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2007-10-15

〔いんさいど世界〕 ゴア氏 初代「環境」大統領の可能性 ノーベル平和賞を受賞 「環境保護」 全人類的政策課題に

 アメリカの前の副大統領、アル・ゴア氏(59歳)が、2007年のノーベル平和賞の輝きました。
 国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」との共同受賞。

 ゴア氏はすでに、地球の環境危機の実態に迫った長編ドキュメンタリー映画、「不都合な真実」で、映画界の最高栄誉、アカデミー賞(07年)を受賞しており、今回の「平和賞」で、前人未到(?)の「2冠」を達成しました。

 「3冠」目は、次の「アメリカ大統領」選で、との声が、アメリカ国内ではもちろん、全世界の環境保護派から噴出しており、世界を救う救世主として一躍、注目されています。

 アメリカの指導者が、ブッシュ現大統領のような、環境問題にほとんど関心のない政治家から、ゴア氏のような人物に代われば、地球のエコは救われる、との期待感が高まっているわけです。

 それにしても、ゴア氏を「平和賞」に選んだ、ノルウェーのノーベル賞委員会、さすがというか、なかなかなものですね。(沖縄密約」の存在に気付かず、日本の某首相に「平和賞」をプレゼントしたときには、その軽率さにあきれ果てたものですが、それ以外は、けっこう、いい目をしています)

 昨年(2006年)、ユヌス氏(貧者の銀行、「グラミン銀行」を創設したバングラデシュの経済学者)に対して授賞を決めたときは、ぼくなども思わず快哉を叫んだものです。

 で、ゴア氏に白羽の矢を立てた、ノルウェーのノーベル賞委員会って、いったいどんな組織かというと、ノルウェー国会が選んだ5人の選考委員で構成されているそうです。

 その委員たちが、北欧のこの国の政治を貫く、「リベラルな国際主義」(ニューヨーク・タイムズ紙)の理念でもって、授賞者を選んでいる。
 
 富豪ノーベルはなぜか「平和賞」だけは、自分が生まれたスウェーデンに任せず、ノルウェーに選考を託したのですね。

  さて、今回のゴア氏に対する「平和賞」の授与、実はこれ、絶妙のタイミングでの授賞となりました。

 地球環境の危機がギリギリのところへ来ているということもありますが、それ以上に、アメリカの大統領選です。ブッシュ大統領に続く、次のアメリカの指導者を決める大統領選が「あと1年」に迫っている。
 そういう段階での、こんどのノーベル賞授賞。

 オスロの委員たち、タイミングを見計らったな、やってくれるじゃないか、と勘ぐりたくもなるような、狙いすました授与決定といえるでしょう。

 ゴア氏はまだ、大統領選に出るなどとは一言も言っていませんが、8年前のジョージ・ブッシュとの戦で「勝利」を収めたと信じている支持者の間から、「再選」(!)を望む声が高まっていて、今回のノーベル賞の受賞は、その勢いに拍車をかける、強烈な追い風になっています。

 いま、「再選」と言いましたが、ゴア氏って実は、ほんとうはブッシュの代わりに大統領になっていた人なんですね。
 (マイケル・ムーア監督のドキュメンタリー映画、「華氏911」にも出てきますが、フロリダ州での大掛かりな「選挙不正」がなければ、ゴア氏はブッシュに勝っていた! 全米の大マスコミはそろって「ゴア当確」を打ち、本人も勝利の喜びをいったんは噛み締めたけれど、ブッシュの弟が知事をつとめるフロリダで「逆転」され敗退したことは、アメリカの政治史上に残るエピソードです)

 そんな経緯があるものですから、アメリカの有権者の間には「ゴア再起」を望む声が強い。そういう熱烈な支持者によって、アメリカではいま、「ドラフト・ゴア運動」(ドラフトとはプロ野球のドラフト制度のドラフト=徴兵、です)という広がり出し、ゴア氏を大統領に引っ張り出そうという草の根のキャンペーンに発展しているのですが、その勢いに強烈な弾みがついている。

 そんな支持者によって、ニューヨーク・タイムズ紙に「ゴア氏よ、出よ」の全面広告も出ました。
 ミシガン州やニューヨーク州では、ゴア氏を大統領に、という請願運動が始まっているそうです。
 いまはまだ、受賞が決まっただけですが、オスロで正式な授与式が行われると、運動にさらに弾みがつくこと、請け合いです。

 現在、民主党陣営の大統領候補で先頭を切っているは、ヒラリーさんですが、イラク戦争の開戦に賛成した過去があり、人気はいまいち高まっていません。

 アメリカではいま、「イラク戦争」への厭戦気分が広がっており、それが「ブッシュでなく、ゴア氏が大統領になっていたら、イラク戦争もなかった。ブッシュを選んで失敗だった」という反省を呼んで、ゴア氏再選待望論につながっているわけです。

 ゴア氏とブッシュ大統領との対比では、こういうこともあります。
 ブッシュ大統領は石油資本の代弁者だから、地球環境対策に乗り気ではなかった。あのとき、ゴア氏を選んでおけば、異常気象に対して何らかの歯止めをかけることができていたかも知れない。そうだ、いまからでも遅くない、ブッシュの亜流候補ではなく、ゴア氏を大統領にしよう――という環境保護派の願いも「ゴア出馬」への夢をかき立てる一大要素になっているわけです。

 こうした「ゴア待望論」に応え、ゴア氏自身が最終的にどんな決断を下すかが、今後の注目点なわけですが、今回のノーベル平和賞授賞は、アメリカの大統領選を前に、オスロの委員会がその「リベラルな国際主義」の理念の下、世界的な「お墨付き」を与えたところに、まさに歴史的な意味があると言えます。

 ゴア氏がかりに大統領選への「出馬」を決断するなら、彼の「決断」の背後には、米国民の期待とともに、ノルウェーのノーベル委員会の思いがあり、それを支持する全世界の人びとの願いがあることになる。

 つまり、ゴア氏が大統領選に出て、実際、大統領に選ばれようものなら、それは米国民だけでなく、ノーベル賞受賞を祝福する世界の人びとによって選出された、という意味を持つことになる。

 すなわち、世界の人びとに支持され、米国民によって選ばれた、初のアメリカ大統領が誕生する!

 これが実現すれば、実に画期的なことです。

 今回のゴア氏のノーベル平和賞受賞と、大統領選担ぎ出しの動きは、環境保護が国内問題を超えた、全地球的な政策課題であり、グローバルな政治における最大の焦点になっていることを示すものといえるでしょう。

 グローバルな超大国化したアメリカには、世界に対して責任を負う義務がある。そんなアメリカの指導者を決める大統領選に対し、世界の人びとは何らかの影響力を行使する権利を持つ。

 ゴア氏出馬によって、来年の米大統領選は、そんな新しい構図のなかで行われる、世界注目の選挙戦になるかも知れません。

  

Posted by 大沼安史 at 03:17 午後 1.いんさいど世界 |

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