〔いんさいど世界〕 日本の女性に比べ、オランダの女性はなぜ落ち込まないか? 答えは彼女たちの「自由」に オランダの女性学者が著書で指摘
『オランダの女性たちはなぜ落ち込まないか?』――こんなタイトルの本がオランダで出て、世界の注目を集めています。権威ある世界紙(グローバル・ニュースペーパー)、IHT紙(インターナショナル・ヘラルド・トリビューン、6月8日付け)が紹介して、一気に世界的な関心の的になりました。
なぜ、世界の関心を呼んでいるのか(なぜ、IHT紙は世界の読者へ、この本を紹介したのか)? それは、たぶん、それだけ世界中の女性たち(日本の女性も含めて)が落ち込んでいるからでしょう。
表面上、元気を装ってはいても、実は陰々欝欝としている暮らしている。挫折感のなかで自分を呪ったりしている……。それが全世界に共通する、真実であるからです。
IHT紙の記事によれば、このオランダの本には、日本人やフランス人女性との比較論も出ていておもしろい。
つまり、「日本人の女性にとって、年をとったり太ることはいけないことで、フランス人女性には太ることはいけないことだけけれど、オランダ人女性はそんなこと、あまり気にしていない」……これが、オランダ人女性が「落ち込まない」=「幸せでいられる」ひとつの理由だそうです。
なるほど、言われてみればたしかにその通り……。日本人&男性のぼくにも、わかるような気がしますね。
東京の通気電車の車内広告にあふれる雑誌の見出しや商品の広告は「痩せろ。痩せろ」「メタボがどうの」の大合唱。
最近では(ぼくのようなオジンどもの)「加齢臭」まで取りざたされるようになり、気持ちは暗くなるばかりです。
さて、話題の本、「フランス、日本の女性たちへの回答」という副題つきの『オランダの女性たちはなぜ落ち込まないか?』を書いたのは、エレン・デ・ブルインという、オランダ人女性心理学者兼ジャーナリスト。
歴史家、ファッション・デザイナー、お店の売り子、雑誌編集者など、さまざまな職種の(ふつうの)大勢のオランダ人女性たちにインタビューをして分析した結果、オランダの女性たちは「自由、だから幸せ、なので落ち込まない」という結論にたどり着いたそうです。
話を進める前に、前提の説明をしておくと、オランダ人って、男も女も「世界で最も幸せの国民」だっていうことが、わかっています。
オランダ・ロッテルダムのエラスムス大学に、ルート・ベーンホーベンという、世界的に有名な男性社会心理学者がいるのですが、そのベーンホーベンさん比較研究で、オランダ人は世界トップの「人生満足度」であることが確認されている(10点評価で7.5)。
ちなみに、日本は「6.2」で、フランス(6.5)や米国(6.4)にも劣っている……。
政府がしきりに「美しい国」だと言い立てている「日本」って、世界的には、やっぱり「不幸せな国」なんですね(自殺者年間3万人、「年金」「介護(保険)」の、あのザマを見ればわかります)。
で、ではなぜ、「オランダ人の女性」は幸せかという本論に戻ると、「オランダ人女性は日本人やフランス人女性に比べ、自分たちの人生をより自由にコントロールできる社会組織を持っているから」だそうです。
それに比べて、日本には「非常に集団主義的な文化があって、個人の自由はほとんどない」とも。
著者のデ・ブルインさんによれば、「オランダ人女性の経済的な自由」は14世紀以後の中世に起源を持つ、伝統的なものだそうです。
男たちが疫病(ペストでしょうか?)で倒れたあとを、女性たちが担って以来、オランダの女性は経済的な自由を享受している。
パートナー選びの自由も中世以来です。13世紀にローマ法王のグレゴリオ4世が出した、「同意による結婚」奨励の勅令を遵守して以来、「性の自由」を謳歌する、現代に至っているんだそうです。
こうなると、ホイジンガのいう「中世の秋」は、むしろ「中世の春」、ですよね??!!(オランダの中世は、いよいよもって暗黒時代ではなかった!!)
「女性上位」……女性が男性を組み敷く「婦唱夫随」は、早くも16世紀の文献にも現れるオランダの伝統で、オランダ人女性はマッチョな男を好まず、逆に男性はボス的な女性を好む現在につながっているそうです。(ちょっと驚きですね、知リませんでした!)
こんなオランダに比べ、日本人女性を取り巻く状況は、まだまだ、ですね。
女性の、ひとりの個人としての自由、一個の人間としての自立を煙たがる向きも多い。
IHT紙の記事には、本を書いたデ・ブルインさん(アムステルダム在住)が大学での講義に自転車で向かう姿の写真が載っていましたが、服装は実にカジュアル。天下(?)のIHT紙の取材を受けるのに、こんな(?)カッコウでよく出られたものだ、と思わせるような、スーパー質素な出で立ちです。
つまり、この1枚の写真が物語るように、オランダの女性は、自由を普段着として着こなし、幸せを自然に身にまとっている。
そんな彼女たちが、日本に来て、「夏まで痩せる」とか「セレブな生活」とか「ブランドを持たなければならない10の理由」とか、「不自由な記事・広告」であふれる雑誌を見たら、どう思うことでしょう?
氾濫する情報に負けず、流されない、自立と自由。
そんな内面の強さをゲットすることが、落ち込まず、幸せを感じる近道のようです。