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2007-09-12

〔コラム 机の上の空〕 「戦後レジーム」の黄昏 安部首相の辞任

 「9・12」の夕方、散歩に出て西空を飽かず眺めた。斜陽・日本の、見事な日没の絵巻だった。水平に、いくつもの薄雲の層が重なり合い、しだいに深紅に染まりながら、黒い闇の中に溶けて行った。

 「美しい国」の日の入り。
 散歩の帰り、居酒屋に寄ると、テレビの解説者たちが「安部首相、突然の辞任」について、声高に話していた。

 安部氏の「無責任」を非難する人がいた。首相の器ではなかったと指摘する人もいた。
 個人の気質、資質を問題にする意見が多かった。

 美しい夕焼けを見てしまったわたしは、安部首相の辞意表明で、「歴史が暮れた」と思った。安部氏の言葉で言えば「戦後レジーム」が、いよいよ黄昏を迎えたのだ。

 安部氏という戦後生まれの史上最年少の首相であっても、つるべ落としの勢いには勝てなかった。地球の向こうの闇の中に、一気に落下していく「日の丸」を、止めることができなかった。

 安部氏は「日本帝国」を日の出の勢いで「大東亜」に押し出した岸信介の孫だった。敗戦を生き延びた「祖父の国」は、三代目で行き詰った。

 安部氏がどんなに有能でも、初めから無理なことだった。
 日没の時は、変えることはできないのだ。

 これは安部氏でなくとも、「日の丸」のコースを定め、そこに乗りかかっていた戦後日本の権力をほしいままにしてきた支配層の人間なら誰でも、そうである。

 彼らこそ、落日そのものであったのだから……。

 「年金」問題で地獄の釜の蓋が開いた。「官の支配」の真実が覗いた。
 「国民」の暮らしなど、ほんとうはどうでもいい、かつて国民を戦争に動員した「1940年体制」のゾンビが尻尾を見せた。
 「国民」は、もはやこの国に平安な余生がないことを知った。

 「財政」も破綻した。「官」に食いつぶされた国家財政は、もはや死の宣告を待つばかり。借金地獄のさなかにあって、「政策」どころのさわぎでなくなっていた。

 財源がないから、まともな「政治」ができなくなっていた。
 生活保護を取り上げ、餓死に追いやる自治体が出た。介護地獄は介護する老人を親殺しに導いた。

 「教育」も「再生」しなかった。「ゆとり」退治に狂奔し、「学テ」ではカンニングする教委まで現れた。

 「経済」も行き詰った。「いざなぎ超え」のはずの景気は上げ底景気で、GNPはついに失速、またも縮み始めた。

 要は、この国から、すでに「内政」は失われていたのである。

 「外交」ではどうか? 

 「国連常任理事国入り」の「花火大会」が、撃ちてし止まんで終わったあとは、「対米従属」の海を漂流するだけ。
 
 「世界」が見放したブッシュ政権のサポーターになることが「国際貢献」だと思い込み、「拉致」問題では頼みのブッシュにも突き放されてしまった。

 そしてあの「慰安婦」問題での体たらく。

 「対外援助」も先細りで、国際社会における存在感はますます影の薄いものになって来た。

 「世界経済」に対しても、爆発寸前の巨大赤色(?)矮星のように、「格安マネー(円)」を「大放出」し、世界中にバブルをつくって、民衆の恨みを買った。 

 一言で言えば、安部首相の「美しい国」は、国の内外において空洞化が救いがたいほど進んでいたのである。

 それが破局の一点に向かって、一気に進み出したのが、今の日本の姿だろう。

 その意味で、安部首相の今回の辞任表明は、戦後の歴史の「臨界点」だったかも知れない。体制崩壊の負の連鎖反応が一挙に拡大し、「美しい国」の日暮れを赤く染め上げたのだ。  

 わたしは、居酒屋でひとり飲みながら、「暮れてよかった」と思った。

 軽い酔いの中で、自ら潔く、「美しい国」の幕を引いた安部氏を称賛したい気にもなった。 
 
  
 歴史が夜つくられるのであれば、「9・12」の日本の夜は、歴史の初夜ということになる。

 暮れた日はまた昇る……いや昇らなければならない。

 しかし、昇るのは、古い日の丸か、新しい日の丸か……

 居酒屋を出て見上げた横浜の空はどんよりとして重く、半そでシャツの身に夜風がすこし肌寒かった。

 

Posted by 大沼安史 at 09:25 午後 3.コラム机の上の空 |

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結局このお坊ちゃんは政権を投げ出しちゃったね。最期まで支離滅裂で最低な総理大臣だったなぁ、安倍晋三って。┐('~`;)┌「国際的な公約となった以上、私には大きな責任がある。職を賭して取り組む」と、テロ対策特別措置法に基づいた海上自衛隊のイ....... 続きを読む

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