〔いんさいど世界〕 ヤンゴン発 ミャンマー「サフラン革命」を「市民レポーター」が全世界へネットで報道
軍事独裁国家、ミュンマーが僧侶、市民の決起で揺れています。
日本人カメラマンの長井健司さんも首都ヤンゴンの路上で、治安部隊によって射殺されました。日本政府はいったい何をしているのでしょう。在京のミャンマー大使を呼びつけて、厳重に抗議すべきです。
今回のヤンゴンでの反政府運動は、「サフラン革命」と呼ばれています。
サフラン色……ミャンマーのお坊さんたちの僧衣の色です。黄色というかカレー色というか、あのサフラン色の市民革命。
前回、1988年の市民の反乱のときは、軍部の武力鎮圧で3000人以上が殺されたといいます。今度はどんなことになるのでしょう。心配です。
「1988年」の反乱から20年近く。ミャンマーの軍事独裁という事実は変わりませんが、時代は大きく変わりました。
「軍事鎖国」に近いこの国にも「インターネット革命」の波が押し寄せ、閉ざされた体制に少しだけ罅割れが起きていることです。
ミャンマーのインターネット人口(アドレス所有者)は25000人。ネット普及率は1%に満たない状況ですが、それでも今回の「サフラン革命」では世界中にネットで情報を発信し、国際世論の喚起に大きな役割を果たしました。
ひとつは現地発の「ブログ」です。
ヤンゴンに住む若い女性、「ドーン(英語で「夜明け」の意味)」さんは、ヤフー上のブログにこう書きました。
「女優で歌手のフトゥン・アインドラ・ボが昨夜、逮捕された。コメディアンのザール・ガ・ナールと俳優のクヤウ・スと一緒に。デモに参加したことで捕まった」
「ヤンゴンで最近降った雨は偽ものの雨である。軍が雨爆弾を投下したのだ」
「このブログを書いていることで、わたしはたぶん捕まらないと思う。でも……どうなるかわからない」
同じくヤンゴンの「ミャ」さんは、こうブログに書きました。
「お坊さんがひとり、わたしたちのところへ来てこう言いました。『われわれは恐れていない。犯罪を犯しているわけではないから。祈りを捧げ、デモに参加しているだけだ……』」
こんなブログが他にも5ヵ所ほどあるようです。
ブログには「記事」だけでなく、血まみれのサンダルを写した「写真」も。
アメリカのビデオ・サイト、YouTubeには、デモの現場を撮影した手振れでゆれる生々しい映像がポスティングされました。
CNNテレビには、同放送の市民ジャーナリスト・プロジェクトの「ireport」システムを通じ、65本の記事や映像が集まったといいます。
ビルマ語サイトと放送を持つ英BBCも、現地の市民にネットを通じ、レポートを寄せるよう呼びかけています。
BBC、CNNもさることながら、インドのデリーに本拠を置く、亡命ミャンマー人ジャーナリストの団体、「ミジマ・ニュース」や、ノルウエーのオスロを拠点とした「ビルマ民主の声」、さらにはタイで発行されている雑誌「イラワジ」編集部といったミャンマー人の国外組織も、現地の市民レポーターの協力で、「ヤンゴン発」の情報を発信し続けています。
情報を発信しているのは、ヤンゴンやマンダレーといった都市に住む匿名の個人。最初のころはインタネット・カフェからの発信もありましたが、ミャンマー軍政当局がネットのアクセスを遮断したことで、27日以降、流出する情報量は激減したそうですが、衛星電話を利用した発信、当局のブロックを「迂回」しての発信などで、ミャンマーの市民レポーターの報道はなお健在だそうです。
パリに本部を置くジャーナリスト団体、「国境なきレポーター」によると、ミャンマー軍政は中国政府よりも取り締まりが厳しい、悪名高きインターネット警察を持っていて、「ネット報道管制」を強化していたそうですが、今回の「サフラン革命」では市民レポーターたちが「壁」を突き破って、「真実」を世界に告げました。
「イラワジ」誌の編集人、アング・ザウさんはこう語っているそうです。「彼らが情報を抑圧すれはするほど、情報は外に出て来る」と。
ミャンマー現地で奮闘する「市民レポーター」たちに声援を送りたいと思います。