が出ています。

 それをより簡素化して説明すると、こうなります。

 ひとり暮らしのマーサおばあさんが、地域の「タイム・バンク」を通じて、誰か代わりにお店で買い物してください、とSOSを発しました。
 それを「タイム・バンク」を通じて聞きつけたのが、スタンレーさん。マーサおばあさんとは面識はありませんが、代わりに買い物してあげようと思い、買い物代行をしてあげました。遠くのお店へ行くので、所用時間は「2時間」。
 労働1時間あたり「1タイム・ドル」の決まりになっていますから、マーサおばあさんは「タイム・バンク」の「口座」上、「2タイム・ドル」の「マイナス」。スタンレーさんは逆に「2タイム・ドル」(以下、TDと表記)の「プラス」になります。
 「2TD」を手にしたスタンレーさんですが、自宅でパーティーを開くことになり、その「2TD」でもって、サキソフォーン演奏家のラウルさんに出演してもらいことになりました。
 一方、「2TD」マイナスのマーサおばあさんは、「タイム・バンク」登録者のロベルタという人の依頼で、セーターを編んで(5時間かかったので)「5TD」をゲット。さしひき「3TD]のプラスに戻しました。
 そこで、マーサおばあさんはキャシーさんに頼んで、TDでもって家の掃除をしてもらいます。そのキャシーさんがこんどは…………という具合に、あらゆる「労働」が「1時間」あたりの単位計算で、平等に交換され、「公式通貨」の「$ドル」がなくても、地域の人びとの経済的な助け合いが実現する仕組みです。

 この「何をしても、1TD」が、「タイム・ドル」システムのいわば肝。脳外科の手術も、庭の草むしりも、同じ1時間なら「1TD」。平等主義が貫かれているわけです。
 「労働をなるべく高く売る」とか「市場の需給バランスで」といった「非人間的な市場・競争原理」を意図的に排除した、「みんな同じ人間。お互い様」路線が徹底しているのですね。

 こうした「タイム・ドル」システム、昨年5月には西海岸の大都市、ロサンゼルスに初めて、「エコー・パーク・タイム・バンク」というのが誕生、地域の住民28人で、「留守中の花の水やり」「ネコの世話」「チェロ教習」など、TDを媒介に助け合いを始めているそうです。

 東海岸のバーモント州(「緑の山の州」って言うんだそうです)では、「タマネギ川(オニオン・リバー)エクスチェンジ(交換)」というTDがあり、「車での送迎」「お料理教室」、あるいは「昔話の語り聞かせ」など、それぞれの技能・労働を交換しているそう。

 西海岸、サンフランシスコ近郊、東オークランドには「ソブランテ」というTDが5年前に立ち上がり、160人のメンバーを抱えるまでになっているそうです。

 こうしたTDがアメリカでどれだけの数に達しているかというと、「タイム・バンクUSA」がつかんでいるだけで、60。世界的にはスペインなど22ヵ国に広がっているそうです。
 (ちなみに、独自紙幣の発行は、アメリカでは2004年時点で、なんと82地域にも達しているそうです)

 「お金」(公式通貨)がなくても、「時間」(自分の人生の時間)さえあれば、地域社会の人びとが助け合うことができるこのシステム。
 まさに「時は金なり」――あなたの地域でも立ち上げてみてはいかが??!!! 

⇒  〔タイム・ダラーの流れ〕 http://www.timebanks.org/documents/timebanks_cycle-1.pdf

 〔タイム・ダラー HP〕 http://www.timebanks.org/

 〔ロサンゼルス〕 http://www.timebanks.org/documents/LATimes2008.pdf

 〔バーモント〕 http://www.timebanks.org/documents/VermontMaturityJune2008.pdf

 〔オークランド〕
    http://www.sfgate.com/cgi-bin/article.cgi?f=/g/a/2009/02/16/moneytales021609.DTL

Posted by 大沼安史 at 11:27 午前 1.いんさいど世界 | | トラックバック (0)

2009-02-14

〔いんさいど世界〕 金融危機を生き延びる 「マネー創出」の時代、到来

 カジノ化した世界経済が崩壊し、グローバルな危機が進行しています。巨大バブルが弾けて金融機関、及び財テクに走っていた企業はどこも、火の車。貸せない、借りれないの「マネー不足」が深刻化、流れの末端に位置する庶民の生活を直撃しています。

