〔イラクから〕 ナジャフのカルト集団への米軍の「大勝利」 実は巡礼者らの「大量殺戮」の可能性 カルト教団の隠蔽工作に利用か? P・コバーン記者が指摘
イラク中部のシーア派聖地、ナジャフで1月28日、米軍とイラク政府軍が、シーア派宗教指導者の暗殺を企てたカルト集団を壊滅させた「大勝利」は、実は巡礼に来ていたシーア部族に対する「攻撃と大量虐殺」を糊塗する作り話である疑いが浮上している。
英紙インディペンデントのバグダッド特派員、パトリック・コバーン氏が、権威あるイラク紙、「アザマン」などの報道を元に疑惑を指摘した。
巡礼の部族の一団とともに殺戮されたとされるカルト集団「天国の戦士」は、たまたま現場近くに居合わせたことから戦闘に巻き込まれ、挙句の果ての事実の隠蔽工作に利用された公算が強い。
イラク政府軍を支援していた米軍に殺戮されたシーア派の部族は、「ハワティム」族。アシュラの祭りを祝うため、200人が徒歩でナジャフを目指していた。族長は歩行困難なことからTOYOTAのセダンに乗り、徒歩の部族員と同行、28日午前6時ごろ、ナジャフの南約1.6キロ、ザルガ地区のイラク政府軍検問所に着いた。
この巡礼の群れに対して、検問所の政府軍兵士が発砲したことから、銃撃戦となった。ハワティム部族は夜間の巡礼行進をして来たことから、自衛のため武装していた。
ザルガに住む地元の部族、「ハザイル」のメンバーは戦闘を止めさせようとしたが、逆に銃撃されたという。
政府軍兵士の要請で米軍のヘリが出動、1機が撃墜され、乗員2人が死亡(部族側は撃墜の事実を否定)。これが引き鉄になって米軍の攻撃が激化、翌29日午前4時ごろまでに、果樹園にいた部族のメンバーら120人が死亡した。(当局発表では263人が死亡、210人が負傷したとされている)
現場のザルガ地区は、カルト集団とされる「天国の戦士」が本拠を置いており、このメンバーも巻き添えになったらしい。
ハワティム族とハザイル族は、同じシーア派ながら、ナジャフを支配する一方、イラク政府の内務省を握る「イラク・イスラム最高革命評議会(SCIRI)」やダワ党と対立していたといわれる。
イラク政府当局は現場を封鎖し、負傷者の報道陣との接触を禁じている。
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http://news.independent.co.uk/world/middle_east/article2201103.ece
http://www.armytimes.com/news/2007/01/apwhathappenednajaf070130/
Posted by 大沼安史 at 09:14 午後 | Permalink | トラックバック (1)