〔NEWS〕 心的外傷に苦しむ帰還女性兵士
米紙ワシントン・ポスト(電子版、8月20日付け)に、イラクから帰還した女性兵士が、2年以上経ったいまでも、心的外傷に苦しみ続けている姿が報じられていた。
「イラク戦争」は数多くの女性兵士が実際に戦場で過酷な戦闘に従事した初めての戦争。
男性兵士とほぼ同率で、PTSD(心的外傷後ストレス症候群)に悩まされているという。
ポスト紙の記事は、バグダッド近郊で9ヵ月間、第747輸送中隊の一員として輸送作業に従事し、道路脇に仕掛けられた爆弾の爆発で左の耳を失って、一昨年(2004年)1月)に帰還した、ナショナル・ガードの女性兵士、トリネッテ・ジョンソンさん(黒人、32歳)に焦点をあてている。
4人の子を持つ母。最初の子は14歳のとき、もうけたという。
そんな「ママさん兵士」、トリネッテさんにとっても、イラク戦争での戦場の経験は無残きわまりないものだった。
爆弾で爆死した、同じ部隊の21歳の兵士。
重傷を負った、同じく4人の子を持つ、彼女の親友の女性兵士。
あるときは、イラク人の遺体を、泣き喚く家族のもとへ送り届けたこともあったという。
でも彼女自身、M16ライフルを撃つことはなかった。
彼女はつまり、戦場で人殺しはしていない。
それでも帰国後、トリネッテさんをPTSDが襲った。
せっかく子どもと再会したのに逃げ出す自分がいた。
カッとなってバスにコーラのカップを投げつける自分がいた。
アンダーパスをくぐり抜けられない自分がいた。
頭上で爆発するかも知れない。
恐怖にとらわれ、立ち往生する自分がいた。
怒り、不安、悪夢の記憶のフラッシュバック。
日常生活から現実感が消え、苦しい毎日が続いて来た。
ワシントンのナショナル・ガード事務所の受付の仕事に復帰、新しいフィアンセと郊外に引っ越して、子どもとの生活を再開したが、なお苦しみから逃れられないでいる。
苦しくなると自分の部屋に閉じこもり、ベッドに仰向けになって天井を見上げる。ファンの羽根がゆっくり回っている。
自分と取り戻そうと努める。そして取り戻す。
でも、瞬間的に外部との「つながり」が切れてしまうことがある。
呆然と、ファンの羽根を、見上げている自分に気づく……。
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http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2006/08/19/AR2006081900353.html
Posted by 大沼安史 at 12:43 午後 | Permalink