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2006-09-10

〔いんさいど世界〕 「9・11」5周年Ⅱ 「信じざる人々」から真相究明を迫る声 波紋広げる、神学者、グリフィン氏の「陰謀説」 

 あの「9・11」から5周年。今回も前回に引き続き、「同時多発テロ」事件を」めぐる「陰謀説」に焦点を当ててみたいと思います。

 前回のこのコラムでは、「9・11陰謀説」――すなわち、ブッシュ政権の「やらせ」ではないか、という見方が、いわゆるオタク的なサークルを越え、前政府当局者や学者グループなど専門家の間に広がり始めている現状をレポートしました。

 今回はその続きであるわけですが、先日、9月8日の金曜日に、米国を代表する高級紙のひとつ、ワシントン・ポスト紙(電子版)に「信じざる人々(The Disbelievers)」という見出しの記事が掲載されました。サブ見出しは、「9・11陰謀説を唱える理論家たちが、グラウンド・ゼロから連邦政府に反対する主張を打ち立てている(9/11 Cinspiracy Theorisuts Are Bilding Their Case Against the Government From Ground Zero)」。

 ここでいう「グラウンド・ゼロ」とは、航空機による体当りテロ攻撃を受けたあとに突如、崩壊した、あの「世界貿易センター(WTC)」ビルを指します。
 そのWTC跡地がいわゆる「テロとの戦い」の引き鉄をひく「爆心地(グラウンド・ゼロ)」になった……。
 その、いわば原点に立ち返って、「9・11」をめぐる「公式見解」に疑義を差し挟む人々、すなわち「信じざる人々」が、ブッシュ政権による「やらせ陰謀」説を採り始めている、という記事が、ワシントン・ポストという、米国を代表する一流紙に登場したわけです。

 前回のコラムでは、サンフランシスコ・クロニクル紙が「陰謀説」と取り上げたと言いましたが、こんどはついにワシントン・ポスト紙までが……。
 それだけ、「9・11」に対する疑惑のまなざしが強まって来ているわけです。

 ポスト紙が今回、報じたのは、〈「9・11の真実」運動〉という学者・知識人らによる真相究明の動きです。

 ではその運動に、どんな「信じざる人々」が加わっているか、というと、ブリガム・ヤング大学のスチーブン・ジョーンズ教授(物理学)、ミネソタ大学のジェームズ・フェッツアー教授(哲学)、前イリノイ大学の経済学部長、ダニエル・オール氏、レーガン元大統領の補佐官を務めたバーバラ・ホネガー氏、第1次ブッシュ政権で連邦労働省のチーフ・エコノミストを務めたモーガン・レイノルズ氏、同じく第1次ブッシュ政権で連邦住宅局の副長官を務めたキャサリン・フィッツ氏――といった、社会的な評価のある、錚錚たる人々。

 このうち、スチーブン・ジョーンズ教授は、爆破実験を行うなど「WTCの崩壊」の原因究明に乗り出し、1000ポンドの高性能爆薬での爆破が最も説明のつく原因だと断定し、航空燃料による梁の溶解が原因とする「公式見解」に疑問を投げかけている物理学者。
 バーバラ・ホネガー氏は、ペンタゴン(米国防総省)にアメリカン航空77便(あるいはそうではない何か)が突っ込んだ「約6分前」に爆弾が爆発している、との「新事実」を突き止めた、米海軍大学校(大学院)の軍事専門ジャーナリスト。
 キャサリン・フィッツ氏は連邦住宅局の「予算流用」問題を告発したことで知られる、元米政府高官です。

 このようなキラ星のごとき人々から、さまざまな「疑惑」の指摘や手厳しい批判が続出しているのが、米国の現状なわけですが、そうした〈「9・11の真実」運動〉の中心にいる、極めつけの人物がこの人――知る人ぞ知る、デービッド・レイ・グリフィン氏です。

 グリフィン氏は、プロテスタントの神学者であり哲学者でもある人物(クレアモント大学のポスト・モダン研究センターの創始者だそうです)。カリフォルニア在住の65歳、「著名なリベラル派の神学者」であると、ポスト紙は紹介しています。
 
 グリフィン氏は、10万部も売れた隠れたベストセラー、『新しい真珠湾(The New Pearl Harbor)』の著者です。
 日本軍の真珠湾攻撃が米国の対日参戦の引き鉄をひいたように、「9・11」も「新しい真珠湾」となって米国を「テロとの戦い」に引きずり込んだ。
 あの「真珠湾」もそうであったように、「9・11」も参戦の口実をつくる壮大なる「やらせ」だったといった内容の本です。
 そういういわば「トンデモ本」を、ほかならぬグリフィン氏が書いたことで、「疑惑」の信憑性が一気に高まったわけですが、具体的にどういうことが書かれているかというと、WTCが「インサイダーの仕業」である、など、内容はこれまでいろんな人々が唱えてきた、さまざまな「陰謀」説を裏付けもので、〈「9・11の真実」運動〉のバイブル的な書物になっています。

 グリフィン氏は昨年、全米を講演旅行して歩き、連邦政府に対し真相究明を迫るよう呼びかけました。ポスト紙によれば、秋のある雨の夜、コネチカット州(の高級住宅地である)ウェスト・ハートフォードで開かれた講演会には、医師や弁護士、教師、ソーシャルワーカーなど中流(の上流を含む)階級の人々を中心に400人もが集まったそうです。

 「9・11陰謀説」と唱える人たちって、ともすれば声高に叫ぶラジカルな人たちってイメージがしがちですが、グリフィン氏の「説教」は物静かなだけに、聴く人々の心を開きながら、「真実」を求める草の根の声となって、着実に波紋の輪を広げて来た。
 そしてついに、ワシントン・ポストなど、いわゆる「メーン・ストリーム(主流)」のジャーナリズムも取り上げざるをえない事態を切り拓くまでに至ったわけです。

 グリフィン氏はこの『新しい真珠湾』のあとも、「9・11独立調査委員会」報告書を点検し矛盾やごまかしを抉り出した本などを出版するなど、精力的な活動を続いて来ましたが、本来は神学・哲学の専門家で、思弁的な世界に住んでいた、「神を信ずる人」のひとり。
 本音をいえば、ほんとうは俗事になどかまけず、「自分の世界に戻りたい」んだそうです。
 
 それがなぜ「9・11」にこだわり続けるかというと、「ほとんどあらゆるものを可能とする富と支配への欲望に焦点化した米国の政治」のあり方を座視できないからだといいます。

 グリフィン氏の登場で、一気に権威と正統性を帯び始めた「9・11」の真相究明を求める運動――。
 その、米国の「草の根(グラスルーツ)」から生まれた運動はインターネットという知を共有するツールを武器に、「ネットの根ざした(ネットルーツな)」形で、米国内ばかりか、フランスなどグローバルな規模で広がっており、「テロとの戦い」の「虚構」を崩す、「平和のためのコラボレーション」的な様相を強めています。

 後世の歴史家によって「9・11」5周年は、「真相究明・元年」に位置づけられるかも知れません。

 そう、これからが本番!
 グリフィン氏の鳴らす警鐘とともに、いよいよ真相究明の本格「ラウンド」の幕が切って落とされたかたちです。
   

 

Posted by 大沼安史 at 03:40 午後 1.いんさいど世界 |

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