〔イラクから〕 パトリック・コバーン記者 イラク国内難民キャンプをルポ 殺戮を逃れ流入 悪臭のなかの安全
英国のジャーナリスト、パトリック・コバーン記者(インディペンデント紙特派員)が、イラク国内の難民キャンプに入り、ルポを書いた(電子版、7月30日付け)。
悪臭の立ち込めた、にわかづくりのスラムだそうだ。
地元の当局が、難民に定住されるのを恐れ、トイレを掘ることを禁じているのだという。
97家族、470人が住む、イラク北部、スレイマニアの「カラワル難民キャンプ」。そのほとんどが、スンニ派の人びとだ。バグダッドやヒラ、ディヤラから逃れて来た。
バグダッド市内西部、サーディヤー区を脱出して来た人が多い。7月半ばまでの1ヵ月間に、84人の死体が回収されたところだ。犠牲者の大半は若い男性で、拷問を受け、縛られていた。
サーディヤーから来たひとり、38歳の男性は11ヵ月前からキャンプで暮らしている。
コバーン記者が話を聞いていると、横にいた人が黙って死亡証明書を差し出した。男の息子の死亡証明だった。
男性はカラワルの「市長」だった。難民たちは、国際赤十字社の食糧と水で生きている。「ここは少なくても安全だから」と、「市長」は言った。
電気も水道も煮炊きする油もないスラム。強烈な真夏の光の下、汚物と物の腐った臭いが漂うキャンプ。
コバーン記者のルポを読むと、難民たちの過酷な生活ぶりが感覚的にも伝わって来る。
現地にはスペインの市民団体が入って、移動診療所の運営を後押しする活動を続けているそうだ。
コバーン記者によれば、イラクでは1日平均、2000人が家を捨てて難民化している。7人に1人、400万人が難民となり、半数が国外に流れ、半数がイラク国内にとどまっている。
イラクの難民にとって、ことしの夏はさらに「酷暑」である。
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http://news.independent.co.uk/world/middle_east/article2816666.ece
Posted by 大沼安史 at 06:18 午後 | Permalink