〔いんさいど世界〕 イスラエル空軍 「パイロットの良心」ここに 民間人空爆を回避 「誤爆」して人命を救う
イスラエル軍機の一部のパイロットが攻撃命令に背き、「目標」をわざと外して、レバノンの民間人の命を救っていることが、英紙オブザーバー(ガーディアン日曜版、電子版、8月6日付け)の報道で明らかになった。
罪もない人々の殺傷を回避しようとする、そのヒューマンな決断、良心的な行為に、世界的な共感の輪が広がっている。
イスラエルのハツゾール空軍基地発のイニゴ・ギルモア記者の特電によると、少なくとも2人の戦闘機パイロットが故意に「民間目標」への攻撃を外しているという。
ヒズボラの「施設」は、実は民間人の生活の場であり、命令通り攻撃すれば、婦女子を含む非戦闘員を殺戮してしまうことになるからだ。
ギルモア記者のレポートによると、イスラエル軍のF16戦闘機パイロットらがレバノンの民間人攻撃を回避している事実は、イスラエル空軍ヘリの元パイロットで、2004年に兵役を拒否して予備役から外されたヨナタン・シャピロ氏に対し、戦闘機パイロットが明らかにした。
あるパイロットはシャピロ氏に、こう告白した。
「丘の上の民家を攻撃するよう命じられた。そこからヒズボラがカチューシャ・ロケット弾を撃っている、とのことだった。しかし、その民家には民間人がいるかも知れないと不安になった。それで民家を外し、その近くを攻撃した」
シャピロ氏によれば、イスラエル軍の「戦闘規定」には、民間人の殺傷を回避するあらゆる努力が払われなければならない、との規定があり、それが目標外しを正当化する根拠にもなっているという。
表面化したのはまだまだ一握りの数に過ぎないが、イスラエル軍機のパイロットがこうした行動に出ている背景には、軍の情報集力の弱さ(に対する軍関係者の認識)がある。
イスラエル紙「ハーレツ」の先任エディターで軍事問題の分析家であるメロン・ラポポート氏は、ギルモア記者に対し、「情報不足になり、状況証拠に頼ることがしばしばある」と語っているが、それは7月30日の「カナの大虐殺」によって証拠立てられている。
オブザーバー紙の報道のあと、8月9日、米国の放送局、「デモクラシー・ナウ」の番組に電話出演したシャピロ氏は、命令に背いて目標をわざと外しているパイロットの数を「数人」と証言している。
そのシャピロ氏の弟はレバノンでの軍務を拒否して、いま獄中生活をしており、今回のレバノン侵攻をめぐるイスラエル軍兵士の「良心的兵役拒否者」は、ほかに4人を数えるという。
操縦席でのたったひとりの孤独な決断で、民間人を救っているイスラエル軍機のパイロット。
レバノン侵攻に大義はないとして、兵役を拒否し、抗議を続けるイルラエルの若者。
イスラエルに平和な未来が訪れるとすれば、それはきっと、こうしたささやかな行為が芽を吹き、実を結ぶときだ。
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http://observer.guardian.co.uk/world/story/0,,1838437,00.html