〔いんさいど世界〕 難病のプロゴルファーが奇跡の復活 優勝飾る 多発性硬化症 新薬で克服
今朝はゴルフの話題。クラブも握ったこともない僕が話をするのも何ですが、とてもいい話(日本
ではいまだ知られざる……)があるので、ご報告したいと思います。
難病にとりつかれ、いったん選手生命を失ったプロゴルファーが、52歳にして奇跡の復活を果た
し、英国のシニア・ツアーで優勝したという話です。
このゴルファーが克服した難病は、「多発性硬化症(MS)」。これを臨床実験中の新薬で直し、
再起に漕ぎつけました。
これは世界中のMS患者の皆さんにとっても、大変な朗報。ほんとに勇気付けられますね。
このプロゴルファーは、ジンバブエ国籍、英国在住の白人男性、トニー・ジョンストーンさん。
ことしの6月、英国のジャージー島のゴルフ場で開かれた「ジャージー・シニア・クラシック」で
、強風が吹く悪コンディションの中、辛抱のゴルフを続け、優勝を飾りました。
2001年のカタール・マスターズ以来、7年ぶり、7勝目のヨーロッパ・ツアーでの勝利。22
勝を上げている米国プロゴルフツアーを加えれば、通算29勝目の栄冠を手にしたわけです。
そんなジョンストーンさんがなぜか急に歩けなくなったのは、2003年のことだったそうです。
「9ホールまで行ったところで、コンセントを抜かれたように、先に進めなくなった」そうです。
医者の診断は、筋肉痛とか疲労骨折といった「職業病」のカテゴリーを超えた、「多発性硬化症」
(MS)という難病。
この病気は、中枢神経系の脱髄疾患のひとつで、運動マヒ、視神経炎など引き起すといいます。日
本では人口10万人あたり8~9人の発症率で、全国に約1万2千人、患者がいると見られています
。
しかし、ジョンストーンさんは、ゴルファーとしての人生をあきらめませんでした。英国のケンブ
リッジ大学の研究チームが新薬開発を続けていることを知り、その実験台になったのです。
その新薬、「アレムツズマブ(Alemtuzumab)」は元々、白血病治療薬として30年前に開発されて
いたもの(発見者のセザール・ミルステインさんは1984年にノーベル賞を受賞)ですが、ケンブ
リッジ大のチームはMSに有効ではないかと2005年から。投与法を含め実験を開始、欧米での臨
床実験の結果、インターフェロン投与者と比べ、症状を71%も軽減できる、といった好成績を収め
ることができました。
ジョンストーンさんは、その「アルムツズマブ」に救われ、グリーン上に甦ったわけです。
診断から5年、練習を再開してから2年後の快挙。
「ジャージー・シニア・クラシック」でジョンストーンさんは最終日、16番のホールで、ドライ
バーをミスショットして、ボールをラフの中に入れてしまったそうです。
「ゴルフ人生最悪のドライバー・ショット」だったそうですが、そのあと奇跡のリカバリーに成功
し、このホール、なんとバーディーまで奪ったそうなのです。
そのバーディー・パットを決める際、ジョンストーンさんは、「オレはまだやれるぞ」と、自分の
ゴルフに再び、自信を持つことができたそうです。
執念の復活を遂げたジョンストーンさんなわけですが、優勝インタビューにこう答えたそうです。
「この勝利はMS患者の仲間に対する、希望を捨ててはいけないというメッセージになるだろう」と
。
日本のシニアツアーになんかにも参戦して、元気な姿を日本のファンにも(日本のMS患者さんに
も)見せてもらいたいですね。
ところで、この「アレムツズマブ(Alemtuzumab)」という新薬、まだ試験を継続中で、英国でもま
だ認可が下りていません。
早く安全性と効果が確かめられて、日本でも使えるようになるといいですね。
⇒ http://www.independent.co.uk/life-style/health-and-wellbeing/health-news/drug-can-
reverse-the-effects-of-ms-969774.html
http://www.europeantour.com/default.sps?pageid=127&pagegid=%7BAEFB93B0%2DEFF5%2D4C05%
2DAB0F%2DFD08D947D944%7D&eventid=2008844&reportid=62774