〔コラム 机の上の空〕 凶器か、それとも磁石か
日曜日、休日。
自分を解き放つ日。
朝、短パンで家を出て、ゆっくり駆け出した。川沿いの遊歩道に出て、ジョギングする。
50分ほどで、鶴見川の合流点に到達。こんどは鶴見川の上流へ向け、歩き始める。
いつも辿る左岸の遊歩道ではなく、今日は右岸の道。
左岸はサンクリングロードで整備されているが、右岸の道は未舗装の部分が多い。
右岸を歩いてよかった。水溜りがあったし、途中、子連れの若いお母さんと話もできたから。
午後、家に戻って、ラジオ用の原稿(モーガン・フリーマンのこと)を書き、昼寝をして、7時前、町田に出かけた。
馴染みの店で、泡盛をロックでいただく。甘みと香りがあって旨い。
ほろ酔いで家に戻り、映画「ショーシャンクの空に」のビデオをまた観る。
モーガン・フリーマンに、会いたくて、また観た。
「発見」がひとつ。
何度も見ているのに、これまで気付かなかったことがひとつ。
刑務所を仮釈放されたRED(モーガン・フリーマン)が、罪を再び犯して刑務所に戻ろうか、と迷い、質屋のショーウインドーを覗くシーン。
そこで、決定的に大事なことが、さりげなく提示されていた。
ショーウインドーには、「拳銃」と並んで、「コンパス(磁石)」があったのだ。
拳銃を持てば、「ムショ」の中に戻れる。が、REDは磁石を買って、脱獄した友、アンディーとの約束の地に向かう。
REDは「樫の木の下、黒曜石の下でお前を待っているものがある」というアンディーの言葉を思い出したのだ。
そして、REDが、黒曜石の下を堀リ返すシーン。
石の下から出て来たのは、メキシコで待つというアンディーのメッセージと、50ドル札の束。
REDは、「懸命に生きる」か、「懸命に死ぬか」の2者選択のうち、生きる側を選び、アンディーが待つメキシコ行きのバスに乗る。
この「質屋」から「樫の木」のシーンを繰り返し見たのは他でもない。AKIBAで惨劇を演じた加藤智大容疑者のことが哀れでならないからだ。
福井のミリタリーショップには、ナイフのそばに磁石もあったはず。
どうして君は、磁石ではなくナイフを選んだんだ、どうして磁石を手に出来なかったか、と思ったからだ。
磁石があれば、君も歩いていけただろう。
磁石を手に、磁石を見る余裕が君にあれば、君はAKIBAに向かわないで済んだのではないか?
鶴見川右岸の道は、市ヶ尾で「東名」の高架下をくぐり抜ける。
トンネルのような通路を通り抜けたとき、轟々たる通過音に包まれた。が、遮蔽に遮られ、車の姿は見えない。
加藤容疑者は、前の日曜日の朝、この高架の上を、トラックで通過して行った……。
「ナビ」でAKIBAに。
お前はどうして、ナイフを買ってしまったんだ? どうして磁石を買わなかったんだ?
磁石さえ買えば、どこからでも、「自分の一歩」を歩み出せたろうに……。
加藤智大容疑者よ、こうなった以上、今、君がしなくてはならないことは、なぜ惨劇を起してしまったか、身を切る思いで原因を探り出すことだ。
あの永山則夫氏も、必死になって書いたではないか。
加藤智大氏よ、こんどは君が君の「無知の涙」を、君の「木橋」を、書く番である。
なぜ、犯行に至ったか、君はコトの真実を書き残さなければならない。
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Posted by 大沼安史 at 11:42 午後 3.コラム机の上の空 | Permalink