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2008-02-10

〔イラクから〕 *パトリック・コバーン記者 ファルージャ入り *米軍 スンニ派ゲリラを懐柔 *イラクでに阿片栽培、広がる *マハディ軍の「休戦」、今(2)月末に期限切れに サドル師の出方に注目

〔ファルージャ再訪〕
 英紙インディペンデントのイラク特派員、パトリック・コバーン記者が先ごろ、イラク最大の激戦地、ファルージャに入り、現地の模様を報じた。

 2004年11月、米海兵隊の第2次侵攻作戦によって瓦礫の山と化したファルージャは、その後、封鎖が続いており、この3年間というもの、内部の実態はほとんど知られていなかった。

 コバーン記者のルポの中身を紹介しよう。

 * ファルージャはかつて60万が住んでいたスンニ派の都市。今、そこで何人が暮らしているか、当局者さえつかんでなさそうだ、という。

 * コバーン記者が、かつて2人の米人傭兵が殺害され、吊り下げられた、ユーフラテスに架かる橋に出かけると、老人が一人、近づいて来て、「われわれには電気がない、水がない」と叫んだ。
 ファルージャではなお、電気は1日1時間しか使えないという。

 * コバーン記者は市街地にあるケハブ・レストラン、「ハジ・フセイン」を再訪した。新しい白い建物になっていた。この店にコバーン記者はバグダッドから食事に出かけいた。身の安全のため、誰もいない2階で食事をするようになったあと、不安が現実化し、店は米軍の爆撃で破壊されてしまった。その店が再建されていたのだ。〔コバーン記者の著書、『イラク占領』(緑風出版)に出てくる店だ〕

 * そうした数少ない新しい建物のひとつが、「ファルージャ・ビジネス開発センター」だった。米兵らが警備に当たっていた。「これまで現れたアメリカ人の投資家は1人だけ」だそうだ。

 * コバーン記者は、ファルージャ総合病院を訪ねた。何が足りないか聞くと、イラク人医師はこう答えた。「薬、燃料、電気、発電機、浄水装置、酸素、医療器具」。病院に必要な何もかもが不足しているのだ。

 * 病院へ同行した現地警察が「状況は改善されている」と言うと、居合わせた黒衣のイラク人女性たちが、自分たちの子どもたちは治療されていない、と叫んだ。「ここ(この病院では)毎日、20人の子どもが死んでいる。この病室だけで7人が死んいる」

 * 医師は言った。「アメリカ人はわれわれに破壊だけをくれた」

 ⇒ http://www.independent.co.uk/news/world/middle-east/return-to-fallujah-774846.html

〔スンニ派武装勢力を懐柔〕
 ファルージャには半年ほど前まで、「イラク・アルカイダ」の勢力が浸透していた。それを放逐したのは、「目覚め運動」といわれる、米軍から資金供与を受けたスンニ派の武装組織だ。

 ファルージャ〔米軍は郊外に駐屯地を置いている〕を勢力下に置いているのは、アブ・マルーフという男で、13000人の戦士を率いているという。

 マルーフは元々、サダム・フセインの特殊部隊に属し、関係者によれば、サダム追放後、「1920年革命旅団」というスンニ派武装勢力に参加していた。

 「イラク・アルカイダ」の勢力拡大に危機感を燃やしたマルーフが、米軍の懐柔に応じて、「目覚め運動」を開始したのは、2005年4月14日のことだそうだ。

 コバーン記者の取材では、マルーフのグループの一般兵士は月給350ドル、将官クラスだと1200ドルを米軍から支給されている。(無給の者もいるようだ)

 ファルージャの警察本部長(ファイサル大佐)は、このマルーフの実兄だ。

 マルーフはシーア派が牛耳るイラク政府に敵愾心を抱いている。「世界最悪の政府だ」と。
 彼はまた、バグダッドのスンニ派による支配を奪回したいとも思っている。

 イラク政府にとって、マルーフら「目覚め運動」のスンニ派ゲリラは脅威である。もし、イラク政府が彼らを冷遇すれば、武装抵抗が再燃することは必至だ。

 マルーフ自身、「ここまま3ヵ月、いまのような状態が続けば戦闘再開だ」と言っている。

 「目覚め運動」が「イラク・アルカイダ」と手を握ることも考えられないことではない。米軍に反旗を翻すことも大いにあり得る。

 ⇒ http://www.independent.co.uk/news/world/middle-east/if-there-is-no-change-in-three-months-there-will-be-war-again-774847.html

〔阿片栽培拡大〕
 コバーン記者によれば、イラク国内で芥子(阿片)の栽培が急速に拡大しているという。

 イラクはこれまで、アフガンの阿片の中継地で、阿片は南部の拠点・港湾都市、バスラから湾岸地域に流れていたが、このバスラを拠点とするギャングたちが金をばら撒き、イラクの農民を阿片栽培に駆り立てているそうだ。

 かつてオレンジやザクロの産地だったバグダッドの北東、ディヤラ州でも芥子を育てる農家が増えているそうだ。

 アフガン、そしてイラク……「テロとの戦い」はなぜ、「阿片栽培の拡大」につながるのか? 

 ⇒ http://www.independent.co.uk/news/world/middle-east/opium-fields-spread-across-iraq-as-farmers-try-to-make-ends-meet-770651.html

〔マハディ軍の休戦期限、迫る〕
 コバーン記者によれば、昨年8月29日以来、サドル師率いる「マハディ軍」が続けてきた「半年間の休戦」期限が今月末に近づいており、その動向が注目される。

 同記者によれば、サドル師のシーア派組織は、「イラク唯一の大衆運動」で、貧民層に依拠している。西側援助機関の最近の調査によると、イラク人の43%が「絶対的は貧困」にあえいでおり、そうした貧民層に救援の手を伸べているイラク人組織はサドル師のグループだけだ。

 サドル師は現在、バグダッドの半分、シーア派居住区の8割を支配しており、これが「休戦」期限切れのあと、武装闘争を再開させれば、イラク情勢はさらなる混乱に向かうのは必至だ。

 イラクは一時に比べ、米軍によるスンニ派武装組織の懐柔などで相対的に安定している(ように見える)が、国内の窮乏化はさらに進んでおり、1日あたり700人、国外脱出組の帰還はあるものの、逆に1日1200人のペースで国外脱出が続いているそうだ。

  ⇒ http://www.independent.co.uk/news/world/middle-east/shia-call-on-mehdi-army-to-take-up-arms-again-in-iraq-779160.html

 〔大沼・注〕 危うい均衡の足元で、マグマが噴出の機会をうかがっている……これがいまのイラクの姿だろう。スンニ派武装勢力の敵対勢力としての再登場、シーア派「マハディ軍」の決起……アメリカの「イラク占領」にさらなる危機が訪れようとしている。

Posted by 大沼安史 at 04:23 午後 |

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