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2009-01-22

〔コラム 机の上の空〕 「オバマ」の前に「フリーダム・ライダー」あり 公民権運動の先駆者ら、50年後に喜びを語る

 黒人男性、デイブ・デニスさんはいま68歳。ニューオルリーンズの貧民街で、1960年代以来の同志、ボブ・モーゼさん(この人も黒人、ハーバード大卒)が続けている算数・数学教育プログラム、「アルジェブラ・プロジェクト」を手伝っている。
 なお現役、バリバリのコミュニティー活動家だ。

 そのデイブさんは、オバマ氏が大統領選に勝利した夜、ジャズ・クラブにいた。「当選」を、すぐには信じられなかった。

 自分の車に戻ってシートに座ると、涙があふれた。ジャズ・クラブに戻ると、みんなが叫んでいた。「イエス・ウィー・ディド(おれたち、やったぜ)」

 それを聞いてデイブさんは昔のことを思い出し、怖気を感じた。公民権運動の盛り上がりで、1965年に「選挙権法」という連邦法が出来たところまではよかったが、地元ミシシッピー州では黒人差別の現実に阻まれ、幻滅に終わった苦い思い出を思い出したからだ。

 それでも、「オバマ当選」に、デイブさんは「穏やかな喜び」と「幸せ」を感じているという。
 
 本当の勝利を手にするまで、まだ時間がかかる。けれど「私はオバマを信じるよ」と、デイブさんは言った……。

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 仏紙、ルモンド(電子版)に、60年代の初め、アメリカ南部で、公民権運動の先頭を切った、元「フリーダム・ライダー」6人が登場し、オバマ新大統領の就任式に寄せる思いを語っていた。

 長距離バスに乗り込み、ターミナルのカフェなどで人種隔離に非暴力で抗議し、殴打され(あるいは仲間を殺され)、投獄されながら闘い抜いた若者たちも、すでに老境。

 電子版の記事には、当時と今の写真が添えられ、50年の歳月の流れを感じさせる。

 SNCC(学生非暴力調整委員会)やCORE(人種平等会議)などに参加した学生ら若者たちの非暴力・直接行動があったればこそ、キング牧師のワシントン大行進など公民権運動の高揚もあったのだ。

 オバマ氏がまだ生まれる前の話である。

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 「ライダー」の一人、フランク・ホロウェーさんは1961年当時、22歳の学生。バスの最前列、白人専用席に仲間と座って、ジョージア州アトランタのターミナルに着いた。シェリフが姿を見せると、他の乗客はみんな降りてゆく。仲間とフランクさんの2人だけが残された。
 その時、フランクさんは突然気付いたという。
 俺たちがいることで、白人の乗車収入が消える……おれたちには、そうした力があるんだ、と。

 逮捕され、悪名高きパーチマン刑務所に入れられ、殴打されたフランクさんだが、自身を含む、当時の「フリーダム・ライダー」たちの行動を、公民権運動における主要な第一歩だったと振り返る。

 「闘いはまだまだ続くが、私はオバマの当選に非常に満足している。経済や刑務所を見ればわかるように、われわれ黒人は、まだまだひどいありさまだ。アメリカの社会には、人種のバリアーがいまなおある。しかし、いま、ここに希望がある」

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 ルモンドに登場した6人のうち、ただひとりの白人女性、マーガレット・レオナードさんは、その後、新聞記者として働き、女手ひとつで子どもを育てた人だ。

 だから、オバマ氏のお母さんに共感を覚えるという。

 マーガレットさんの記憶に残る光景がひとつある。
 パーチマン刑務所から出所した時のことだ。

 刑務所の長い廊下を歩いている、格子の間から、次々に手が差し伸べられたという。白い手が、黒い手が……。

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 ベトナムで戦ったあと、実業家として成功を収めたハンク・トーマスさんは、当時、20歳の大学生だった。

 3年前の2005年、アラバマ州のアニストンに戻り、昔、黒人を弾圧する側にあった白人女性と話しをする機会があった。

 その白人女性が言った。
 「ベトナムでは共産主義者たちがあなたを殺そうとしたでしょ。それは、あなたが敵だからよ。ここで、彼らが(白人たち)があなたを殺そうとしたのは、あなたが敵だからよ」
 
 長い沈黙のあと、ハンクさんは言い返した。「でも、われわれは同じアメリカ人だ!」
 白人女性は言った。「それは分かるわ。でも、あなたがた(黒人)は敵。だから、彼らはあなたを殺そうとしたのよ」

 大統領選投票日の夜、10時ごろのこと、気になってテレビをつけると、オバマ「当選」のニュースが流れていた。

 「誇らしく思った。白人たちがして来たことの全てを赦した」

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 ヘゼキアー・ワトキンスさんは1961年に、なんと13歳で逮捕された。刑務所から出所後、公民権運動を続け、キング師や黒人作家のジェームズ・ボールドウィンらと交流した。

 ヘゼキアーさんは言った。
 「私は全てのことを、誇りに思っている。殴られたことを。投獄されたことを。侮辱されたことを。警察犬のことを……オバマの勝利は、私を含むみんなの活動の結果だ。死んだ人、負傷した人、かたわにされた人、ボケた人、元気でいる人……われわれみんながオバマのために道を切り拓いたんだ」

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 「オバマ」の前に、「フリーダム・ライダー」、あり。

 彼・女らの払った献身・犠牲を思えば、ただ乗りは許されることではない……そのことを、学生時代、懸命になって黒人作家・活動家の著書を読みまくったオバマもまた、十分、承知のはずだ。

 大統領就任演説でオバマは、「われわれは旅をして、ここまで来た」と言った。

 そう、バスに乗って「非暴力の旅」を貫き、血路を切り開いたのは、フリーダム・ライダーの若者たちである。 

⇒  http://www.lemonde.fr/archives/article_interactif/2009/01/16/les-freedom-riders-parlent-pres-de-50-ans-apres_1142604_0.html

Posted by 大沼安史 at 10:36 午後 3.コラム机の上の空 |

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