 世界の中央銀行はマネーの大放出でもって危機を乗り越えようとしていますが、放出先は一般の庶民ではなく、あくまで金融機関。担保力のあるリッチな企業、個人しか、恩恵にあずかることはできません。

 日本も同じ。日銀がいくらマネーを供給しようと、われわれ一般の日本人の財布の中になかなか落ちて来ない。

 そんな状況の中で、日銀オンリーではなく、中央政府もマネーを発行する「政府紙幣」構想が今、取りざたされているわけです。

 国債だと買い手が必要ですが、「政府紙幣」であれば、買い手がなくともじゃんじゃん発行できる。これを使って、公共事業を実施し、景気の底上げを図ろうという狙いです。

 「政府紙幣」とはつまり、公式通貨と「平行」して流通する、中央政府(お上)発行の「第二のマネー」ということになるわけですが、経済危機が一段と深刻化する中で、世界的には、コミュニティー・レベルで「新通貨(マネー)」を発行する動きが出ています。

              # # #

 英国の新聞、「ガーディアン」は、ジョージ・モンビオというスター・コラムニストを抱える、高級紙です。英国のみならず、国際世論に影響力を持つ、この「ガーディアン」が先月、モンビオ氏の「政府がわれわれを救えないなら、われわれは自分たちをマネーを自分で刷るライセンスを持たねばならない」という論説を掲げました。

 「われわれのマネーを刷る」……そう、われわれ民衆が中央銀行、中央政府の手をかりず、自分たちで自分たちのための「マネーを創出」せよ、というアピール文がガーディアンの紙面を飾ったわけです。

 ついに出た、といべきか、ようやく出たというべきか?

 実は、この自分たちで自分たちのマネーを発行し、地域社会(コミュニティー)の経済(モノとサービスの交換)を守るという取り組み、実は1929年の「世界大恐慌」(の前段階)以来、世界各地で実際に行われ、今に続いている、新しい経済の流れ、なんです。

 この流れ――「代替通貨」とか「コミュニティー通貨」とか「平行通貨」とか「補完通貨」とか、いろんな呼称のある、自分たちのマネーの創出する運動については、僕個人、かねがね関心があり、以前、アメリカのグレコという人が書いた本を翻訳、『地域通貨ルネサンス』というタイトルで刊行したことがあるのですが、さまざまな成功例があるのに、これまでは「草の根」に隠れて、あまり知られることはありませんでした。

 モンビオ氏はこの知られざるアイデアをガーディアンのコラムを通じて、一気に世界の人びとの元へ届けたわけです。

               # # #

 これまで世界では、どんな「われわれのマネー」が発行されて来たか?

 ドイツのシュバネンキルヘンという炭鉱町では1923年、シルビオ・ゲゼルという経済学者の提案に沿って、炭鉱主が「ヴァーラ」というマネーを発行、ヤマの暮らしを守りました。
 モンビオ氏によれば、この「ヴァーラ」はドイツ国内2000の企業が採用、各企業コミュニティーの経済を支えたそうです。
 当時のドイツは政府紙幣の「マルク」がハイパーインフレを続け、マネー不足が深刻化していたのです。

 また、オーストラリアのヴェルグルという町では1932年に、町役場がゲゼル博士の草案した独自通貨を発行、市民の暮らしを守る一方、公共事業にも力を注ぎ、スキーのジャンプ台まで建設したそうです。

 より現代に近いところでは、ブラジルの南部、パラナ州のクリティバ(現在の人口180万人)という都市(日系人も4万人いる!)。道路などのゴミ拾い、清掃をした人に、報酬として「クリティバ・マネー」というバス乗車コイン(という形の独自通貨)を発行、地域経済の活性化につなげたそうです。              

 以上が、モンビオ氏がコラムで紹介している事例ですが、世界的には1980年代以降、米国ニューヨーク州イサカの「イサカ・アワー」(紙幣発行)や、カナダ・バンクーバーの「LETS」(台帳方式)といったコミュニテイー通貨が次々に登場しており、「われわれのマネー」を創る動きは多面的、重層的に展開しているのが実情です。

               # # #

 それでは金融危機の震源地であるアメリカでは、どんな状況か?

