〔コラム 机の上の空〕 ワシントンのシュールリアリズム 米兵7人 バグダッドからニューヨーク・タイムズに寄稿
イラクから眺めると、ワシントンでの政策議論は超現実(シュールリアル)なものにしか見えない――バグダッドに駐留する米陸軍の下級兵士たちが、こんな内容の告発文を連名でニューヨーク・タイムズ紙に寄稿した。〔8月19日付け〕
第82空挺師団のウェズリー・スミス軍曹やヤンス・グレイ曹長ら7人が、全員実名で告発した。
イラク戦争が抑え込み可能であるかのようなニュース報道に抗議し、戦地の実情を兵士の目で報告したものだ。
「数日前の夜」、こんなことがあったという。
彼らは米兵1人が死亡し、2人が負傷する場面に遭遇した。(安全なはずの)イラク政府軍検問所と警察の検問所の間で、車両の装甲を貫通する爆弾が炸裂したそうだ。
周辺のイラク住民の話ではイラクの警察官と政府軍の将校が爆弾の敷設を手引きしていたという。住民たちが事前に通報しなかったのは、知らせれば家族皆殺しに遭うからだ……。
警察と政府軍といえば、米軍の味方のはずである。結局のところわれわれは、そんな疑わしい「盟友」と、断固たる敵(武装抵抗勢力)の中で作戦行動を余儀なくされている――7人はイラクの実情を指摘する。
敵と味方の区別もなく、味方が敵であるイラクの戦場。
味方(政府軍・警察)は米軍の盟友であることを前提とするワシントンの議論が、現実とは無縁のシュールなものにならざるを得ないのは当然のことである。
7人はバグダッドの米軍が置かれた苦境を説明する一方、「日常生活を営むことが死を恐れぬ行為となっている」一般のイラク人の窮状にも触れている。
そして彼らは結論として次のように語る。
われわれ米軍の駐留は、イラクの人びとは独裁者から解放されたかも知れないが、イラク人の自尊心をも奪っていることは確かだ、と。
イラク駐留米軍には、このように語る兵士たちがいる(そして、その寄稿を掲載する新聞がある)!
これは実に勇気付けられる話である。
不条理がまかりとおる戦場にあって正気を守り通し、真実を訴えかける兵士たちがいるのだ。
新聞に寄稿するガッツのある連中がいるのだ。
米軍兵士よ、立ち上がれ!
立ち上がって、ワシントンの狂気に抵抗せよ!
戦闘を中止して、撤退を開始せよ!
7人の兵士は自分たちを「コミットする(責任を持って対処する)兵士」であると書いていた。
米軍当局は彼らを軍規違反に問うてはならない。
彼らこそ、正義を守る「荒野の7人(Magnificient 7)」である。
Posted by 大沼安史 at 01:29 午後 3.コラム机の上の空 | Permalink