〔For the Record〕 シカゴのジャズ・ミュージシャン イラク戦争に抗議の焼身自殺 中間選挙の直前 ラッシュ・アワーの路上で
米国のシカゴのジャズ・プレーヤーで、CDプロデューサーとしても活動を続けていたミュージシャンが、中間選挙の直前の11月3日(金曜日)早朝、ラッシュ・アワーの市街中心部の路上で、イラク戦争に抗議して焼身自殺していたことがわかった。
マラキ・リッシャー氏(52歳)。
インターネットのサイトに、「遺書」(使命宣言)と自分への「追悼文」を残していた。
AP通信、「シカゴ・リーダー」紙などの報道によると、リッシャーさんは同日午前6時半ごろ、シカゴのダウンタウン、オハイオ通りの路上で、ビデオ・カメラをセットしたうえ、ガソリンをかぶって焼身自殺した。
黒こげになった遺体は身元確認に手間取り、歯型から同氏だと確認されたのは、5日後のことだった。
リッシャー氏は自宅の合鍵を友人に送り、自殺後の処理を依頼していた。
サイトに残された「遺書」には、以下のような言葉が残されていた。
・ わたしは素晴らしい人生を過ごした(中略)愛と喜びと子育ての頭痛を経験した(中略)わたしは若者たちが神と祖国の名において派兵されたと聞いたとき、わたしの心は押しつぶされた。
・ 世界の人びとに対して、わたしたちは卑怯である。われわれ民衆もまた(イラク侵攻に続く)すべての責任を完璧に負わねばならない。
・ わたしの立場はこうだ。わたしはわたしというひとつの死を得るだけだ。そしてわたしはその死がよいものであってほしいと思っている。
・ わたしの声明とはこうである。野蛮な戦争のためへの支払いをわたしに求めるというなら、わたしはそういう世界で生きていかないことを選ぶ。わたしは、われわれの国を何ら脅かすことなき、罪もない人びとの大量殺戮をファイナンスすることを拒否する。
・ 中間選挙によっても解決は生まれないだろう。わたしたちの2大政党制はデモクラシーの失敗作である。
・ わたしたちアメリカ人はいま、わたしたち自身の制度の奈落に直面している。
「遺書」は悲しいほど冷静に書かれていた。
自殺と確認されたあと、氏の精神病を疑う人もいたが、遺族は否定した。
リッシャー氏はシカゴのジャズ・シーンにあって、自らサキソフォンのプレーヤーとして演奏を続ける一方、最近はライブ録音のCDプロデューサーとしても活動していた。ライブの現場で才能を発掘し、紹介していた。
自分から目立とうとしない人柄で、地元のオルタナティブ週刊誌「シカゴ・リーダー」が、同氏について記事を書きたいと申し出たら、断られた。
「遺書」の最後にはこうあった。
Without fear I go now to God - your future is what you will choose today.
(恐れることなく、いまわたしは神のもとへ行く。あなたの未来とはあなたが今日、行う選択である)
リッシャー氏の焼身自殺の現場は、「巨大な炎の像」のそばだったそうだ。
氏の死を悼みつつ、氏の最後の言葉を、重く静かに受け止めたい。
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Posted by 大沼安史 at 07:20 午後 | Permalink