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2008-01-15

〔イラクから〕 ロンリー・ソルジャー、マシュー・セピ(20歳) イラク帰りのナバホ族米兵が夜のヴェガスでギャングを撃ち殺した訳

 ニューヨーク・タイムズ紙で、イラク・アフガン帰りの兵士たちの殺人事件に焦点を合わせた特集記事の連載が始まった。

 タイトルは「戦争に引き裂かれて(War Torn)」。その名の通り、戦争で心を引き裂かれた復員兵(ベテラン)たちの苦悩の絶望に迫ったシリーズだ。

 第1回の掲載は、1月13日付。同紙スタッフの調査報道による、力のこもった長文のレポートだ。

 それによると、イラク、アフガンの戦場から生還した米兵によって、この6年間に、少なくとも121件の殺人事件が引き起されているという。

 その中に、イラクのファルージャで、片足を吹き飛ばされ、脳に衝撃を受けながらも生還した、20歳の米兵の話が出ている。テキサスで治療を受けていた復員兵は、何を血迷ったか、2歳になる愛娘を壁にたたきつけ、殺してしまったそうだ。

 PTSD……。戦場での心的外傷が、復員兵たちの心を切り裂き、彼らを殺人者に仕立て上げている。

 シリーズ一回目の記事には、そんな心に傷持つベテランが何人か登場するが、そのうちのひとりが、ナバホ族インディアンの米兵、マシュー・セピ(20歳)である。

 2005年の夏の夜のことだった。
 歓楽の街、ラス・ヴェガス郊外、「裸の街(ネイキド・シティー)」と呼ばれる一画に、コンビニがあった。この地区は夜は危険きわまりない死の街に一変することから、地元警察の殺人課の刑事たちから「ファルージャ」と呼ばれている。

 アルコールを飲まないと眠れない彼は、自衛のためトレンチコートの下にライフルをしのばせ、ビールを買いに出かけた。未成年なので、店では買えないことから、見知らぬ男に売ってもらい、帰ろうとした。

 そのときのことだった。暗がりから、2人組のギャングが現れた。ピストルを持っていた。突然の発射音と閃光。われを忘れて撃ち返していた。ギャング1人が死亡、もう一人は負傷して路上に倒れた。

 ナバホ族のマシュー・セピは、アリゾナ州に生まれ、16歳で陸軍に入った。イラク戦争が始まった2003年春、セピはバグダッドの北部で掃討作戦に従事、「撃って、撃って、撃ちまくった」。

 1年間、イラクで戦闘を続けたあと帰国、除隊してラス・ヴェガスに流れた。アルコールに依存しながら、それでも地元のジュース用プラスティク・ボトル製造工場で働いた。孤独な生活の中で、戦場のことを思い出すようになった。

 「裸の街」での事件で逮捕されたマシュー・セピに、公的弁護人がつき、収監されたセピから話を聞いた。
 イラクでの経験を話しているうちに、セピの目に涙があふれ、突然、「間違った家だった、間違った家だった」と叫び出した。

 2003年12月のことだった。門を爆破し、掃討作戦を続けるマシュー・セピらの前に、イラク人の男が中庭の車の中から降りて出て来た。その男を撃った。撃ち殺した。
 男の家を捜索したが、何も出て来なかった。
 間違った家だった。間違って、罪もないイラク人を撃ち殺していた。
 炎、地面に倒れる男……そのイメージが、マシュー・セピを苦しめ続けていた――。

 もうひとり、記事の中で紹介されている事例を見てみよう。ネブラスカの田舎町出身もベテラン、セス・ストラスバーグ(29歳)のケースである。

 米軍の兵士(軍曹)としてイラクの戦場に送られ、除隊後、戦争請負企業の兵士に応募して、いったんイラクに戻ったあと、無事に帰郷した経歴の持ち主だ。

 ウォッカ・カクテルで泥酔したセス・ストラスバーグが若者と喧嘩し、銃を手に相手ともみあっているいるうち、銃が暴発して若者を殺してしまったのは、2006年の元旦のことだった。
 現場から車で逃走した彼は、防弾チョッキを着て森の中の雪原に寝転んでいるところを、警察のヘリなどに発見されて逮捕された。

 彼のトラウマは、2004年、イラクのモスル西郊で生まれた。
 夜、小麦の袋を引き摺って歩くイラク人の男を見つけた。路肩爆弾を仕掛けているかも知れなかった。
 無線で指示を仰いだ。「好きに判断していい」。撃ち殺した。
 袋を調べると、中には爆薬どころか、石ころが入っているだけだった。部隊に報告すると、こんな応答が返って来た。「グッド・シュート(ナイスな射撃だね)。合法的だ」

 今回のニューヨーク・タイムズの調査は、地方紙などで報道されたものを拾い上げ、調べ直したもので、報道されていない悲劇も多数あると見られることから、この「121件」という数字は、かなり控えめなものだという。

 過去6年間に、米兵がかかわった殺人事件は349件で、その前の6年間(184件)よりも89%も増えており、しかものその3分の2が、イラク、アフガンで戦った米兵がらみの事件(米国外を含む)だそうだ。

 戦争が兵士を狂わせている……異国の生活の場を戦場とし、民間人と見分けのつかないゲリラを相手とするイラク、アフガンでの戦闘が、どれほど兵士の心にトラウマを残すものなのか、この記事を読んでよくわかった。

 日本の政治家よ、政府高官よ、識者たちよ、「テロとの戦いだ」とか「アフガンに自衛隊を送る」などと軽々しく言うな!
 二度と言うな! 絶対に言うな!
 現にイラクのサマワに駐屯した自衛隊員の間から、3人もの自殺者が出ているというではないか。
 
 日本の「9条」を守るためにも、ニューヨーク・タイムズの今後の調査報道に期待する。

⇒ http://www.nytimes.com/2008/01/13/us/13vets.html?scp=1&sq=The+study+of+killings+by+military+veterans+

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Posted by 大沼安史 at 12:19 午前 |

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