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2006-10-30

〔いんさいど世界〕 イスラエル レバノン侵攻で 「秘密ウラニウム爆弾」を使用か? 

 北朝鮮の「地下核実験」再開が取り沙汰されるなか、深刻なニュースが「中東」から伝わって来ました。

 世界で最も権威のある「中東」問題の専門ジャーナリストといえば、あのビン・ラディンとも単独会見したこともある、英国インディペンデント紙のロバート・フィスク氏(ベイルート支局長)ですが、そのフィスク氏が10月28日付けの同紙で、衝撃的な事実を明らかにしました。

 イスラエル軍がこの夏、レバノン侵攻の際、正体不明の「秘密ウラニウム爆弾」を使用した可能性がある、というスクープ記事を放ったのです。
 これは、中途半端に終わった北朝鮮の「地下核実験」と違って、「実戦」での「使用」ですから、大変なことです。

 いったい、どういうことなのか、早速、フィクス氏の報告の中身を紹介することにしましょう。

 謎の「秘密ウラニウム爆弾」が使用された場所は、レバノン侵攻でイスラエル軍がヒズボラに猛攻を加えた、キアムとアト・ティリの両地区。
 爆弾で出来たクレーターから採取した土壌サンプルを調べたところ、「ウラニウム・アイソトープの濃縮(コンセントレーション)」が確認されました。

 調査したのは、「放射性リスクに関する欧州委員会」の英国代表を務めるクリス・バズビー博士らのチーム。
 なぜ、レバノンまで出かけて行って、土壌の放射能汚染調査をしたかというと、イスラエル軍がどうも“特殊爆弾”を使用した可能性がある、という疑いが出ていたからです。

 キアムでは、爆撃により、巨大な「黒雲」が噴きあがったところが撮影されてもいる。
 この「黒雲」って、ウラニウムが燃えたときに(も)発生するものなのだそうです。(そういえば、ヒロシマには「黒い雨」が降りましたね)

 それでフィスク氏らの所属するインディペンデント紙はこの夏、イスラエル政府に対し、「ウラニウムをベースとした爆弾」をレバノンで使用した事実はないか、照会した。
 それに対するイスラエル外務省の返事は、「国際法、条約に違反した兵器は使用していない」。

 これって、実は「明快な否定」でない。そもそもイスラエルは非人道兵器を禁じたジュネーブ条約に署名さえしていませんから、核兵器とか化学兵器を使っても、それはイスラエルが加盟した「条約」に該当するものではないからです。

 で、バズビー博士らが採取した土壌サンプルに含まれていたアイソトープは何かというと、ウラン235。
 天然のウランには0.72%しか含まれていないアイソトープで(ウラン238がほとんどで、99.27%の構成比だそうです)、これを90%以上に高めると、原爆の材料になるわけですが、このウラン235が対ウラン238比で1%弱、検出されました。

 このことからどういうことが言えるのか?

 英国の別の各専門家によれば、ウラン235の残留放射能の量から見て、ヒロシマ型と同じ、通常タイプの「核分裂爆弾」ではなかった可能性が強いそうです。

 そうだとするならば、ではどんな「ウラニウム爆弾」だったかというと、バズビー博士らの報告によれば、これはまったく新しい型の小型核分裂兵器か、「ウラニウム酸化(oxidation)フラッシュ」による超高温を発生する「サーモバリック(thermobaric)爆弾」、あるいは劣化ウランの変わりに濃縮ウランを使った貫通弾などが考えられる、といいます。

 いずれにせよ、地下のビズボラの隠れ家を狙ったものに間違いはなさそうです。これでどれほどの犠牲者が出たことでしょう。 

 フィスク記者によれば、今回のレバノン侵攻で、イスラエル軍はベイルートのヒズボラ司令部に対して、米国製の「バンカーバスター」(地下貫通弾)を使ったことが確認されています。
 それどころか、クラスター爆弾に加え、白リン弾も使用したこともわかっています。
 (白リン弾については、イスラエル当局者が使用を認めています)

 フィスク記者らが提起した疑問に対し、イスラエルは説明する義務があります。
 国際社会に対し、「説明責任」を負っています。

 日本政府も北朝鮮の「核実験」に加え、「唯一の被爆国」として、イスラエルにも厳しく問いただすべきでしょう。

 真相の究明が待たれるところです。  

Posted by 大沼安史 at 10:41 午前 1.いんさいど世界 |

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