〔いんさいど世界〕 地球温暖化SOS 「緑の農地」で現金収入 「シカゴ気候取引所」(CCX)の「排出権取引」に脚光
先日、世界の専門家による、地球温暖化に関する「国連報告」が発表されました。日本語で「温暖化」というと、春めいた感じがして、どうもプラスイメージにしかなりませんが、実態としては「高温化」というか「発熱」ですね。
つまり、「地球発熱」。
かけがえのないわたしたちの地球(テラ)が高熱でうなされている。そんな状況が、「国連報告」で確認されました。
「地球発熱」にどう対処するか? いまやこれが人類的・死活的な課題になって来た。それも待ったなしで――そんな感じがします。
アメリカの「ロサンゼルス・タイムズ(LAT)」という、いい新聞があります(「イラク問題」の報道で、健闘しています。ぼくの評価では、ニューヨーク・タイムズに負けていませんね。むしろ、その上を行っています)。この新聞はもちろん、ロスで発行されているわけですが、ネットで電子版が読むことができます(ぼくは無料のメール配信も受けています。便利ですよ)。
このLATにこの前、「地球温暖化」というか「地球発熱」がらみでおもしろい記事が出ていました。「シカゴ気候取引所」のことが出ていたんです。「国連報告」が出て、地球温暖化に「赤信号」が出て以来、注目を浴びているんだそうです。
英語の「本名」は、Chicago Climate Exchange。略して、CCX。
ぼくはCCXのことを、耳にしたことがありますが、ほとんど何も知りませんでした。そのことを、LAT紙の記事を読んで痛感させられました。
でも、「無知」よりも「無知の知」。
LAT紙の記事を読んで興味を覚え、CCXのサイトにアクセスしてみました。
「うーん、なるほど」「でも、それだけでは」――それがぼくの率直な感想でした。
LAT紙の記事で面白かったのは、アイオワ州の農家がCCXを通じて、「匿名の企業」に農地1600エーカー分の「カーボン・クレジット」を「2800ドル」で売り渡す取引に成功したというのですね。
アイオワ州のデニソンという町の近くで農業を営んでいるダグ・グロノーさん(57歳)という方で、自分の所有する農地2100エーカーの約8割を、温暖化ガス排出企業の「排出相殺」のため売却したそうです。
売却した農地は、もちろん未耕作地です。作物を育て終えて、いま「一休み」している「緑の大地」です。
農地としては一休みしているけれど、「緑の大地」は大気中の二酸化炭素(温暖化ガスの一種)を休みなく、どんどん吸収している……。遊んじゃいないわけです。
だから「カーボン(炭素)・クレジット」、取引権になるんですね。
デニソンさんのCCXを通じた取引は、実は「集合取引」です。「アイオワ農場局」という組織が、地元アイオワ州はもちろん、ネブラスカなど近隣4州の遊休農地をまとめてCCXに出している。
この組織はこれまで、グロノーさんの農地を含め、「50万トン」分の「炭素排出権」の売却に成功しているそうです(面積でどれくらいかは、残念ながらLAT紙の記事には出ていません)。
ちなみに、この「50万トン」の炭素排出権ですが、1000メガワットの石炭火力発電所の1ヵ月分に相当するそうです。
なぜ、こうした「緑の大地」が売れるかというと、「地球発熱」が進むなかで、各企業はますます地球環境を守る責任を引き受けなければならなくなったからです。
企業の生産活動を通じて、どうしても温暖化ガスを放出せざるを得ない。その放出を「緑の大地」の「炭酸ガス吸収力」でもって少しでも相殺しようというわけです。
つまり、温暖化ガス放出企業として、「カーボン・クレジット」(排出権)を購入する負担を企業コストのなかに組み込む。
CCXを通じて購入する「排出権」の値段が高くなれば、企業としてはコスト削減のため、環境対策を進め、排出量を減らすしかない。そういうところまで、排出企業を追い込む――これがCCXの究極の狙いだそうです。
CCXが世界初の「排出権取引所」としてオープンしたのは、2003年のこと。IBMなど民間企業や財団、自治体など200団体が参加しているそうです。二酸化炭素(炭酸ガス)を含む6種類の温暖化ガスの排出量を、排出権購入による相殺分も算入しながら、毎年削減していく。
CCXを通じ、これまで取引が成立したのは、なんと炭酸ガス1360万トン分。トン当たりの取引価格は4ドルから8ドルだそうです。
アイオワの場合は農地ですが、このCCXの取引を通じ、森や林が守られていく。これまであまり顧みられなかった地球の緑に経済的な価値が付いていく。
これってたしかに、グッド・アイデアですね。
CCXのサイトを覗くと、カナダのモントリオールに「取引所」が新たにオープンするなど、グローバルに広がりそうな勢いも感じられます。
日本にも同じようなシステムが出来たらいいかも知れませんね。
休耕田が、遊休農地が、裏山の林が、新たな経済価値を持つわけですから。
過疎地対策につながるかも知れません。
ただし、気になるのは、「取引所」ですから、どうしても強いものが勝つ「市場原理」が働いてしまうことですね。
「排出権」取引の値段は市場価格で行われますから、こんご値段が上昇すると、力のある企業しか買えなくなる、という問題が出てきそうです。
大企業だけは「排出権」を買って、どんどんガスを排出しながら、引き続き生産活動を続ける――なんてことにもなりかえない。
CCXのような「市場」にまかせるだけでなく、(各国)政府による「規制」もまた必要になるのではないでしょうか?
「市場」か「規制」か、ではなく「市場」プラス「規制」。
そこでどんなシステムを産み出していくか、それがいま問われていることだと思います。
⇒
http://www.latimes.com/business/la-fi-carbon10feb10,1,1514157.story
Posted by 大沼安史 at 11:10 午前 1.いんさいど世界 | Permalink
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