 インディアナ州のサウスベンドでは、「ミチアナ・マネー」というコミュニティー通貨を創出する動きが出ているそうです。地元のコーヒーショップの店主らが立ち上げようとしているもので、「ドル」札が流れてこないなら、自分たちでマネーを発行、地元経済を維持しようと意欲を燃やしています。

 北カルフォルニアのフンボルト郡では、「フンボルト交換コミュニティー通貨プロジェクト」が存在感を増しており、参加者(地元企業)は毎月、6社ペースで増えてる、といいます。(現在、70社加盟)

 世界的にはどうか?

 世界の動向を端的に示すものとして注目されるのは、ブラジルの動きです。ブラジルのベレムで先月、始まった「世界社会フォーラム」で、ブラジルの「新しいマネー」として、新通貨「アマゾニダ」と立ちかげる決議が採択されています。

 日本ではどうするべきか?
 
 「マネー創出」の動きを見続けてきた僕としても、モンビオ氏同様、「やってみる価値あり」という考えです。

 たとえば、仙台なら仙台で、公式通貨「円」と同価値の市内及び周辺地域限定の地域通貨「ダテ」(伊達政宗から命名)を発行、モノとサービスの交換(売買)を支える。

 「円」と組み合わせて(補完通貨機能)使えるようにすれば(たとえば、パン屋さんが代金の半額をダテで受け取る)、「円」の有効活用にもなり、それだけ地域全体の流動性が増すわけだし、(円の消費)税収にもつながる。 

 「われわれのマネー」、コミュニティー(地域)通貨の創設は、まさに「やる価値」あり、です。
  

⇒ 
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2009/jan/20/george-monbiot-recession
-currencies

  http://www.dawn.com/2009/01/31/top17.htm

   http://www.wsbt.com/news/local/39529132.html

 http://www.times-standard.com/localnews/ci_11489434

 
http://www.rcreader.com/index.php?option=com_content&task=view&id=13473&Item
id=42

 http://www.npr.org/templates/story/story.php?storyId=100450777

Posted by 大沼安史 at 03:51 午後 1.いんさいど世界 | | トラックバック (0)

2009-02-02

〔いんさいど世界〕  反貧困 レジスタンス フランス流

 フランスで、反貧困レジスタンスが勢いづいている。スーパーの売り場でお祭り騒ぎをする「ピクニック闘争」や、空きビルを占拠して、住居として「解放」する動きなど、さすが革命の国らしいラジカルさだ。

 スーパーでの「ピクニック(再所有)闘争」を続けているのは、「呼びかけとツルハシ」という若たちのグループ。

 カルフールといった大型スーパーの売リ場に乗り込み、その場でパーティーを開く、新たな闘争スタイル。音楽を鳴らし、果物など棚の食べ物を食べ、ミニ宴会を楽しむ。

 店のガードマンや警官が駆けつけるまでの短い時間を、精一杯楽しむ。

 これまで4回、「ピクニック」を決行、これからも続けるという。

 リーダーは、レイラさんという若い女性。政治学の学位を持っているが、パートで辛うじて生活している。

 英紙・オブザーバーの取材に、「スーパーマーケットは公共空間。(ピクニックは)楽しい。単に反スーパーということではなく、社会システムに対する挑戦だ」と語っている。

 空きビルの占拠を続けているのは、「暗黒の木曜日」という若者グループ。1月にはパリの(セーヌ)左岸の空き病院を占拠し、解放した。
 
 住む場に困った若者がいるのに、空きビルを使わない手はない、という論理だ。占拠したクリニックは、5年も空いたままだった。

 大学生の3割もが職に就けず、社会に巣立たなければならない、「不安定世代」と呼ばれる、パリの若者たち。

 それにしても、「ピクニック闘争」とは凄い。

 ⇒  http://www.commondreams.org/headline/2009/01/25-3

     http://lappeletlapioche.blogspot.com/

     http://www.liberation.fr/societe/0101313602-sa-loi-du-marche

   http://www.jeudi-noir.org/En-3-mots-Jeudi-noir-pour-un.html

Posted by 大沼安史 at 03:40 午後 1.いんさいど世界 | | トラックバック (1)