〔いんさいど世界〕 北極資源戦争 ロシアが先手 北極真下の海底に「国旗」 核爆撃機のパトロールを再開
世界のてっぺん、北極を舞台に「資源戦争」が勃発しかけています。北極海の海底に眠る石油・天然ガスをめぐる戦いが始まろうとしている。
先手を打ったのは、ロシアです。
北極の「真下」の海底に「ロシア国旗」を据え付けて領有権を主張したあと、北極圏の空に核搭載の爆撃機を繰り出し、戦略哨戒飛行を再開しました。
これに対して、カナダ、デンマークなど関係各国はロシア領有権の無効を主張、ホットな「冷戦」が続いています。
ロシアのミニ潜水艇が北極直下、水深4000メートルの海底に潜航、海底にチタニウムのカプセルに入った「ロシア国旗」を据え付けたのは、8月2日のことでした。
3人乗りのミニ潜水艦2隻によるチームプレーの快挙。
チームを率いたのは、プーチン大統領のスポークスマンを務めるペズロフ特使で、潜航の模様はテレビで生中継され、ロシア全土に放映されました。
冒険のためではありませんでした。
目的はハッキリしていた。
狙いはただひとつ、北極点の海底にロシア国旗を翻らす(?)ことで、北極地方に対するロシアの領有権を全世界にアピールすることでした。
ロシアは北極海を走る「ロモノゾフ海嶺(海の山脈)」を中心、北極地方の半分の領有権をかねて主張しており、そのことを目に見えたかたちで示す、「潜航ショー」を決行してみせたわけです。
その理由は何か?
実はシロクマの楽園の北極の海って、海底に石油や天然ガス資源の眠る宝庫なんです。
推定埋蔵量、100億トン。
地球に残された最大かつ最後のエネルギー資源です。
それが手付かずのまま、開発される日を待っている。ロシアはこれにいち早く、ツバをつけてみせたわけです。
早速、北極圏の関係諸国から批判と抗議の声が上がりました。
カナダ政府はレゾリュート湾に軍事訓練施設の名目で基地を開設、バフィン島には海軍基地をつくり、軍事力で権益を保全する構え。
グリーンランドを抱えるデンマークも、ロシアの領有権主張の根拠となっている「ロモノゾフ海嶺」が実はグルーンランドから伸びるものと主張し、海底の地形調査に乗り出す考えでいます。
アラスカを持つアメリカも神経を尖らせていますが、国連の海洋法条約を締結しなかたことで、アラスカ沖に対する領有権を主張できず、指を咥えながら苛立ちを隠せないようすです。
ロシアが北極に触手を伸ばした背景には、プーチン大統領の資源戦略があります。資源を武器に、ロシアを超大国として復活させる……そんな戦略をとってプーチンさんは成功し、政治的な基盤を固めて来ました。
ヨーロッパ向けの天然ガスパイプラインをストップするぞと言っては脅しをかけ、外交上の切り札にして来たわけです。
そんな新生超大国・ロシアの復活を賭けたことですから、ロシアは真剣です。
マジ、北極資源をゲットしようとしている。そう見なければならないわけですが、それを裏付けることが最近、起きて、西側関係者に衝撃を与えました。
それが核搭載爆撃機による戦略哨戒飛行の再開です。
核哨戒飛行は「冷戦」の最中、続けられていたもので、文字通り核爆弾を装備した爆撃機が北極の空をパトロール飛行し、有事の場合、直ちに攻撃に入るという危険きわまりないものでした。
それが冷戦の終結で1992年に中止され、これまで続いていたのですが、これをロシアは今月(8月)17日から再会しました。
爆撃機14機が一斉に飛び立ち、哨戒飛行を開始したそうです。
北極はロシアの「北方領土」、国際社会に何として認めさせるんだという、これはもう断固たる意志表示ですよね。
このように、ロシアが北極の海の海底資源確保に動き出した背景には、実は意外なものが潜んでいます。
それは、なんと「地球温暖化」。
地球温暖化によってさしもの北極海の寒さも和らぎ、氷が溶け出すなど、開発しやすい状況が生まれつつある……。
地球温暖化も遂にここまで来たか、という感じがしますね。
開発が進むと、シロクマたちもおちおち冬眠してられないわけで、「おい、いい加減にシロ。クマるじゃないか」な~んて怒っていたりして……。
でも冗談じゃないですよね。
「北極産の石油」まで世界に(日本に)に出回る日には、真夏の暑さはどのくらいになっているのでしょう。
45度、50度……。
考えるだけで背筋が寒くなります。