〔いんさいど世界〕 「環境保護のノーベル賞」 モンゴルの遊牧民 ツェツェジー・ムンクバヤールさんが受賞 鉱毒・渇水からオンギ川を守る
「環境保護のノーベル賞」と言われる「ゴールドマン環境賞」の2007年受賞者(6人)のひとりに、モンゴルの遊牧民、ツェツェジー・ムンクバヤールさん(40歳)が選ばれた。
ヤクを遊牧するツェツェジーさんは、生活の場であるオンギ川の自然と、金鉱山の操業に伴う鉱毒と渇水から守る闘いの先頭に立ち、国会で規制法を通すなど、ついに勝利を収めた。
オンギ川はモンゴルの主要河川のひとつで、30もの支流を持ち、流域の草原で暮らす遊牧民ら10万人(と100万頭の家畜)の貴重な水資源になっている。
ツェツェジーさんは元々、そんな貧しい遊牧民の一人。
エリートでないにもかかわらず、29歳の歳で地域の住民評議会のリーダーに選出されるなど、人々の信望を集めていたツェツェジーさんが、オンギ川の異変に危機感を抱いたのは1995年のこと。オンギ川の水源となっている「赤い湖」が干上がってしまったからだ。科学者らは、金鉱の取水が原因ではないか、と疑問を投げかけた。
そこから、ツェツェジーさんの「川を守る」活動が始まった。オンギ川流域、37の金鉱による環境破壊は、取水による渇水だけではなかった。金の溶脱に使用する青酸など鉱毒が川に流れ込んでいることがわかった。
川の水が毒水になれば、人も家畜も生きてゆけなくなる。ツェツェジーさんは地域の住民に呼びかけ、2001年には「オンギ川運動」(ORM)を立ち上げ、流域の各郡すべての支部を設置するなど、総勢4000人(うち活動家2000人)の強力な組織に育てた。
記者会見やタウンミーティングで住民の理解を深め、オンギ川沿い470キロを行進したりして、鉱害追放を訴えた。「赤い湖」から取水する3つの金鉱を相手に訴訟を起すなど、キャンペーンを繰り広げた結果、37ある金鉱のうち35が操業を停止。モンゴル国会も鉱山法を成立させ、規制に乗り出した。
ツェツェジーさんのORMの運動は、オンギ川の流域から全国的なものに発展、2006年には国内11の河川を守る流域運動が合流して「モンゴリア自然保護連盟」を生み出すまでに至った。
「草原の国」のモンゴル(人口270万、家畜3300万頭)は実は、鉱物資源の豊かな国。金、プラチナ、銅、錫、石油を資源を狙って、外資が進出の勢いを強めており、ツェツェジーさんたちの活動は、鉱毒から遊牧民の生活を文化を守ると同時に、シベリア・マーモットやモンゴリア・ガゼルなど野生の動物たちが生きる自然を維持する闘いにもなっている。
「ゴールドマン環境賞」のインターネット・サイトに掲載された写真(スライドショー)を見ると、ツェツェンさんは、角刈り頭の、われわれ日本人に似た面立ち。
明治の頃、足尾銅山の渡良瀬川流域鉱毒汚染に抗議して立ち上がった田中正造のようでもあり、同じモンゴロイドとして、拍手をおくりたくなる受賞ではある。
「ゴールドマン環境賞」は、米国サンフランシスコのリチャード・ゴールドマンさんが、今は亡きローダ夫人とともに1990年に設置したもので、日本からは熱帯雨林保護運動の黒田洋一さん(91年)、諫早湾干拓反対の闘いに最後の力を振り絞った山下弘文さん(98年)が受賞している。
リチャードさんは「ゴールドマン生命保険」を起こし、米国有数の保険会社に育て上げた(2001年に別の保険会社に売却)。
「環境賞」はリチャード夫妻の社会貢献の一環で、文化・芸術活動などの支援も行っている。
(日本の保険会社各社もゴールドマン夫妻のように、業界を挙げて共同で「メセナ基金」を設立するなど、「不払い」の「罪滅ぼし」をしてはどうか……。足尾の古河財閥が、たとえば東北大学の開学に貢献したように……)
最後に英紙インディペンデントに載った、ツェツェジーさんの受賞の「言葉」を紹介して、この稿を閉じることにしよう。
If we have a river, we have life. Without the river, there is no life there.
わたしたちに川があれば、わたしたちは命を持つ。川がなければ、そこに命はない。
モンゴルの草原から、風のように届いた、シンプルなコトバである。
⇒
http://www.goldmanprize.org/node/606
http://www.goldmanprize.org/slideshow/user/271/640
http://news.independent.co.uk/environment/lifestyle/article2474402.ece

















