〔いんさいど世界〕 「鳩の王子さま」 軍用機取引で2000億円リベート疑惑 渦中のサウジのプリンスが全米最高値の豪邸を売却へ
サンテグジュペリの「星の王子さま」が日本でブーム再来です。新訳がどって出て、再び脚光を浴びています。「六年前、ぼくが砂漠であった」星の王子さまの物語。
詩的で澄んだ、心が洗われるようなお話です。
「ぼくはだから、夜、星たちに耳をすます。五億の鈴のように鳴っている」……
ときどき夜空を見上げながら、静かにもう一度、読み返してみたくなるような本ですね。
きょうはそんな「星の王子さま」、とは似ても似つかない、「鳩の王子さま」のお話を紹介しましょう。
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この「鳩の王子さま」は、この地球に実在する人物です。
マイケル・ムーア監督のドキュメンタリー映画、「華氏911」に出て来る人です。ブッシュ大統領のお友だち。サウジアラビアの王族で、去年まで駐米大使を務めていた人です。
本名はバンダル・ビン・スルタン。世間では「バンダル王子」で知られています。
「王子」というと、少年っぽい感じがしますが、駐米大使をするくらいですから、けっこうな年です。そのサウジのオジン王子さまが、いま「時の人」になっている。それも「星の王子さま」とは真逆の、お金にまみれたダーティーなイメージで語られているのです。
最近、王子さまのセカンドハウスが売りに出され、全米の話題になっています。その超豪邸に、アメリカの不動産史上、最高値(売値)が付いたからです。
1億3500万ドル。日本円で160億円。
バンダル王子がアメリカのコロラド州アスペンに所有する「ハラ牧場」という超豪華別荘に、こんな売値がついて、引き合いが殺到しているのだそうだです。
大統領のホワイトハウスよりも大きい建物で、ベッドルームが15、バスルームが16、理髪店(店ではないですよね)や美容室もある。もちろん、巨大な室内プールもある、ものすごい邸宅です。
大邸宅、英語でいうとマンション(日本でいう「マンション」は、あれはただのミニアパートですから、超誇大広告になるわけですが……)。
管理のスタッフは12人。450人規模のパーティーが開ける大広間もあるそうです。
築16年。
王子がどうして、手離す気になったかというと、ワシントン駐在のアメリカ大使をやめてしまったので、足を運ぶ機会がなくなったからだそうです。
サウジの超リッチな王族たちは世界中に住まいを持っていて、バンダル王子もきっとそのはずですから、わざわざコロラドの田舎くんだりで生活する必要はないのですね。
そんな超大金持ちのバンダル王子ですが、こうした別邸売却の話題など比べ物にならない、とんでもない疑惑の渦中にあって、全世界から疑惑のまなざしを注がれています。
「ヤママ疑惑」……ヤママはアラビア語で「鳩」。
「ヤママ」という名の軍用機取引をめぐって、英国から10億ポンド(2000億円)を超えるリベートを取っていたのではないか、という疑惑が表面化しているのです。
「鳩の王子さま」というと、なんか平和で清く正しいイメージですが、こうなると汚い感じで、いやですね。
「ヤママ」取引とは、1985年にサウジアラビアとの間で結ばれた軍用機取引。英国BAE社製のトルネード戦闘機120機、ホーク攻撃ヘリ50機が、これまでに売り渡されたそうです。総額430億ポンド。8兆6000億円規模。
英国国防省が肩入れし、受注に成功したもので、もちろん、英国史上、最大の武器輸出となりました。
この取引にからんで、バンダル王子のワシントンの銀行口座に10億ポンド以上の袖の下が振り込まれた。それも、BAE社ではなく、なんと英国国防省が振り込んだ……。
こういう疑惑が、先月(6月)中旬、英国の高級紙、ガーディアン紙によって明るみに引き出され、「重罪局」という英国司法当局が捜査に動き出す事態になっているわけです。
この英国政府を巻き込んだ空前のスキャンダル(疑惑)を暴いたのは、ガーディアン紙の有名な調査報道のコンビ(リー&エバンス記者)。
バンダル王子らの「否定」に一歩も引かず、ガンバリ続けています。
事実とすれば、日本のロッキード事件をさらにスケールアップしたような、大変なスキャンダルですよね。
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サンテグジュペリの「星の王子さま」は、一本の薔薇の花を心配します。花とは愛する人の命のことでしょう。
しかし、「鳩の王子さま」の軍用機は、命を破壊するものです。
「星の王子さま」に出てくるバオバオの木のように、金、金、金の金権腐敗が寄生植物みたいにまとわりついた、わたしたちの星=地球(テラ)……。
なんだかますます、「星の王子さま」を読み返したい気になって来ました。

















