〔いんさいど世界〕 CIAがカーン博士の「核の闇ネットワーク」に「モグラ」「仕込む スイス人技術者父子を買収 スイス政府 技術者のパソコン情報を全面削除 米国の圧力か?!
「イスラムの核の父」、パキスタンのカーン博士による「核の闇ネットワーク」に、米国のCIA(中央情報局)が「モグラ」(スパイ)を仕込み、サボタージュ(妨害破壊発動)を行わせていたことが分かった。
「モグラ」は、スイス人技術者(71歳)とその息子2人。
スイスでは外国のためのスパイ活動を自国民に禁じており、本来なら訴追を免れないが、事件が発覚しているにもかかわらず、スイス政府は技術者一家のパソコン・ファイルを破壊し、証拠を隠滅してしまった。
スイス政府はパソコンには核の設計図などが含まれており、テロリストらの手に渡ることを阻止するためデータを破壊したとしているが、ファイルにはCIAにとって暴露されては困る情報が多数含まれていると見られ、それが裁判を通じて公開されるのを恐れ、消去した――との見方が強まっている。
ニューヨーク・タイムズ(電子版)が8月25日に報じた。
それによると、CIAによって買収されていたのは、フリードリッヒ・ティナー技術者と、息子のウルス、マルコの父子3人。
CIAはまず、2000年にウルスの取り込みに成功、その説得で「モグラの父子」が生まれた。
ティナー父子側にCIAから流れた買収・工作資金は、その後、4年間に1000万ドルに上った、とされる。
父親のティナーは、真空ポンプを開発した技術者で、これがウランを濃縮する遠心分離機に利用できることから、カーン博士とつながり、30年来、博士の「核の闇マーケット」活動に寄与して来た。
ティナーがCIAの指示で従事したサボタージュ工作は、IAEA(国際原子力機関)の査察官らによっても確認されている。
査察官らは2003ー04年に、イランとリビアの核施設で、見た目には全く問題はないが、正常に動かない「真空ポンプ」を確認。
また、2006年の初めには、イランのナタンツで、工作が施された「電源装置」により、遠心分離機が50基も爆発、使用不能となった。
カーン博士のネットワークへのティナー父子の関与は、2004年の初め、マレーシアの警察報告書の中で明るみに出た。
これを受けてスイス当局が捜査に乗り出し、身柄を拘束したりもしたが、(おそらくは米側の圧力で)この一件は立件されることなく、ことし5月23日、スイスの法務大臣が米国から帰国後、パスコン・ファイルの「廃棄処分」が行われ、裁判を維持しうる「証拠」が全て失われた。
ファイルの「情報」がテロリストの手に渡るのを防いだとする「処分理由」の説明に対し、当然ながら、スイスの国内外から批判が噴き出ているという。
ファイルを厳重に保管すればいいだけのことなのに、どうして廃棄したのか――という、極く真っ当な批判だが、IAEAに近い欧州の外交官によると、ファイルの中にあった「核弾頭」の設計図は、スッケチーで不完全なものだったという。
となると、ファイルを全面廃棄した理由が他になければならないが、タイムズ紙の記事は、そこにCIAとのコンタクトの一部始終が記録として残されている可能性がある、と指摘している。これが「公開」されるのをCIAは恐れた……もちろん、これは説得的な推論だが、もうひとつ考えられるのは、ティナーのファイルによって、イランの核開発が実はブッシュ政権が喧伝しているほどには、進んでいない事実が明らかになることである。
ブッシュ政権はたぶん「イラン抑止の大義」をなくすことを恐れ、ファイルを封印したのではないか?
米側はティナーのパスコン・ファイルを「レビュー」してはいる。当然、「コピー」もしていることだろう。
その「コピー」にはもしかしたら、「北朝鮮」情報も入っているかも知れない……。
⇒ http://www.nytimes.com/2008/08/25/world/25nuke.html?_r=1&scp=1&sq=Shadowy%20Deals&st=cse&oref=slogin
Posted by 大沼安史 at 06:04 午後 1.いんさいど世界 | Permalink | トラックバック (0)