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2007-12-04

〔コラム 机の上の空〕 笑いの圧殺、または、ビルマ的「オーウェル世界」

 英国の女性ジャーナリスト、エマ・ラーキンさんが書いた『ビルマでジョージ・オーウェルを探す』(ペンギン、2004年刊行)に、いつも「高笑い」で答える、ビルマ人観光ガイドのことが出ている。

 「政治」にちょっとでも触れた質問をすると、ガイドの彼は決まって「高笑いをし、そのあと黙りこんでしまう」のだそうだ。まるで、質問を耳にしなかった、かのように……。

 何年か前、彼女がビルマ入りして取材していたときのことである。だから、「今」のことではない。

 質問に対する「高笑い」、そして「沈黙」は、ガイドの彼の暗黙の同意であり、事実の確認だったろう。

 僧たちの平和デモに血の弾圧が行われた今はもう、「高笑い」「沈黙」で「答える」こともできなくなっているのではないか。

              ◇

 ラーキンさんの本に、「歯医者のジョーク」というのが紹介されている。ビルマ人の「知人」の何人かとテーブルを囲んだ雑談していたときのこと、その一人が「ことさら眉をひそめ、ニヤリ笑いの兆し」を見せた……。

 とっておきの「冗談」を披露しようというのである。

 「あるとき、ひとりのビルマ人が近隣の国まで旅し、歯医者を訪ねました。歯医者は遠くから、わざわざ訪ねて来たのに驚き、こう言いました。『お国には歯医者はいないのですか?』。ビルマ人は答えました。『いますよ、いますとも。歯医者はいっぱいいます……でも問題がひとつあります。われわれは、ビルマじゃ口を開けられないんですよ』」

 言論の自由のないビルマ。軍政に対する「風刺」「あてつけ」さえ許されないビルマ。

              ◇

 僧たちが平和デモを続けていた9月25日、マンダレーの街で、コメディアンのウ・パル・パル・レイさん(60歳)が逮捕された。

 パル・パル・レイさんは「髭の兄弟」一座の座長。

 一座はビルマの伝統演芸「アーニャイ・プウェイ」の流れを受け継ぐ寄席芸人集団で、人形劇や笑劇を出し物に、かつては国内各地を巡業していたが、軍政当局にビルマ人の前での上演を禁じられ、いまはマンダレーで外国人観光客相手の「小屋」を開いている。

 そのレイさんのとっておきの「政治ジョーク」も、その「歯医者のジョーク」であることを、ニューヨーク・タイムズ紙のマンダレー発の記事(10月29日付け)を読んでわかった。

 レイさんのは、レイさん自身がインドまで出かけて行って歯医者にかかるバージョン。
 「一人称」の主体的・政治的なジョークである。

              ◇

 1996年に続く2回目の逮捕だった。

 その年の1月、「髭の兄弟」一座は、ヤンゴンのスーチー女史宅で巡業公演を行う。外国の大使らも観に来たその席で、レイさんは軍政をあてこすり、公演後、逮捕された。
 7年の刑を言い渡されたレイさんは、国際的な救援活動が強まる中、2001年7月に釈放された。

 そのレイさんの十八番に、「ツナミ(津波)のジョーク」というのがある。

 ミャンマー(ビルマ)の将軍が亡くなって、大きな魚に生まれ変わった。そこに、大津波が押し寄せて来た。大魚は海面に浮上し、津波に向かって叫んだ。「津波よ、止まれ。お前さんのすること、もうこの俺さまがしていることだから、押し寄せたって無駄だよ」と。

              ◇             

 軍政はまさにビルマの地上のすべてを破壊し尽くし、民衆の自由を流し去った。その実態はラーキンさんの著書に詳しいが、一言で言えば、ジョージ・オーウェルが描いた『1984年』のあの世界である。

 人びとが互いに監視しあい、密告しあい、権力者の意のままに操作され、無慈悲に抹殺されてゆく、あのオーウェル的世界の現代版、それがいまのビルマ(ミャンマー)である。

 オーウェルは大英帝国の警察官として5年間、ビルマに駐在し、その後、作家に転身(最初の著作は『ビルマの日々』)し、やがて『1984年』を書くことになるが、その彼がビルマの現状を目にしたら、どんな思いを抱くことだろう。

              ◇

 レイさんの2度目の逮捕は、「アムネスティー・インターナショナル」や、「英国ペンクラブ」などの手で全世界に報じられ、救援活動が広がった。

 幸いなことに今回は、ニューヨーク・タイムズが現地取材で事実経過を確認し、紙面で報じるや否や、翌30日になってレイさんは釈放された。軍政当局としては、「国際世論」が高まる前に釈放してしまえ、と判断しただけのことだろう。

              ◇

 ラーキンさんによれば、ビルマで教師など公職に就くには、「33問の口頭試問」にパスしなければならないという。

 あなたはいまの政府を支持しますか?  
 この国にもっともふさわしい政治体制は何ですか?……

 それらの問いに「支持しません」「デモクラシーです」などと答えようものなら、結果は目に見えている。

 「デモクラシー」と正直に答え、教職に就くチャンスを自ら閉じたある男性は、こうした「踏み絵」について、ビルマ国民の「思考力」を奪う狙いが込められている、とラーキンさんに語ったそうだ。

              ◇

 奪われる思考力、言論の自由、笑い……。これはまさに、「ウィンストン・スミス」が直面した「オセアニア」における「1984年」状況だが、ビルマの「2007年」状況では、権力者がまだ、「地下」または「内心」を完全に支配しきれないでいる。

 それのひとつの現れが9月の僧の決起であり、その後も続く、レジスタンスの動きであるのではないか。

 1988年の学生・市民の民主化デモの際、学生たちは縁起をかついで「4つの8」を期して行動を起こした。(8年8月8日午前8時)

 ことし9月の民主化デモでは、僧たちが聖なる数の9にこだわり、9日から9日間、準備をしたあと、9月18日(18は9の倍数)にデモを始めた。

 僧までも殺した軍政に対する、ビルマ民衆の最終的な決起がいつ起こるか?

 「旅回りの役者」や「あどけない子ども」がするという「ダバウング」という「聖なる予言」が出たという知らせは、まだビルマから伝わって来ない……。 
  


http://web.amnesty.org/pages/mmr-051007-feature-eng

http://afp.google.com/article/ALeqM5jbLSnmWgGGvSId2MBMIiM7Td3mPA

http://www.iht.com/articles/2002/02/07/edpringle_ed3_.php

http://www.scoop.co.nz/stories/print.html?path=WO0711/S00520.htm

Posted by 大沼安史 at 09:45 午前 3.コラム机の上の空 |

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