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2007-05-06

〔いんさいど世界〕 「北風」よりも「太陽」? ドイツに大規模「太陽光発電所」続々

 たった一度だけ、ドイツに行ったことがある。ロンドンのサマースクールで仲良くなったドイツ人らに誘われ、帰国前に、ケルン、ベルリンと、列車で旅した。
 ベルリンの壁が消える10年ほど前。ドイツとベルリンが東西に分かれていたときのことである。
 夏の終わりだったが、肌寒かった。「冷夏」という言葉がぴったりの、曇天のドイツだった。

 その「曇天のドイツ」に、世界最大規模の「太陽光発電所」が相次いで建設され、発電を開始していると知って、驚いた。ドイツが環境保護の先進国であることはなんとなく分かっていたが、これほどまで太陽光発電に力を入れているとは知らなかった。陰鬱な曇り空の多い北国だからこそ、日の光への希求はなおさら、強いということか?……
 
 晴れの日が少ないにもかかわらず、「太陽光発電」に挑むドイツ……。
 ワシントン・ポスト紙(電子版、5月5日付け)が掲載した現地発の記事を読んで、ドイツの人びとの根気強さと粘りに、あらためて感心させられた。

 石油生産がピークを過ぎたいま、自然エネルギーの利用は、日本を含む世界各国の、まさに死活的な課題だ。同紙の記事を手がかりに、「ドイツ太陽光発電事情」を紹介しよう。

 ポスト紙によれば、ドイツ1ヵ国だけで、昨年(2006年)、世界の太陽光発電の約「半分」を占めた。世界には、太陽電池(パネル)を連ねた大規模な「太陽光発電所」は20ヵ所あるが、そのうち15ヵ所、4分の3は、ドイツにあるという。

 ドイツは、たとえばポルトガルと比べ、晴れの日はその半分しかないのに、にもかかわらず、圧倒的なシェアを誇る、「太陽光発電」断トツ世界1の国である。

 では、どうして、そういうことになったのか?

 理由はいくつかあって、ドイツが世界6位の炭酸ガス放出国であり、自然エネルギー発電に切り替えて地球環境への負荷を減らそうと努力しているのがひとつ。(2020年までにエネルギー必要量の4分の1を自然エネルギーに切り替える)
 もうひとつは、国内の原子力発電を2020年までに段階的に全廃することを、国として決定しているからだ。

 しかし、何よりも大きな威力を発揮したのは、ドイツが2000年に制定した「再生可能エネルギー法」という法律。
 これにより電力会社は、太陽光発電による電気を特別価格で買い取ることが義務付けられた。
 そうした助成策のおかげで、「曇天の北国」にもかかわらず、太陽光発電が広がっているのだ。

 自然エネルギー発電ではほかに風力発電やバイオ燃料発電があるが、ドイツでは風車などを大型施設を建設しなくてすむ「太陽光」が、より人気だそう。「北風」よりも「太陽」の知恵(?)が、こんなところにも働いているようだ(???)。

 さて、ドイツが誇る「太陽光発電所」とは実際、どんなものなのか?
 
 ポスト紙の記者が訪ねたのは、太陽光発電専門の電力会社、「ゲオゾル」社(本社・ベルリン)が旧東ドイツの元採炭地、エスペンハインに2004年に建設した発電所。
 ボタ山の跡地、15万平方メートルの敷地に3万3500基のソーラーパネルを並べている。 
 現地で管理にあたっているのは、わずか3人(それと犬が2匹。名前はプーシキンとアディ)。
 小雨の日でも晴天の日の4分の1から2分の1の電気を産み出しているというから驚きだ。

 ポスト紙の記事に導かれ、「ゲオゾル」社のHPにアクセスしてみると、同社はスペインでも太陽光発電事業に取り組んでいるという。曇天という悪条件のなかで培ったノウハウが、外国にも進出するパワーを生んでいるようだ。

 同社のエスペンハイン発電所は3年前の操業開始時点では「世界1」だったが、いまでは後発の発電所6ヵ所(いずれもドイツ国内)に追い越され、目下、第7位。

 そのエスペンハインの20キロ北にあるブランディスの軍の基地跡では、現在世界1のものをさらに上回る、40メガワット規模の太陽光発電所の建設工事が進んでいる。完成すれば1万世帯に送電するという。

 ドイツ政府による太陽光発電の目標値は2020年時点で、国内全発電量の3%。0.5%にも満たない現状からすると、かなりの挑戦だ。
 
 日の出の勢いにはまだまだ程遠い、夜が明けたばかりのドイツ太陽光発電業界だが、それでも全体で4万人の雇用を生んでいる。ソーラーパネル、太陽電池の輸出のシェアも15%に達し、昨年、95億ドルを稼ぎ出した。

 「再生可能エネルギー法」は世界各国のお手本になって、スペインやドイツ、イタリアで同じような法律が出来ている。

 日本では家の屋根に取り付けるソーラー・パネルは目にするが、大規模な太陽光発電所建設の話は聞かない。
 経営難にあえぐ「三洋」は太陽電池の開発では先進的な取り組みを続けていたメーカー(昔、新聞記者だったころ、同社の太陽電池開発を取材したことがある)。その蓄積を、わが国の「太陽光発電所建設プロジェクト」に生かすべきだと思うが、いかがなものか。

 ドイツに負けない、文字通りの「日の丸発電所」づくりが、日の本を自認するこの美しい国でも、そろそろ始まっていい頃である。   


http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2007/05/04/AR2007050402466_pf.html

Posted by 大沼安史 at 11:16 午前 1.いんさいど世界 |

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