〔いんさいど世界〕 大地を守れ! アメリカ先住民が「ロンゲスト・ウォーク(最長行進)Ⅱ」 「昨日」を知り、「今日」、「明日」を祈る……
サンフランシスコからワシントンへ……アメリカの先住民たちが5ヵ月かけ、3600マイルの「最長行進(The Longest Walk)Ⅱ」を歩き切り、ゴールインした。
1978年の第1回から数え、30年ぶりの大行進。連邦政府の条約破棄を覆した前回に対し、2回目の今回は「環境」保護を訴え、ゴミ拾いをしながら歩き通した。
今回の「Ⅱ」は、AIM(アメリカン・インディアン運動)の指導者、デニス・バンクス氏らの呼びかけで組織された。
出発は真冬の2月11日。サンフランシスコからスタートした行進は南北2ルートに分かれ、途中、先住民の居住地を訪問しながら、ワシントンの連邦議会に突きつける要求事項を積み上げ、7月11日、首都に到着した。
☆
デニス・バンクス氏が、ネット放送局「デモクラシーNOW」のインタビューで語ったところによると、30年ぶりの「最長行進Ⅱ」の準備に取り掛かったのは、5年前から。
先住民の居留地でも、「地球温暖化」の影響が顕著になって来たからだという。
「彼・彼女ら(先住民)の何人かは、泣きながら私たちに話してくれました。汚染された水がどれだけ儀式を穢し、汚染されら空気がどれだけ呼吸を損なっているかと。地球温暖化はまさに真実なのです」
バンクス氏が辿ったのは、南ルート。コロラド川にはクロニウムが流れ込み、モジャヴェ、ワラパイ、ハヴァスパイ、ヤヴァパイ・アパッチ族の生活を危機に陥れていた。
ナヴァホの居留区ではウラニウム鉱山が稼動し、ナヴァホ族による反対運動が起きていた。
先住民の聖地も蹂躙されていた。ケンタッキーでは1200ヵ所の墓地に開発の波が押し寄せていた。
デニス・バンク氏によれば、今回の「Ⅱ」にもまた、日本山妙法寺など日本から29人が参加し、「南無妙法蓮華経」を唱えながら、先住民と一緒に歩き通した。日本の先住民族であるアイヌの女性も参加したそうだ。
行進最終日の7月11日は、数千人がワシントンで合流、コンヤース連邦議会下院議員に嘆願書を手渡した。
☆
「Ⅱ」のネットのサイトに、「行進」の意味を書いた「変化へのマニフェスト」が掲載されており、のぞいて見ると、冒頭に「祈り」が掲げられていた。
祖父よ 今日、私たちはこれから生まれて来る世代のために祈る
祖父よ 今日、私たちは生きとし生けるもののために祈る
祖父よ ひとつの精霊、ひとつのからだ、ひとつの声の祖父よ 私たちはこの祈りを送る
祖父よ 今日、私たちの祈りを聞いてほしい そうでなければ、Red Man(レッド・マン)たる私たちの明日はないかも知れない
「明日」(未来)のための祈りを「今日」(現在)捧げる……それが先祖によって聞き入れなければ、私たちに「明日」はないかも知れない……
ここでいう「祖父」(先祖)とはたぶん、「過去(昨日)」を指すに違いない。
平易な言葉が、深い真実を湛えて、心を打つ。
私たちはどれだけ「昨日(過去)」を大事にし、「明日」のため、「今日」を祈っているのだろう?
湖畔の山上におったてた「バブルの館」に集まった、あの指導者たちの胸に、大地を歩き通した人びとの「祈り」のカケラもなかったろう。
洞爺もまた、アイヌ・モシリであった「昨日」を、思い起こす者はなかったはずだ。
☆
デニス・バンクスさんらがコンヤース下院議員(ミシガン州選出)に嘆願書を渡した、というくだりを読んで、コンヤース議員に仮にもし、「ベンジャミン・フランクリン」の霊が乗り移っていたなら、どんな感想を持っただろう、とフト思った。
そう、アメリカ建国の父の一人、先住民の「イロコイ共和国」の民主主義・平和連邦をモデルに、アメリカのデモクラシーを構想した、あの「ベンジャミン・フランクリン」が今、アメリカ連邦の首都、ワシントンに甦ったなら、どんな思いで先住民たちの「最長行進」を迎えていたか、と――。
250年の時間の流れは、アメリカの自然を破壊し、大地を変え、ブッシュ政権下で遂に、昔、先住民から学んだ「民主主義」の知恵を蹂躙してしまった……。
☆
「昨日」に学び、「明日」のために「今日」祈る……アメリカ先住民たちの「最長行進Ⅱ」は、そのことの大切さを、踏みしめた歩数の確かさでもって、日本のわれわれにも教えているようだ。
http://www.democracynow.org/2008/7/10/longest_walk_2_thirty_years_after