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2006-10-02

〔いんさいど世界〕「正しい生き方賞」を知っていますか? スウェーデン国会議場で授与される“もうひとつのノーベル賞” ことしの受賞者決まる 正賞は南米の「詩の祭典」やインドの女性解放運動家ら3人(団体)に 栄誉賞は「世界社会フォーラム」の産みの親のブラジル人活動家に

 「正しい生き方賞」――聞いたこと、ありますか? 正式には「Right livelihood Awards」。
 毎年12月、ノーベル賞の授賞式に先立ち、ストックホルムの国会議場で授与式が行われることから、「もうひとつのノーベル賞」ともいわれています。

 ノーベル賞はご承知のように、ダイナマイトを発明したノーベルの資産をもとにしたものですが、こちら「正しい生き方賞」はなんと「趣味の切手」が元手。
 スウェーデン人でドイツ国籍も持つ、作家のジャコブ・フォン・ウエクスカルさんが超レアものの切手コレクションを売り払って創設した賞なんです。

 1980年のスタートですから、本家と比べ、まだまだ歴史は浅いわけですが、世界的にはかなり注目された賞です。

 この「正しい生き方賞」、どんな分野の人(団体)に贈られているかというと、本家のノーベル賞の守備範囲から外れた分野、それも環境とか第3世界の貧困問題に関係する分野で功績をあげた人(団体)に授与されています。

 創始者のウエクスカルさんは当初、ノーベル財団に対し、切手コレクションを売却して原資を提供するから、エコロジー賞というのと、第3世界賞のようなものを新たにつくってくれと頼んだそうですが断られ、自前の賞の立ち上げに踏み切ったそうです。

 賞金総額は200万クローネ。米ドルで27万ドル。
 賞は正賞と栄誉賞の2種類があって、賞金は財政的サポートが必要な正賞受賞者で分け合うのだそうです。つまり、栄誉賞はまさに栄誉だけなんですね。

 で、今回、2006年の「正しい生き方賞」の受賞者がこのほど、同財団から発表されました。
 
 まず正賞から見ていきますと、ことしは個人2人と1団体に。

 個人の方から紹介しますと、ひとりはあの有名なダニエル・エルズバーグ氏(75歳、米国人)。
 ベトナム戦争の実態を暴露する「ペンタゴン・ペーパー」を暴露し、戦争終結への流れをつくった内部告発者のエルズバーグ博士が選ばれました。

 なぜ、いま、エルズバーグ博士に?

 実は、エルズバーグさんはいま、米国でイラク戦争に反対する平和運動を続けており、「内部告発者を現れよ」と呼びかけているのです。
 「正しい生き方賞」の選考委員会は、そんなエルズバーグさんの活動を高く評価した。
 エルズバーグさんに賞を贈ることで、イラク戦争のほんとうの姿を、そのごまかしと悲惨な現実を、ブッシュ政権の内部から告発する、第2、第3のエルズバーグ博士よ、出でよ!という、願いが込めた選考結果だそうです。内側からの真相の暴露、それこそ、正しい生き方である、というのですから、すごいですね。

 もうひとりの受賞者は、インドの女性解放運動家、ルース・マノラマさん(54歳)。
 マノラマさんは「ダリ」といわれる、インドのカースト社会の最底辺にあえぐ女性たちの人権と人間としての尊厳を守る運動の先頭に立ち、闘い続けてきた人だそうです。
 自分もまた「ダリ」のひとり。両親がクリスチャンになったことで、彼女自身は大学に進むことができたのですが、社会の上層に入ることを潔しとせず、ひとりの「ダリ」として、インド社会で最も差別された、最も貧しい女性たちのために活動し続けて来ました。
 スラムの家屋撤去計画に抗議して15万人のデモを組織するなどして、ダリの女性の社会意識を覚醒にも努力し、現在、インド国内120ヵ所のスラムに解放の拠点を築くに至っているそうです。
 これまたすごい話です。

 個人2人とともに正賞に輝いた団体は、南米コロンビアの都市で活動する「メレディン国際詩フェスティバル」です。
 メレディンで詩の祭典と聞いて驚く方も多いと思います。
 メレディンってところは「メレディン・カルテル」で有名な麻薬組織の拠点。グループ同士が血で血を洗う抗争を続けて来た街です。
 いちばんひどかった1990年代の初めなどは、週末に100人ぐらいの死人が出る、麻薬と殺戮の街だったのですね。

 そんなメレディンを「詩の街」「平和の街」に変えようと立ち上がったのが、地元の詩人のグロリア・チャバタルさんとフェルナンド・レンドンさんの2人。殺し合いがピークを迎えようとしていた1991年にことでした。

 年に一度、10日間にわたって開かれる国際フェステイバルには全世界から詩人が集まり、地元の詩人とともに朗読会などを催します。
 大学とか教会でも詩を読み上げますが、それだけではありません。ストリートでも、刑務所でも。
 世界各地から参加した詩人は750人。60の言語(方言を含む)で詩が読み上げられました。

 こうした「祭典」とは別に、地元の文芸誌の後援を得て、こどもたちを対象に「詩の学校」を開いた入りもしています。

 これまたすごい! コロンビアのメレディンでこんなことが行われていただなんて、知りませんでした。

 正賞は以上ですが、栄誉賞を授賞した人も「正しき生き方」をしてきた立派な方です。
 チコ・ウイタカー・フェレイラさん(75歳)。ブラジルの方です。

 ローマ・カトリックの活動家で、いわゆる「解放の神学」の実践者。
 軍部によって国外追放され、パリなどで亡命生活をおくったあと、1982年に帰国を果し、生まれ故郷のサンパウロで失業者の連帯運動を開始。その後、ブラジル政界を覆っていた政治腐敗・選挙違反との闘いに入るなど、生涯を社会正義の実現のために捧げてきた人です。

 しかし、このチコさんの功績で特筆すべきは、なんといっても「世界社会フォーラム」を立ち上げたことです。
 「世界社会フォーラム」というのは、スイスのダボスで開かれる、先進国主体、富と権力の持ち主が集まる「世界経済フォーラム」に対抗、名もない世界の民衆が連帯し、世界の明日を構想するフォーラムで、チコさんらの努力で第1回の大会が2001年にブラジルのポルト・アレグレで開催されました。初回にもかかわらず、このブラジルの港町に、世界各地から集まった参加者は、なんと2万人。会場には、新しい世界を民衆の手で創り出そうという、ものすごいエネルギーが渦巻いたといいます。
 
 チコさんも、すごい人なんですね。

 
 ことし2006年の「正しい生き方賞」の授賞式は、本家ノーベル賞の2日前、12月8日にスウェーデン国会の議場で行われるそうです。
 
 わたしたちに正しい生き方を問い、世界に希望の光を広げる「もうひとつのノーベル賞」、ライト・ライブリフッド賞。

 日本人としても、注目していきたい「賞」ですね。 
   

Posted by 大沼安史 at 05:35 午後 1.いんさいど世界 |

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