〔いんさいど世界〕 「大雨男」が進化して攻撃開始? 中国人民解放軍ハッカー ドイツ政府機関コンピューターに侵入 スパイウエアを仕込ンで データ奪取を企てる
中国の人民解放軍に所属するとみられるハッカー・グループがドイツの政府機関コンピューターにスパイ・ウエアを仕込み、データの奪取を企てていたことが、ドイツ誌「シュピーゲル」の報道で明るみに出ました。
ベルリンの中国大使館は当初、「でっちあげ」だと事実を否定していましたが、温家宝首相はこのほど北京を訪問したメルケル首相に対し、「根絶」を約束、中国軍が「サイバー攻撃」を仕掛けたことが確認されました。
中国軍ハッカーが行っていたのは、ネットを通じた「経済スパイ」攻撃で、水面下で進む「サイバー戦争」の実態をのぞかせた形です。
ドイツの権威ある週刊誌、「シュピーゲル」がオンラインの電子版でこの問題をスクープ報道したのは、メルケル首相の訪中直前の8月25日のことでした。
「中国の〈トロイの木馬〉スパイ・ウエアが首相府のパソコンに」という見出しの、すっぱ抜き報道。
ドイツ国内はもちろん、全世界に衝撃波を広げました。
それによりますと、スパイ・ウエアを仕込まれていたのは、ベルリンの首相府ばかりか、ドイツ政府の経済、研究、外務の各省の多数のコンピューター。
これを、連邦憲法擁護庁と連邦情報テクノロジー安全局が確認したということです。
仕込まれた「トロイの木馬」スパイ・ウエアは、コンピューター内のデータをこっそり盗み出すもので、連邦憲法擁護庁などは160ギガ・バイト分の情報流出を阻止したそうです。
しかし、これはあくまで「阻止」に成功した分であり、実際それまで、どれだけの情報が奪取されていたかは不明。
具体的にどんな「情報」が狙われたかについても明らかにされていません。
問題は誰が「トロイの木馬」を仕込んだか、ですが、憲法擁護庁などの調べて、中国の人民解放軍に属するハッカーによる仕業と分かりました。
「シュピーゲル」誌の続報(電子版、8月26日付け)によれば、ハッカー攻撃の発信源は、中国の広東、蘭州、北京の3ヵ所だそうです。
このうち、蘭州は中国の核・宇宙開発の拠点で、この最先端のハイテク研究拠点からハッカー攻撃が行われたことは記憶にとどめてよいことかも知れません。
では、中国軍の「赤いハッカー」たちが何をねらったかというと、ドイツ政府の「経済情報」ではないか、と見られています。
でも、実は中国の赤いハッカーたちには米軍の軍事研究施設にサーバー攻撃を加えたとみられる「前科」があり、もしかしたら経済情報ばかりか軍事情報などを奪取しようとしていたのかも知れません(「シュピーゲル」も、ここまでは踏み込んでいません)。
中国のハッカーによる米軍研究施設攻撃は、いまから2年前、2005年11月に明るみに出ました。
当時の「シュピーゲル」誌の報道によると、アリゾナ州のフォート・フアチュカにある米陸軍情報システム・エンジニアリング司令部など数施設に対し、およそ20の中国ハッカー・グループによって、サイバー攻撃が仕掛けられました。
米軍はこのハッカー・グループを「タイタン・レイン(大雨男)」と名づけ、監視活動を強めていますが、2004年の1年間に1300件の「低リスク」の「侵入」に成功しただけで撃退された経緯があります。
今回、ドイツで発覚したコンピューター侵入事件の犯行グループは、もしかしたらこの「大雨男」の仕業かもしれません。2年前よりもさらに進化を遂げ、攻撃を続行しているのでしょうか。
「シュピーゲル」誌の報道によれば、中国ハッカーによる対ドイツ政府機関攻撃をドイツ当局が察知したのは、ことし5月だそうですが、実はドイツの民間企業――とくに電子産業のハイテク企業に対しても、同時にスパイウエアによるデータ奪取攻撃が行われており、これまた見逃せない事態になっているといいます。
同誌によれが、民間企業への中国のハッカー攻撃は、スパイ・ウエア攻撃全体の6割を占めているといいますから、ただ事ではありません。
中国政府は訪日したメルケル首相に対し、温首相が早速「根絶」を約束する潔い態度を見せました。
ベルリンの中国大使館が「事実無根のでっちあげ」と全面否定していただけに、この温首相の率直さは、全世界から驚きをもって迎え入れられています。
メルケル首相は北京から東京に立ち寄り、安部首相と会談しましたが、日本政府やハイテク企業は中国軍ハッカーたちの攻撃に、まったく曝されていないのでしょうか?
なんだか心配です。
日本のお役所のコンピューターは、実は「大雨男」に荒らされまくっていて、機密・特許情報がどんどん流出している……なんてことで、なければよいのですが、「霞ヶ関」の体たらくを見るにつけ、不安でなりません。
Posted by 大沼安史 at 06:41 午後 1.いんさいど世界 | Permalink
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